僕と彼女は、大通りに差し掛かった。
 遮蔽物のないその空間を、僕たちは横切らなければならなかった。しかし、通りの向こう側からは、敵兵が盛んに弾幕を張ってくる。
 僕は建物の陰に身を隠しつつ、打ち合わせどおりに「それ」を待ち構えた。
 やがて大通りに沿って、甲高いエンジン音が近づいてくる。僕は銃を大通りに向けて構えた。見ると、僕から数メートル離れて花壇の陰に隠れている彼女も、同じように銃を構えている。
 すぐに、エンジン音の発生源が姿を現す。
 テクニカル……ピックアップトラックの荷台に機関銃座を据え付けただけの簡素な戦闘車両を、紛争地域ではそう呼ぶのだという。
 敵兵からすれば、頼もしい増援到着というところだったのだろうが……そうはいかない。
 まず、こちらに狙いをつけようとした銃座の射手を、彼女が数発のライフル弾で沈黙させる。
 同時に、僕はトラックのタイヤを撃ち抜き、パンクさせた。トラックは大きく横滑りしながら急停止し、大通りのちょうど真ん中あたりで止まった。
 僕はさらに、トラック前部のエンジン部分に繰り返し銃弾を撃ち込む。その間に、彼女は運転席に弾を流し込む。
 すぐに、ダメージを受けたトラックは燃え始め……轟音と共に爆発した。黒煙がもうっと立ち上ったかと思うと、破片が高速で周囲に飛び散る。
 このゲームでは、一定のダメージを受けた車両は爆発するので、迂闊に近づけない……しかし、一度爆発した車両の残骸が、再び爆発することはない。
 大通りの真ん中に横たわる残骸は、今や、攻め入る側にとって、格好の遮蔽物だった。
 彼女が花壇から飛び出して、走る。大通りの向こうから彼女を撃とうとする敵兵は、僕が制圧射撃で押さえ込む。
 無事に、彼女はトラックの残骸の陰に隠れた……大通りの真ん中であるそこからなら、敵兵が隠れている場所に手榴弾が届くのだ。
 彼女は間髪入れずに、手榴弾のピンを抜き、大きく振りかぶって、投げた。

 

 彼女は、僕とは正反対の女子生徒だ。勉強が出来て、顔も可愛い。クラスの中で「これは」という人を一人選べと言われたら、誰もが彼女を挙げるだろうと思うような、そういう女の子だ。
 匿名で、一人で来るように、という呼び出しの主が彼女であると知った時、だから僕は「これって、ゲームじゃないよね?」などと、情けない台詞を口走った。
 だが、それに対する彼女の返答は、驚くべきものだった。
「いえ」彼女は、僕の台詞の意味を勘違いしていたが、それはこの際、問題ではなかった。「私はあなたと、ゲームの話をしにきたの」