今度の獲物は手強かった。いや、手強いなんてもんじゃなかった。予想を超えていた。というか、俺はもう死んだも同然だ、と、盗賊は思った。
  背中を袈裟斬りに斬られていて、傷口から血がどくどくと流れ出していた。焼けるような痛みに、意識が持って行かれそうだった。もうすぐ永遠の眠りが訪れるだろう、と思った。
  自分を斬った勇者が、上の方で何か言っているのを、盗賊は遠くに聞いた。
「ヘヘヘヘヘヘ。あんな見え透いた罠なんか一またぎだぜ。これで盗賊一丁上がりだ……おい、盗賊。まだ耳は聞こえてるか? 毒矢の罠を考え出した自分は賢いなんて思っていたんだろうが、そんなんじゃ真の勇者にはかないっこないぜ。あの世へ行って出直して来な」
  高らかに笑う勇者に、盗賊は、お前なんか真の勇者じゃない、と言ってやろうと思ったが、その思いはもう声にはならなかった。
  薄れゆく意識の中で、盗賊はなんだか穏やかな気持ちになった。これでいいのだ。真の勇者を殺した罰が下ったのだ。
  今となっては願いは一つだけ……もし生まれ変われたなら、また盗賊となって、今度はもっと早く、違う形であのような真の勇者と出会いたい。
  自分と同じような盗賊の中には、勇者と一緒に旅をして、勇者を助ける者がいるという。自分もそうなりたい。そうすれば、あんな罠に真の勇者が命を取られることもなくなるはず……だ……。

 

 


 

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