次に目が覚めた時には、それから三十年の月日が流れていた。目が覚めた瞬間、俺は顔をしかめたくなった。解凍室と呼ばれ、医療施設らしい白さが光っていたその部屋は、黒々と薄汚れて不潔な空間になっていた。まともに手入れがなされていないらしい。
 それからしばらくすると、俺は看守から両親の他界を知らされた。まだ上手くうごかない頬に、涙が伝わる感触があった。
 やはり、俺はまた法廷に引きずり出された。今度は俺も抗議の声を上げた。
「こんなことは人権侵害だぞ。この国はどうしちまったんだ」
「空恐ろしいことです」
 検察席の男は言った。
「四十年もの冷凍睡眠刑を受けたというのに、被告人には反省の気配が全く見られない。これは、これまでの刑罰では、罪の重さを分からせるには不十分であることを如実に示しています」
 裁判官は検察の言葉にうなずいた。
 俺に下された判決は、冷凍睡眠百年だった。
 大声を出して暴れる俺を、廷吏が引きずり出していく……。

 次に目を覚ました時、俺は何も期待していなかった。このまま延々と冷凍睡眠と法廷との間を引きずり回され、いつか眠っている間に何かが起こって、そのままずっと目覚めない日が来るのだろうと、俺はこれから先の自分の運命を、そう見定めていた。だが、そうではなかった。
 目を覚ました瞬間の解凍室は、以前のような漂白された清潔な空間に戻っていた。丸一日、ゆっくり休む時間をもらえた。二日目からは暖かい食事が出て、カウンセラーを名乗る男が訪れるようになった。
 カウンセラーは俺に語った。
「冷凍睡眠刑は、不正の温床でした。刑務所から冷凍睡眠を請け負っている業者は、囚人を受け入れれば受け入れるほど儲かる。維持費もほとんどかからない。だから裁判官や検察官、マスコミまでも含めた各方面に賄賂を贈って、どんどん囚人を増やしていたのです。大衆はつい最近、それに気がつき、体制を打倒した。つまり、あなた方は解放されたわけです」
「……これから、俺はどうなる」
「充実した社会復帰プログラムが用意されていますが、その前にまず、罪を償わなければなりません」
 俺はどきりとした。ここまできても、やっぱり、それなのか。
「その、償い方とは?」
「償い方は……罪を、償わないことです」
 カウンセラーは言った。
「犯罪の被害者の被害は、決して消えません。ならば、罪も消えることはあってはなりません。生きている間、どういう形であれ、償い続けなければならないのです。この世には、償える罪などないのです。逆に言えば、罪を償わないことこそが、最大の償いになるのです」

 

 


 

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