裏門から正門へ行くには、ちょうど高校の敷地を横切る形になる。その、ちょうど真ん中あたりに差し掛かった時だった。唐突に、彼女の声が聞こえてきた。それも、小さな声じゃなかった。これまで、彼女がそんな声を出すのを聞いたことがないぐらいの、大きな声だった。
 立ち止まって、僕は夢中で耳を傾けた。彼女は挑発していた。学校と、そこで教える教師と、そこで教わる生徒とを。彼ら彼女らの全てを馬鹿にして、罵り、嘲っていた。けれど、不思議とその言葉からは、その種の声が宿命的に帯びてしまうような、黒くてどろどろしたもの、つまり、憎悪とか、敵意とか、そうした邪悪なものの数々が、微塵も感じられなかった。彼女の声は、あくまで明るく、優しかった。時折、朗らかな笑い声が混ざるほどだった。
 彼女は高らかに歌っていた。自由の熱さを。解放の清々しさを。日常の穏やかさを。
 僕はそんな彼女の声を聞いて、彼女が元気になってくれて、本当に良かった、と思った。けれど、急に、胸を締め付けられるような不安に襲われもした。きっと、彼女とはもう会えないだろうという、僕の悲しすぎる予感は、おそらく当たっていた。
 僕は、声がする方に向かって、彼女の名前を大声で叫んだ。
 声は届いたらしかった。それまで、連綿と続いていた彼女の言葉が、急に途切れたから。
 僕は、続けて叫んだ。
「君のことが好きだ! 僕は、君を愛してる!」
 僕は、その場にじっと立ち尽くして、返事を待った。
 返事はなかった。彼女が、あの歌声を再開させることもなかった。僕が、ずっと彼女の周りに感じていた、あの優しい光と心地よいぬくもりも、どこか、僕の手の届かないところへと、いつの間にか消え失せてしまったみたいだった。
 それでも、僕は諦めきれずに、さっきまで彼女の声がしていた方へと走っていった。

 

 その方角には、第二運動場があった。休み時間が終わって、もう授業が始まっていて、第二運動場では、僕と同じ学年の違うクラスが体育の授業をしていた。
 彼女の姿がどこにも見当たらなかったので、僕は近くにいた知り合いの女子生徒に声をかけた。それは、前の学年の時に僕と同じクラスだった女子生徒で、僕の前で見せるちょっとした仕草とか、声の調子とかから、その女子生徒が僕に好意を持っていることを、僕は知っていた。
 僕はいなくなってしまった彼女の名前を出して、姿を見なかったか、と、その女子生徒に尋ねた。
 するとその女子生徒は、首をかしげて、名前を言われても分からない、どんな人なの、と聞いてきた。確かに、その女子生徒は例の彼女と面識がないはずだった。
 僕は、持てる限りの言葉を尽くして、彼女の身体的特徴を、次々に挙げていった。髪の長さ、顔の雰囲気、肌の色、背格好……。
 その最中に、僕の周囲は、少しずつ強さを増していく、白い光に包まれていった。その光に飲み込まれるようにして、僕の意識は、急速に現実へと帰っていった。

 

 見慣れた寝室で、僕は目を覚ました。