「戦後占領期(三)」を掲載したことに伴う解説です。

 

物語も、いよいよエピローグを残すのみとなり、主人公の桐鞍真は無事に本場イギリスのメイドさんと婚約しました……なんて言うと、語弊がありますが。

 

ところで、作中のシンシアのように、史実でも進駐してきた連合軍の兵士と結婚した日本の女性は少なくありませんでした。その総数については諸説ありますが、5万人から10万人というのが最も有力なようです。

今回はそんな「戦争花嫁(War Bride)」について、簡単に解説しようと思います。

 

概観

戦争花嫁については、小説を書く前は、聞いたことがある程度でロクに調べたことがなかったぐらいで、インターネットの情報に頼っていたという情けない話です。というか、今も大して変わらないのですが(汗)。

 

で、戦争花嫁の話です。戦争で外国に出征していった兵士が、現地の女性と結婚して帰ってくることは、昔から珍しくもありません(時にはその国が気に入って居着いてしまったりもします)。

 

連合国による日本占領でもそんなようなことは多数あったようで、中でも米兵と結婚した日本人女性が数多くいたようです。

結婚したといっても、中には「現地妻」のような関係もあったようで、米兵が帰国するときに「捨てられた」女性もいたようですが、それでもどうやら本気だった米兵も大勢いたようで、占領任務が終わると、米兵たちは戦争花嫁を連れて帰国しました。そんな女性たちが、上述したように5万から10万にいたということです。

 

ちなみに、作中では日本軍士官の主人公が英国女性と結婚するわけですが、もう何度も書いているように本作で日英は入れ替わっているので、史実になぞらえて言うならこれは英国軍士官と日本女性の結婚ということになるわけです。

 

Northcott_in_Japanが、前回の解説記事でも書いた通り、日本に駐留した軍隊の中で、オーストラリア軍などは比較的多かったものの、英本土の軍隊は数の上ではあまりおらず……ましてや英国貴族と日本女性の結婚などというのは、たぶん実際にはなかったんではなかろうかと思われます。

(*画像は英連邦占領軍として日本に駐留していたオーストラリア軍)

 

これまでの解説であまり触れる機会がありませんでしたが、本作では日英を入れ替えたと言っても完全にそのまま入れ替えたというわけでもなく、たとえば、作中の日本では史実の英国ほど階級制が厳しくはなっていません。

 

史実の英国で階級制が厳しくなったのは、異民族の侵入が繰り返され、支配者と被支配者の身分の区別がはっきりしていたからだと言われます。作中の日本も史実と比べると異民族の侵入が多かったという裏設定はあるものの……うーむ。

 

このあたりの変なさじ加減については、自分なりに色々と思うところがあった結果なのですが……まあそれは機会があったら述べることにします。

 

茨の道の先に

さて、そんな風にしてアメリカに渡った戦争花嫁たちですが、アメリカでの新しい人生は、物質的には復興途上の日本より豊かだったでしょうけれども、決して平坦な道とは言えなかったようです。

 

Yasuura_House当時の日本では、米兵と接する女性と言えば売春婦というイメージが強く、米兵と正式に結婚した女性たちにも、結婚前はそうした職についていたのではという疑いの目が向けられました。

(*左に掲載したのは、占領初期に設置された進駐軍向け売春宿とされる画像)

 

また、アメリカの物質的な豊かさに眩惑されたのではないか、という見方もされました。「チョコレート一枚でふらふらっと誘惑されて、そのまま結婚してしまった」という感じです。

 

実際にはそんなことも多かれ少なかれあったのでしょうけれども、私からすれば結婚ということになれば男女ともにそれなりの覚悟を決めるのだから、ごちゃごちゃ言うなよという感じですね。

 

さらに、アメリカに渡ってからも、彼女たちは偏見にさらされました。

当時のアメリカには、戦前にアメリカに移民した日系人が一定数いましたが、戦争花嫁の女性たちはそうした日系人からも、しばしば偏見の目でみられたり、時には嫌な思いをさせられたりもしたそうです。

 

また、当時は人種差別もかなり厳しかった時代で、白人米兵と結婚した日本人女性と比べると、黒人米兵と結婚した日本人女性の扱いはかなり厳しかったとも伝わっています。

 

と、このように悲しい出来事もあったものの、時代が人種差別撤廃へと力強く動き出したこともあり、彼女たちも多くは偏見を克服して、地域に溶け込んでいきました。

特に、日系コミュニティがアメリカで生まれ育った日系二世中心の時代になると、途絶えそうになった日本文化の伝承に、日本生まれの戦争花嫁たちが一役買う、という場面が多く出てきたそうです。

 

いま、日本の様々な文化が外国から一定の評価や注目を得るようになっていますが、その陰には、こうした戦争花嫁たちの苦労があるのだろうな、と思います。

 

(*この記事はいくつかの資料を参考に執筆しましたが、中でも海外移住資料館様が公開されている「アメリカ本土の戦争花嫁と日系コミュニティ」は大変参考になりました。厚く御礼申し上げます)