「友達を選べって……どういうこと?」
「……」
「あの子達と、付き合わなければ良かったっていうの?」
「……みんな、確かに可哀想だ。でも、三人の方に問題がなかったわけじゃない。Aは、継母と関係を築こうとせず、いつも怒ってばかりいた。働きながら上の大学を目指したBは、無謀だった。Cは、恋愛感情にとらわれすぎて、周りが見えなくなっていた」
「それでも、私はみんなが大好きだった!」
 あふれ出してきた彼女の言葉を前にして、僕は黙ることしかできなかった。
「確かに、みんな、私の目の前でどんどん追い詰められていって、死んじゃって……そのせいで私は苦しんでる。でも、だからって、みんなと友達にならなければ良かったなんて、私は思わない。私がみんなを好きだったのは『死にたい』って本気で思ってしまうぐらい、みんなが『生きること』に必死だったから……たとえ、その真剣さが、追い詰められたことが原因の、不本意なものだったとしても……むしろ、だからこそ、私は彼女たちを応援してあげたかった。乗り越えて欲しかった。その手助けがしたかった」
「……ごめん」
 僕は、この時やっと、自分が間違っていたことに気づいた。
 でも、これだけは、言っておきたかった。
「……一つだけ、聞いてもいい?」
「何?」
「これからも、そういう友だちづきあいを続ける気かい?」
「うん」
「それはやめてくれ」
 僕は、すがるように言った。
「そんなことを続けていたら、君はすり減ってしまう……苦しみが、ずっと続くことになる」
 黙り込む彼女に、僕は続けた。
「僕が言いたかったのは……君に、もっと楽になって欲しい、ってことなんだ。自分のために友達を見捨てろとか、そういうことじゃない……ただ、もっと自分を大事にして欲しいんだ」
「ありがとう……でも」
 それを言う時だけ、彼女は微笑んでいた。
「ごめんね」

 

 それから数ヶ月後、僕は彼女の葬儀に参列していた。
 棺の中、白い花に囲まれて、安らかに眠る彼女を見て、僕は不思議と、穏やかな気持ちになった。
 どんな苦しみも、死者の安息を妨げることはできないのだ。
 ……それでも、彼女には生きて欲しかった。
 彼女の死が、僕を苦しめる。苦しめ続ける。

 彼女が誰かを殺したわけではない。
 だが、彼女は、自ら進んで、死にたくなるほど追い詰められている人のそばにいようとした。
 そういう意味では、彼女は死神だった、と言えるのかもしれない。

 

 そして、と僕は思う。
 そんな彼女を好きだった僕も、死神なのかもしれない、と。

 

                                                                              完

 

 


 

ご読了、ありがとうございました!

 

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