とはいえ、私はこの、今ではすっかり成長し、押しも押されぬ気鋭の若手弁護士となった彼の活躍を見るのが、すっかり楽しくなってきています。
 最近、私はこんな空想にふけることがあります……裁判長という職に見切りをつけて、弁護士に転身し、彼のように活躍するという空想に……しかし、そんな「逆転」も、この歳になっては不可能なことです。せめてあと二十年若ければとは思うのですが……とはいえ、それは叶わぬ夢。老兵は年と共に重ねた責を背負って、ただ去りゆくのみなのです。
 そんなわけで、彼のような勇気がないばっかりに、未だに道化を続けている私が言うのもなんですが……彼のような心ある弁護士の活躍によって、この法曹界の闇が、少しずつでも晴れていってくれればいい……などと、近頃では、内心で彼を応援するようになりました。
 刑事裁判の世界は、罪を裁く世界である以上、明るい未来などあり得ません。制度が、あるいはそこで働く人々が、良くなろうが悪くなろうが、この世界は半永久的に、社会の暗部であり続けるでしょう。
 しかし、他のあらゆる世界と変わらぬ、明るい部分もあるのだと、私は思います。
 それは、優秀で熱意のある、志の高い人物を見ていると、心が躍るように楽しくなる、ということです。自分でもそうしたくなる、そうできるんじゃないか、と思えるほどに。
 そんなわけで、私は当分の間、この思いを胸に秘め続けることになりそうです。
 いつか、私のような人間が、道化を演じなくても済むようになる……そんな日が、訪れるまで。

 

 


 

ご読了、ありがとうございました!

 

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