瞬間移動の魔法で魔王城の城下町まで飛んだ三人が目にしたのは、祝祭に沸く魔族たちの姿だった。
 ゴブリンがいる。オークがいる。インプがいる。ダークエルフがいる。古今東西のあらゆる魔族が一同に集結して通りに繰り出し、飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎ。みな心から楽しそうである。人間である三人がその中に紛れているのを見つかっても、
「おお、人間さんだ!」
「どうぞこれからはよろしくお願いします」
「いやあ、うちの魔王もあんな美人の嫁さんをもらって」
「早く子供が生まれるといいですな!」
 みな口々に勝手なことを言ってくるが、話かけてくる全員が友好的だった。
「こ、これは一体、どういうことだ……」
「おおかた、お前さんの使い魔は、馬車で魔王城に入る姫を見て、早とちりをしたんじゃろう。まったく、下調べもせずに……」
 呆然とする勇者を、賢者はそうたしなめた。
「真相はこうじゃ。魔王と姫が婚約した。近いうちに結婚式が執り行われる予定じゃ」
「そんな馬鹿な……」
「政略結婚ってやつですか?」
 魔法使いが眉をひそめてそう言った。
「そ、そうか。魔王め、軍勢を使って脅しをかけて、姫を人質に……」
「いや、恋愛結婚じゃ」
「えええええっ!」
「もともと相思相愛だったらしい。人間と魔王という生涯を乗り越え、見事にゴールイン。二人のラブストーリーはミュージカルにもなって、ヒット記録更新中だそうじゃ。あ、ほれ、あそこ」
 賢者が木の杖で指した先には、魔族たちが行列をなして押し合いへし合いする劇場があった。劇場の壁にはでかでかと看板が掲げられていて、それによるとミュージカルのタイトルは
「常識を越えた恋」
 だった。
「『非常識な恋』に改題すべきだろう……」
 あまりのことに、勇者はただ、つまらない突っ込みを入れることしかできなかった。