「期待が裏切られて、退屈しているんじゃないか」
  放課後、僕は軍事オタクのKに話しかけた。この男は、何かにつけては軍隊の話をしているので、よっぽど戦争を望んでいるに違いない、と常日頃から僕は思っていたのだ。
  ところが、Kの返答もまた、僕に肩すかしを食らわせた。
「何言ってるんだよ。お前、戦争になったら爆弾が降り注いで来て、火の海を逃げ回る羽目になったり、軍需工場に動員されたり、学校では軍事訓練を受けさせられるとでも思っていたわけ?」
  おおむねその通りだったので、僕は二の句が継げなくなってしまった。Kは続ける。
「確かに、そういう戦争がこの先もないとは言い切れないよ。でもな、今日日の戦争なんてこんなもんさ。軍隊は特別な訓練を受けた職業集団で、戦争なんて対岸の火事だよ」
「歴史の授業で習ったのと、ずいぶん違う気がするけど」
「戦争の様子が変わった理由は、話せば長くなるが、大まかに言って二つある。まず、技術の進歩によって、軍人に高い練度が求められるようになったせいで、徴兵制が当たり前ではなくなったこと。もう一つは、核兵器の登場によって、各国が全面戦争を避けるようになり、時間的にも空間的にも限られた局地戦が多くなったこと」
「ええっと、もっと簡単に言ってくれないか」
  Kはあっけらかんと言った。
「時代の流れってことさ。プレステが2から3になるみたいに、戦争のあり方も変わっていくんだよ」
  その時、教室を出て行こうとした数名の男子グループのうち一人が
「おーい、K! ゲーセン行こうぜ!」
  と声をかけてきた。
「お、行く行く。じゃあな」
  Kはそう言って、鞄をひっつかむとさっさと帰って行った。
  Kはゲーセンで何のゲームをやるんだろう、と僕は思った。戦争のゲームかもしれない。