結局、母犬と子犬たちは、僕らの親の通報で、保健所に引き取られることになった。
「殺処分は昔よりだいぶ減ってるらしいから、大丈夫だとは思うけど」
 と、僕の母親は歯切れの悪いことを言っていた。
 でも、身勝手な僕は、捨てられてしまった可哀想なチワワたちよりも、未空ちゃんのことが気になった。
 あれから数日は、さすがの未空ちゃんもふさぎ込んでいたけれど、いつの間にか、元の彼女に戻っていた。
 でも、僕と未空ちゃんの関係が元に戻ったのかどうかは、僕にはちょっと自信がなかった。何一つ変わらず接してくれている彼女を見ても、不安を拭えずにいた。
 喧嘩をしても、仲直りさえすれば、何もかも元通りになるなんて、やっぱり虫のいい話なんだろうか。世の中には、元通りにならないものも、あるんだろうか。

 

 そんなことを考え続けてぼうっとしていたせいか、その日、僕は家に傘を忘れてきてしまった。下校する時にはしっかり雨が降っていて、僕は、昇降口で途方に暮れていた。
「傘……ないの?」
 そんな時、声をかけてくれたのが、未空ちゃんだった。なんだか少し、ぶすっとしている。
「うん……走って帰るしかないなあ、って思ってたところ」
「ふうん……」未空ちゃんは興味なさげに言った、と思ったのだけれど、次の瞬間には、こんなことを言い出した。「じゃあ、私の傘、使えば」
「え?」
 僕はあまりのことに、呆気にとられてしまう。
「ほら、私、傘がなくても、レインコートがあるから」
「で、でも、悪いよ」
「ああ、もう!」ここまで来ると、いつもの未空ちゃんだった。「つべこべ言わずに、貸すって言ってるんだから、素直に喜びなさいよ! ほんと、あなたのそういうところって、助け甲斐がないわよね」
「わ、分かったよ……」僕は勢いに気圧されるがまま、傘を受け取った。「あ、ありがとう」
「……これでチャラだからね」
「え?」
「何でもない。あ、私、別な子と帰る約束してるから、じゃあね!」
 そう言って走って行く未空ちゃんの背中を見送りながら、僕は彼女が言ったことの意味を考えた――結局、よく分からなかったけど、でも、なんだか少しだけ気分が軽くなったのを感じて、僕は家路についた。
 ひんやりと冷たい、薄いカーテンを抜けて。