僕はまず、警官に賄賂を渡して、子供たちの処分を僕に一任するよう言い含めた。手荒なことはしないさ、まあ見てろ、と言ってね。
 そして僕は、八人の子供たちの前に立った。子供たちは、警戒心を露わにしながら、身を寄せ合うように固まって立っていて、疑り深げな目つきで僕をにらんでいた。
 僕は、たまたま一番前に立っていた、特に幼い男の子……七、八歳ぐらいだった……の肩を掴んで、少し引き寄せた。
 顔を強張らせるその男の子に、僕はこう言った。
『僕は知っているよ。君たちは、貧しいからこんなことをするんだよね』
 そして、僕は財布を取り出した。
 ……ああ、君は、僕が男の子に施しをしたんだと思うかい? ところが、そうじゃないんだな。とにかく、話を最後まで聞いておくれ。
『良かったら、このお金を、貧しさから抜け出すのに使ってくれ』
 僕はそう言って、少年の手に三ドルを握らせた。
 その瞬間、男の子は驚いたかと思うと、すぐにぱあっと、顔を輝かせるように笑った。後ろにいた他の子供たちは、軒並み驚いて、食い入るように、男の子の手の中に入った紙幣を見ていた。
 後ろの方から、様子を見ていた警官たちが『馬鹿な金持ちだ』と言って笑うのも聞こえた。
 だが、僕の計画の本番は、ここからなんだ。
 僕は、子供たちの方に向き直って、言った。
『このグループの、リーダーは誰かな?』
 一人、年かさの、といっても十二歳ぐらいだが、とにかくその男の子が、手を挙げて前に進み出てきた。
 僕は言った。
『君はリーダーだから、たくさんお金を上げるよ』
 そう言って僕は、リーダーの男の子に十ドルを渡した。彼も笑って、喜んでいたよ。これから何が始まるとも知らずにね。
 僕はさらに言った。
『じゃあ、この中で、偉い子から順番に並んでくれるかな』
 きっと、偉い子から順番に、多くのお金がもらえると思ったんだろう。子供たちは、あっという間に列を作った。順番を巡って、ちょっとした小突き合いも起こったが、すぐに収まった。ああいうグループってのは、けっこう、序列っていうのがはっきりしているものなんだろうね。
 僕は、目の前で一列に並ぶ子供たちを見渡して、笑みを浮かべた。どうしてかというと、ここまで来れば、僕の計画はもう成功したも同然だったからだ。本当に、今考えると、吐き気がするんだけどね。
 僕は、列の一番前に立っている男の子……つまり、グループで二番目に偉い子と向き合った。
 そして、僕は、男の子の肩を強く押しやって、列から弾き出したんだ。
 驚いて声も出せないでいる二番目の男の子のことを、僕は見向きもせずに、自分から前に一歩進み出て、三番目に偉い男の子と向き合った……そして僕は、その男の子には、リーダーよりも多い二十ドルを渡した。そして列から弾き出した。
 四番目の男の子のことも、僕は二番目と同じように一銭もやらずに弾き出した。五番目は女の子だった。僕は三番目と同じ二十ドルを彼女にやった。六番目の男の子には一ドルしかやらなかった。七番目の女の子には、僕は大盤振る舞いをして、五十ドルをプレゼントした。
 まとめると、僕は、一番目には十ドル、二番目には〇ドル、三番目には二十ドル、四番目には〇ドル、五番目には二〇ドル、六番目には一ドル、七番目には五十ドル、そして、おそらく八番目である一番幼い子には、三ドルをやった。
 子供たちは、紙幣を大事に握りしめながら……いや、もちろん、お札を持っていない子もいたわけだけど……何が起こったのか分からない様子で、呆然としていた。でも、子供たちは、何か異常で、とても悪いことが行われたことは、なんとなく察しているようで、心なしか、その顔は青ざめていたようにも見えたよ。
 気配がすっかり途絶えていたものだから、ふと気になって後ろを振り返ると、さっき僕のことを笑っていた警官の二人組が、今は無表情で、静かにしているのが見えた。彼らはまあ、子供たちよりは人生経験が豊富だから、僕が何をしているのか、分かったんだろうね。
 僕が何を狙ったかというと、それは、子供たちの友情を破壊することだ。
 僕は、それぞれバラバラで、でたらめな金額のお金を子供たちに渡すことによって、この、悪さをしてはいるけれども、団結力だけは立派らしいグループの間に、争いの種を撒いた。
 僕はすぐにその場を立ち去ったから、その後、何が起こったかは分からない。
 でも、子供たちは、たとえば、バラバラにもらったお金を一カ所に集めて、公平に配分しただろうか?
 いや、到底そうは思えない。
 公平な再配分よりも、ずっとあり得そうなのは、あの後、グループの間で壮絶な内輪揉めが起こって、最終的にグループはばらばらに離散してしまった、とか、そんなところだろう。
 確かに、あの後なにが起こったのかは、分からない。でも、そんなことは何の言い訳にもならない。
 実際には僕は、かなり高い確率で、幼い子供たちの間に結ばれた絆を、取り返しがつかいぐらい、ずたずたに引き裂いてしまったんだろう、と思う。
 僕が、自分は何て卑劣なことをしたんだ、と気づいたのは、ホテルに帰って夜を明かした、次の日の朝のことだった。でも、その時にはもう、何もかも手遅れだった。
 以来、僕はその時のことを胸に秘めたまま、後悔し続けて生きてきた……そしていま、こうして君に懺悔している、というわけなんだ。