「僕たちには共通点がある」
 それが、私とAが最後に交わした会話の、最初の一言だった。
「何だ?」私はうんざりとした態度を隠そうともせずに言った。「言ってみろ」
「少し回り道をしながら考えてみよう……そうだな、たとえば、僕らの軍隊が君の国に攻め込んだ時のことを考えるんだ。その時には、僕らの関係は逆転している。つまり、捕まっているのは君で、尋問しているのは僕なんだ」
 私は調書に「精神関係の必要を認む」と書き込んだ。
「……その時、君はどういう態度をとるだろう。もし君が理想的な戦士だったとしたら……拷問されても、死ぬまで大統領の潜伏場所をしゃべるまい。違うか?」
「想像もできないな」
 私は素っ気なく言ったが、Aは続けた。
「そういう意味で、僕たちには共通点がある。つまり、僕たちは二人とも、理想的な戦士として生き、理想的な戦士として死ぬことを願っている、ということだ。しかし、悲しいかな、そのためには、僕たちは互いに殺し合わなくてはならない」
 私はペンをぴしゃりと机に置いて、Aの目をじっと見つめた。Aも見つめ返してくる。
「まだ話は終わっていない!」
 リコがドアを開け、お決まりの台詞を口にしようとしたので、私は狭い部屋に十分響き渡る声で、同僚を制した。
 背中の方に、リコが微動だにせず静止している気配を感じながら、私は言った。
「A。お前はテロリストだ。お前の仲間は、罪のない市民を何千人も殺した。今も殺そうとしている。お前は戦士ではない。だから、理想的な戦士でもあり得ない」
 私がそう言うと……Aは突然、死にかけの子供を見たかのような、悲しげな顔になった。初めて会ってからこのかた、やつがそんな表情を見せたことはなかった。
「君は似ている」
 と、Aは言った。
「似ている? 誰にだ?」
 私に問われると、Aは珍しく、たどたどしい調子で話し始めた。
「数年前、訓練キャンプで……今の君にそっくりな若者を、大勢見た。みんな、敵を殺すのだと……海の向こうからやってきて、殺戮と略奪の限りを尽くす異教徒たちを、祖国から追い払うのだと……君たちが人間ではないという、導師たちの言葉を真に受けている者さえ、中にはいた」
「……リコ。もういい。連れて行ってくれ」
 今度は大人しく、捨て台詞さえ残さずに、Aは引っ立てられていった。