mikuchan_patrol_in_raining「梅雨時は犯罪が増えるわ」

小学生五年生の名探偵、未空ちゃんの鶴の一声で、僕は彼女と一緒にご町内をパトロールすることになった。

けれど、何事もなく終わるかに思えたパトロールは、思わぬ展開を見せて……

 

 

 

掲載時期

ジャンル

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2014年6月

ミステリ(?)

短編

7ページ

 

 

「梅雨時は犯罪が増えるわ」
 などと、未空ちゃんは言うのだった。
 未空ちゃんの見立てはこうだ。梅雨時は雨が多く、出歩く人も少なくなる。また、雨が降れば、人は傘を差すから、視界が狭まる。さらに、雨は犯罪の痕跡を洗い流してしまう。指紋、足跡、臭い……と、このように、雨の多い梅雨時は、犯罪者にとって都合の良い条件が重なるのだ、と。
「だから、ご町内をパトロールするわ」
 というのが、小学五年生の名探偵・森村未空ちゃんのご託宣だった。
「でも、探偵の仕事はパトロールじゃないよ?」僕、坂井真は、一応、まっとうな指摘をしてみる。「依頼人が依頼を持ち込んできて、その依頼を解決するのが、本来の探偵であって……」
「そんなことだから!」なんて、金切り声を上げて、机を叩きながら、未空ちゃんは言う。僕はタジタジだ。「そんなことだから、世の中から犯罪がなくならないのよ! 警察を見てご覧なさい。犯罪が起こってからでないと、あいつらは動けないのよ? でも、犯罪を本当に撲滅するには、罪を犯した犯人をすぐ捕まえるだけではダメ。もっとこう、防犯に力を入れなきゃ」
 そういうわけで、僕は小雨が降る中、未空ちゃんと一緒に下校することになったのだった。

 

 下校する時、未空ちゃんは、傘、レインコート、レインブーツという、完全装備で現れた。それぞれ鮮やかな水色、レモン色、ベージュのパステルカラーで、細かい部分にも意匠が凝らされたそのデザインは、実用性だけでなく高いファッション性も感じさせる。もっと言うと、すごく可愛らしい。
 僕はそんな未空ちゃんに見とれて惚けつつも、ふと安っぽいビニール傘一本しか持ち合わせていない自分を顧みて、なんだか惨めになった。

 

 そうして僕たちはパトロールに出かけた。パトロールと言っても、何のことはない、一緒に下校しながら、道草をするだけのことだ。