by_the_way僕が子供だった頃、あの映画に出るというのは、憧れだった。

ところが、その映画に出ていた俳優の一人が、暴動に参加して火炎ビンを投げ、逮捕されてしまったという。

ちょうど高校三年生で、進路の選択を控えていた僕は、そのことがどうしても頭から離れなかった。


 

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2014年10月

ノンジャンル

短編

6ページ

 

 

 昨日、僕はそのニュースを目にして「目が点になる」という現象を体験した。
 映画俳優の誰それというのが、半年前の東京暴動に参加した容疑で逮捕されたというのだ。その俳優は、容疑を認めているらしい。
 そいつが出演した映画は、僕でも知っていた……日本人なら、誰でも知っているだろう。日本であれだけヒットして、世界でも大ヒットして、日本が世界に誇る作品だとか散々持ち上げられたのだから。
 もっとも、その逮捕された何とかいう俳優は、脇役の子分という末端の役柄だったのだが。それでも、何となく存在感のあるやつだったから、僕もそいつの顔をすぐに思い出すことができた。
 ニュースによれば、そいつは略奪された商店からワインを盗んで飲んだり、火炎ビンを投げたりする様子が防犯カメラに捉えられたのだという……どうでもいいが、この場合は防犯カメラではなく監視カメラと呼ぶのが正しい呼び方だと思うのだが、ニュースでは防犯カメラと強弁していた(一体全体このカメラは何を防犯していたというのか?)。
 だがもちろん、僕の目が点になったのは、日本の報道機関の言葉に対する気配りのなさに愕然としたからではない。あくまで、僕の関心はその俳優――別に「ならず者」と呼んでもいいが――にあったのだ。
 僕が子供だった頃、あの映画に出るというのは、憧れだった。その映画は学校を舞台にしていたので、メインで出てくるのはみな子役だった。何を隠そうその俳優は、僕と同い年だったのだ。映画が話題になった頃は、教室で女の子たちがきゃあきゃあ言ってて主役(もちろん子役だ)の誰それがかっこいいとか、私たちと同い年であんな映画に出れるなんてすごいとか、そういう話で盛り上がっていた。僕は、そういう話に乗っていくということはなかったが、だからといって女の子たちが話している内容が間違っているとは思わなかった。主役の子供はかっこよかったし、自分たちと同い年であんな映画に出られるなんて、すごいと思った。
 それが、火炎ビンを投げて、逮捕である。
 もちろん、そいつは脇役の子分であり、下っ端の下っ端だ。二時間の映画で十五分映っているかどうか怪しいようなやつだ。
 でも、確かに、映画には出ているのである。