「戦後占領期(二)」を掲載したことに伴う解説です。

 

今回は、本編でクローズアップされてきた「終戦後の混乱」や、現在の在日米軍を語る上で外せない「地位協定」の問題について解説します。

 

 

終戦後の混乱

終戦直後の日本がけっこうな混乱状態だったことは、広く知られるところです。といって、それらを一つ一つ全て挙げていくと大変なことになるので、ここでは本編と関係あることに絞って触れていきたいと思います。

 

まず、本編を読んで感じるのは、厳しい食糧難、物不足だと思います。

 

Labor_Mobilization_in_Japanese_Empire戦時中の日本は男手のほとんどを軍隊に取られ、敗戦時には、工場や農村で働いているのはほとんどが女性や老人、子供などであったと言います。日本が降伏を決めたのは1945年8月ですが、この時点では、秋以降に大量の餓死者が出始めるという政府の予測もあったほどです。

(*画像は戦時中の勤労動員の様子。女性が飛行機を製造しているのが分かります)

 

さらに、戦時中に米軍が空からばらまいた機雷(海の中に設置する地雷のようなもの。船が近くを通ると爆発して船を沈める)により、日本は本土の港から本土の港へという国内航路においてさえ、資源の海上輸送を行えなくなり、産業はにっちもさっちもいかない状態に陥りました。

 

戦争が終わってもそういった困窮状態はすぐには解消されず、むしろ戦地から帰ってくる復員軍人がいるので養わなければならない人口は増えるわけで、大変な混乱が続いたわけです。

 

Buying_train_at_Nippori_Stationその結果、本編でも軽く触れられるのが「買い出し列車」です。当時、都市部の住民は食料を配給に頼っていましたが、以上のような状況からそれだけでは足りず、仕方なく農村部に行って一種の闇取引で食料を入手していたのです。

(*画像は当時の買い出し列車の様子)

 

当然のことながら、現在ではこうした光景は目にしなくなりましたが、当時の雰囲気を感じ取る方法を、私は少なくとも一つだけ知っています。

 

そこそこ大きな図書館には、資料室というのがあるはずです(中には新聞室という新聞専門の部屋を備えているところもあるそうですね)。そしてそこには、戦前から存在した、たとえば「朝日新聞」や「読売新聞」の、戦時中の紙面が所蔵されていると思います。

 

そこで戦争末期や終戦直後の新聞を見てみると、作中でも触れられている通り「一枚の紙の裏表にびっしりと文字が印字されて、一日分の新聞」という、当時の物不足を想像できる紙面を見ることができると思います。

 

私も他の用事で資料室に入った時に、たまたま見つけてびっくりしたのですが、是非、機会があれば覗いてみてください。

 

 

今も残る「地位協定」とは

今回掲載分でもう一つ、クローズアップされる要素となるのが「地位協定」です。

 

地位協定とは、進駐してきた軍隊の政府が、その国の政府と結ぶ協定のことで、進駐軍将兵のその国の中での法的地位を定めたものです。多くの場合、条件つきではありますが、進駐軍将兵はその国の中で犯罪を犯しても、通常とは異なった司法手続きに身を委ねられます……たいていは、進駐軍側の軍法会議(軍事法廷)や法廷で裁かれるというものです。

 

進駐軍を迎える側からすれば、進駐軍が犯罪を犯しても自分の国で裁けないわけで、これは一部国民の間に不安を呼び起こし、時には反対運動にまでつながります。

 

作中で説明がある通り、もともとこの地位協定は、法制度が大きく異なる列強諸国と植民地との間で、列強の軍人が野蛮な(と言っては失礼ですが)植民地の法律によって裁かれるのを防ぐためにできたものと思われます。

 

たとえば、今も米軍はアラブ各国に軍隊を駐留させていますが、あの地域の国々では女性が車を運転することが法律で禁止されていたりします。また、先進国では些細な罪と考えられるような罪状でも、鞭打ちなどの厳しい刑罰に処せられることもあります。

女性兵士が車の運転をできないでは任務に支障をきたしますし、米軍人が先進国では残酷で異常な刑罰と考えられている目にあっては非常にまずいことになるので、そういうことを防ぐために地位協定があります。

 

日本で問題になっている日米地位協定などもそうした考えの延長線上にあるものと思われますが……まあ、有り体にいってかなり問題がありますね。

 

「米軍人が日本で犯罪を犯しても、日本では裁かれない」というのは、実際には条件つきのことですし、最近は反対運動をきっかけにアメリカ側も配慮して柔軟な運用をするようになっていますが、その程度では、やはり住民の不安が払拭できるとは思えません。

 

日本の安全保障に対する米軍の貢献を高く評価すればこそ、いざという時に米軍が円滑に作戦できる態勢を、平時から整えておく必要があると思います。

今の地位協定のままだと、米軍基地周辺に住む住民に強い不安や不満を与えてしまうのは無理からぬことであり、このような「反米的な」市民を身近に抱えていては、有事の際にリスクになり得ます。極端な話、在日米軍の駐留に不満を持つ市民が、基地の状態を逐一敵国に通報するなどという、スパイ行為に走る可能性さえあります。

 

こういうことを言うとすぐに「それなら反米的な市民を捕まえて牢屋にぶち込め」「殺してしまえ」などと言う人がいるのですが、そんなことは非現実的ですし、万が一にも実行すれば、返って反米感情は高まり、日本の安全を害する可能性が大きいです。ゆえに、反米的な市民を力で押さえつけるのは、日本を危険にする無謀な行為だと言えます。

 

ではどうすればいいかというと、やはり根本的には、地位協定を改正し、日本国民が安心して(少なくとも偏見などは持たずに)米軍人と一緒に暮らしていける環境を整備することでしょう。

 

Yokota_friendship_festival2そうして周辺住民が米軍に好意を持つようになれば、いざという時にも頼りになります。上述した最悪のケースとは逆に、米軍基地の情報を本国に流している工作員を、住民が見つけて進んで通報してくれたりするかもしれません。

(*画像はWikipedia「横田飛行場」より。2013/09/08閲覧)

 

作中で描かれた地位協定問題の一応の結末は、そんな私の考えを反映したものとなっています。