mikuchan2小学五年生の僕たちは、夏休みを利用して家族ぐるみの旅行に来ていた。

 

小うるさい大人たちがいない隙を狙って、携帯ゲームの「ゾンビ・カルンヤー」を遊ぶ僕たち。

 

しかし、みんなが寝静まったその夜、事件は起こる……。


 

 

掲載時期 ジャンル 分類 分量
2013年7月 ミステリ(?) 短編 7ページ

 

 

「これは、クローズドサークルなのよ!」
 一同を前に、森村未空ちゃんはそう宣言した。
 覇気をみなぎらせる未空ちゃんを前に、三人の小学五年生は「ぽかーん」とした。
 でも、僕は大して驚かない。未空ちゃんの異様なテンションには、僕はもう慣れっこになっている。

 

 僕たち五人は今、夏休みを利用して、小学校の同級生家族で、軽井沢のペンション「ゴルトムント」に来ている。
 ペンション「ゴルトムント」は、一緒に来た小学生の一人、佐藤経瀬(ヘッセ)ちゃんの親戚が経営している。夏の軽井沢といえば絶好の避暑地なんだけれど、この年は運悪く近所に熊に出られてしまい、キャンセルが相次いだのだとか。そこで、格安でいいのでとにかく泊まりに来て欲しい、と持ちかけられたのが、経瀬ちゃんの同級生である僕らとその家族、というわけだ。

「クローズドサークル……って、なあに、真くん?」
 未空ちゃんの覇気に気圧されながら、経瀬ちゃんが声を低くして僕に聞いてくる。そうそう、僕は坂井真。何かと探偵のまねごとをしたがる未空ちゃんの下僕をやりながら、助手をしている。
 見ると、経瀬ちゃんは涙目だ。経瀬ちゃんは長くて黒い髪が綺麗で、未空ちゃんとは正反対のタイプのおしとやかな女の子。経瀬と書いてヘッセと読ませるかわった名前のせいで苦労をしているみたいだけど、本人は気に入っているらしい。「経瀬」という字面は綺麗だし「ヘッセ」というのも、ノーベル賞作家の名前なのだそうだ。
「えっとね、クローズドサークルっていうのは、怖い話とかであるでしょ。絶海の孤島に嵐が来て船が出せなくなって電話もネットもできなくなったりして、外部から孤立した状態」
「ああ……山小屋に向かう橋が落ちちゃったとか?」
「そうだね。それもよくあるクローズドサークルだ」
「ちょっと、そこ! 何をこそこそ話してるの!」
 いつの間にか顔を寄せ合っていた僕と経瀬ちゃんに、未空ちゃんの怒声が飛ぶ。
 経瀬ちゃんは肩をびくっと言わせて、顔を引っ込めた。
「ごめんごめん」
 そう言って、僕は正面に向き直る。
 僕たちは今、ペンションの談話室にいて、ソファに座りながら木目のテーブルを囲んでいた。日はとっぷりと暮れて、森に囲まれたペンションは、とても静かだ。
 その場にいるのは、僕、未空ちゃん、経瀬ちゃんに加えて、二人の小学五年生。二人とも男で、一人は中田太郎、もう一人は田中次郎という。
「なるほどお、クローズドサークルか……」次郎くんがにんまりした。「ってことは、この後、連続殺人が始まるんだなあ……田中、まずはお前からだー!」
 そう言って、次郎くんは隣にいた太郎くんにこちょこちょ攻撃を始めた。
「う、うわあああ、やめてよ、やめて~おねがい~」
 対する太郎くんはなされるがまま。でもなんだか、嫌がり方が全然男らしくない。
 二人とも古風な名前で、よく兄弟みたいだとからかわれている。でも、太郎君は長男なのに意地悪なお姉さんにいじめられながら育ったせいで、名前のわりに弱気だ。対して、次郎くんは歳の離れたお兄さんに憧れながら、すぐ下の妹の面倒を見ているせいで、たくましい感じだった。