彼女が次の部屋へと続くドアに目を向けたその時、僕は異変に気づいた。
 彼女が倒したはずの敵兵が一人、まだ生きていたのだ。その敵兵は、傷つきながらもまだ戦意を捨てず、震える手で、銃口を彼女に向けようとしていた。
 彼女は気づいていない。
 僕はその敵兵の顔面に銃口を向けた。拳銃弾は、防弾ベストやヘルメットには防がれてしまうが、柔らかい鼻先にぶつけてやれば、一発で相手を黙らせることができる。
 その時ふと、僕は思った。
 もし、僕が今すぐに引き金を引いたなら……彼女は自分が危機に陥っていたことにすら、気づかないかもしれない。僕の行為を当たり前のことだと思うことはあっても、特別な感情は抱かないだろう。
 だがもし、僕が、一秒……いや、〇・五秒、撃つのを遅らせたとしたら、どうだろう。そうすれば、彼女は死にかけの敵兵から手痛い一撃を食らうことになる。それだけで死にはしない。これはゲームだから……でも、スコアは確実に削られる。
 そうなった次の瞬間、僕が敵兵にとどめを刺せば……彼女は「助けられた」と思うだろう。僕のことを、頼りがいのある、良い相棒だと、認識するだろう。


 照準を敵にぴったり合わせたまま、僕は迷った。
 その間も、敵の銃がゆっくりと上がっていく。