「英国への道(二)」掲載に伴う解説記事です。

 

今回掲載分は「マルセイユのジャン」との短い旅程と、主人公の桐鞍真が「特攻」に遭遇する場面の二つで構成されていますので、それに合わせて解説も進行していきます。

 

作中でのマルセイユの扱い

MarseillePaysageまず、現実のマルセイユは、南フランス、地中海に面した港湾都市です。

とても有名な都市なので、日本でも名前ぐらいはご存知の方が多いでしょう。

貿易や工業で発展した街ですが、ローマ帝国以前の時代からあった長い歴史のある街でもあるそうです。名物料理の「ブイヤベース」も有名ですね。

(画像は英語版Wikipedia「Marseille」より。2013/08/25閲覧)

 

そんなマルセイユですが、小説の中では日本の植民地にされて散々な目に遭っているという設定です。史実のモデルとしては上海(列強の租界が存在)や香港(英国の植民地)を考えてもらえればと思います。

 

location_marseille……あー、いや、別にマルセイユ市民やフランス人に悪意があったというわけでもないのですが。例によって例の如く「地理的に都合が良く、しかも著名である」というだけの理由で選定しました。このへんの無神経な選定は小説を読んでくれたリアルの知人にもちょっと怒られてしまったところではあります。

 

そして、主人公が出会う若いフランス兵「ジャン」はマルセイユの出身で、植民地支配のために辛い過去を負っている、という設定です。

 

言うまでもなく「ジャン」は史実で言うところの中国人です。彼の境遇や台詞にも、それが現れています。

 

余談ですが、ジャンが語るマルセイユの様子については色々と参考にしたものはあるものの、最も大きいのはイギリスのSF作家J・G・バラードの書いた小説「太陽の帝国(原題:Empire of the Sun)」です。作者は少年時代を上海で過ごし、その後戦争勃発と同時に日本軍の捕虜収容所に入れられました。作中の描写にもそこで見聞きしたものが反映されていると言います。

 

「太陽の帝国」自体が「日本に憧れるイギリス人少年」の話だったので、ある種の構造だけ見れば、私の「とある愛国者への手紙」と似ていると言えるかもしれませんね。

 

「太陽の帝国」はスティーブン・スピルバーグ監督によって映画化されたことでも有名です。当時の世情や、過酷な収容所生活が垣間見える良作となっていますので、興味を持たれた方は是非ご覧になってみてください。

 

余談ですが、手前味噌ながら、ジャンは少ししか出てこないのに非常に強く印象に残る人物です。にも関わらず、実は当初のプロットではジャンの登場は全く考えられていませんでした。前回掲載部分の最後、ハーロックとの別れを書いた瞬間に、ふと「あ、このまま戦争が終わったではいけない。フランス人の話も書かなければ」と思い、急遽挿入した場面だったのです。

 

それがこうも印象的な場面になるとは。世の中には、巡り合わせとしか言えないものもあるのかもしれませんね。

 

「特攻」について

第二部の最後では、英国軍の「特攻」も描かれます。もちろん、本作では日本と英国が入れ替わっている設定なので、これは日本軍の特攻をモデルにしたものです。

 

特攻については、説明するまでもないかもしれませんが、航空機による艦船や航空機に対する体当たり攻撃を指します。航空機に対する特攻は生還することも可能だったといいますが、艦船に対する特攻は生還の見込みはまずないと言ってよく、本人もそのつもりで、生還を期さずに飛び立ちました。

 

特攻については色々な人が様々な論じ方をしていますが、私の見解は作中に書いたとおりです。

 

Ryoji_Ueharaちなみに、作中で引用した特攻隊員の手紙は実在した特攻隊員「上原良司」氏のものです。Wikipediaの該当項目には氏の詳細が書かれているので、本作を読んで気になった方は是非おすすめします。

 

……特攻についてと銘打って、いろいろ書こうと思ったのですが、いざ書こうとすると何も書く気になれませんね。今回はこれでおしまいにします。