今回は「日中航空決戦(二)」が掲載されたのに伴い、この決戦のモデルとなった英独航空決戦、通称「バトル・オブ・ブリテン」に関する参考文献をご紹介したいと思います。

 

有意義な前書き

前回の記事でも軽く触れたように、バトル・オブ・ブリテンは、イギリス本土上陸を狙うドイツが仕掛けた航空作戦です。

 

イギリス本土を爆撃するために飛来したドイツ空軍爆撃機と、それを護衛する戦闘機を、イギリス空軍が迎え撃った戦いでした。この決戦におけるイギリスの勝利は、破竹の快進撃を続けていたドイツも不敗ではないことを証明し、第二次世界大戦における一つの転換点になります。

 

作中では日本とイギリスの役割が入れ替わり、中国とドイツも入れ替わっているので「日中航空決戦」の名称で描かれます。

 

この作品全体を通しても、バトル・オブ・ブリテンの描写は特に力が入ったところでしたので、少数ではありますが、参考文献を読み込みました。そのうち、主要な三冊を、この記事ではご紹介します。

 

Toriaezu kore yonndoke ks.

まずはなんと言っても

 

「戦闘機 -英独航空決戦- (原題:FIGHTER)」 レン・デイトン著 内藤一郎訳 早川書房

 

です。バトル・オブ・ブリテンについて解説した戦史的・技術的な資料の中でさらに日本語で読め、今でも古本としてそこそこ手には入る本の中では、特筆すべき良書であると思えます。

 

内容は英独双方の戦力比較、機種の技術的分析から、戦術、戦略、パイロットの数と練度、後方支援、将官級人材の分析など多岐にわたる第一部から始まります。

さらに、それらを解説して決戦直前の英独双方の情況を俯瞰した上で、第二部では主要な航空戦が行われた三ヶ月あまりの間、主立った空戦についてほぼ毎日記述するなど、正直、初めて読んだ時にはその内容の詳細ぶりに心が折れました。

 

「バトル・オブ・ブリテンについて一冊で」と言われたとしたら「とりあえずこれ読んどけ」と打って響いたかのように返したくなる、良くも悪くも、そんな本ですね。

 

 

次は、先の本と比べると参考にした部分は少なかったのですが

 

対空戦 (原題:ANTI-AIRCRAFT) イアン・ホッグ著 陸上自衛隊高射学校訳 原書房

 

を挙げたいと思います。

 

陸上自衛隊高射学校が翻訳を手がけたということですが、内容は一般人にも十分読み解けるもので、地上からの対空砲火の歴史について概観した一冊となっています。

 

Waaf第二次大戦前夜の「ゲルニカ爆撃」が、当時の欧州市民にどれだけ衝撃を与えたかとか、戦時中の英国には女性だけで編成された対空砲部隊があった(小説中でも、主人公の妹が配属されます)など、部分的に参考にさせてもらいました。

(画像は、戦時中の英国空軍婦人部隊の募集ポスター)


 

 

 

The last enemy that shall be destroyed is death ー 最後に打ち勝つべき敵とは死である

そして最後に

 

"The Last Enemy" by Richard Hillary publisher:Vintage Books

 

は外せない本です。

 

The Last Enemy(ザ・ラスト・エネミー)は、何か当時のパイロットなり英国民なりの実感が分かる本がないかと方々探した上で行き着いた本で、なんとまあ本邦未訳で英語版しか存在しないという本でした。

 

が、ここで私は買ったばかりのKindle Paper Whiteを実戦投入。英単語をタッチすると辞書を引いてくれるという便利機能にも助けられ、なんとか読破したのです。

 

内容は、英国空軍の戦闘機パイロット”Richard Hillary(リチャード・ヒラリー)”氏の回想録のような形になっています。

誤解を恐れずに言えば、本書は「世の中を斜めに見ていた不良少年が、戦場の現実に打ちのめされていき、最後には目を醒まし、真人間になる」という内容で、日本で言うヤンキー系スポーツマンガに近いタイプと言えます。

 

ですが、ヒラリーはれっきとした大学生、つまり「当時の」大学生で、当時の大学生といえば押しも押されぬ知的エリートです。日本の不良少年とは少し違い、そのひねくれっぷりも知的というかなんというか。

(*画像のお顔はどうも本人らしい。ただしリンク先はAmazonアフィリエイトw)

いますよね、そういう、頭いいんだけどイヤなやつ、って。ヒラリーも最初はそんな感じで「僕が戦う理由? 自分のためさ。戦争は人間の成長を促進してくれる。数十年かかる成長を、ほんの数年にね」みたいな台詞まで飛び出します。

 

しかし、戦争の進行が……「バトル・オブ・ブリテン」が、彼の考えを少しずつ変えていきます。

その結果、彼がたどりついた結論には、色々な反論が考えられるでしょう。

もちろん、本書が1940年に、戦意高揚のためのプロパガンダとして書かれたことも忘れてはいけません。

 

ただ……いえ、やめましょう。

実は「とある愛国者からの手紙」には、The Last Enemyからの引用部分が存在します。

私の考えはそこに述べましたので、よろしければそちらをご確認ください。

 

Monument_of_Hope_Richar_Hillary(画像は、リチャード・ヒラリー氏の記念碑です)


 

 

おまけ:映画も参考にしたよん

また、以上の参考文献の他に、そのものずばりの映画「Battle of Britain(邦題:空軍大戦略)」の描写も参考になりました。戦後の英国民が、あの戦いをどのように捉えていたかが伝わってきましたね。

 

実は、私は普段滅多にDVDなど買わないタイプの人間なのですが、本作のDVDは、執筆のための資料集めをしている時期にホームセンターのワゴンセールでたまたま見つけるという出来事があり、運命的なものを感じてつい購入してしまいましたw (それまではレンタルで済ませる気でいたのですがw)