はい。今回は小説講座特別編としまして「ペース管理は作業時間を基準とするべき」という話をしたいと思います(うっかりこれまでと違って口調がですます調になってしまいましたが、気にしないでください(汗))。


小説以外の多くの分野でも応用できることだと考え「クリエイター」という意味の広い言葉を使いましたが、小説に限るとするなら、今回の話は「執筆ペースの管理は、文字数基準ではなく、執筆時間基準で考えた方がいい」という話(そしてそれはなぜかという話)になります。


つまり、よく「1日3ページを目標に毎日書いてます」という人を見かけますが、それはやめたほうがいいんじゃないですか、それよりも「1日1時間を目標にして書く」という風に、時間を基準にして管理したほうがいいんじゃないですか、という話です。


また、記事の後半では、作業時間基準による管理におすすめのツールも紹介します。



作品完成の方程式

いきなり「方程式」なんて大げさなものを出してきてしまってスミマセン……(汗)。


ただ、ここでちょっと、作品の量と質(クオリティ)の2つに絞って、これらを方程式で表すことで考えを進めていきたいと思います。


まず、作品の量(小説で言うなら文字数)は、以下の式で計算できる、と仮定します。


 作業速度 × 作業時間 = 作品量(文字数)


この式はわかりやすく、説明不要だと思います。
続いて、作品の質(クオリティ)について、以下の式で表すことができる、と仮定してみます。


 (1 ÷ 作業速度) × 作業時間 = 作品のクオリティ


ここで、クオリティは作業速度の逆数に比例するものとしました。これは、作業速度が2倍になると、クオリティが半分になることを意味します。一方、作業時間については、かければかけるほど、クオリティが高まるものとしました。


やや乱暴な仮定ではありますが、全くの見当違いというわけでもないと思いますので、大まかな関係性が掴めればよしとして、今回はこれをベースに考えていきます。


さて。クリエイターの目標は、みんな大体同じだと思います。


「できるだけ短い期間で、できるだけクオリティの高い作品を完成させること」とすれば、そう間違ってはいないでしょう。


では、この目標を達成するためには、作業速度と作業時間を、それぞれどのように調整していくのがいいでしょうか。


まず作業速度、つまり、単位時間当たりの作業量を調整することを考えてみます。


しかし、いきなりつまずいてしまいますよね。この式を見る限り、作業速度を上げれば、短い時間で作品を完成させられますが、クオリティは下がってしまいます。
あちらを立てればこちらが立たずです。どうやら、闇雲に作業速度を速めればいいというものではなさそうです。


ところが、一方の作業時間はどうでしょうか。
作業速度と違って作業時間は、かければかけるほど、作品は完成に近づき、クオリティも高まることが、先の2つの式から読み取れると思います。


これが、今回の話全体のポイントです。


文字数ベースで管理することの功罪

ここからはちょっと小説の話に限ることとして、作品量を文字数に言い換えて説明していきます。

冒頭でも言ったように、小説を書く人はよく「一日3ページ」という具合に、文字数(ページ数)を基準にしてペース管理をしています。


これは確かに、定められた締切りに間に合わせるためには有効な管理法です。作品がいつ頃完成するか、逆算して求めることができるからです。

しかしここでは「文字数による管理」のデメリットについても考えてみて欲しいと思います。


もう一度、文字数の式を見てみましょう。


 作業速度 × 作業時間 = 文字数


でしたね。


ここで「一日3ページ」のように、文字数を固定してしまうとすると、作業速度と作業時間を調整してペース管理を行っていくことになります。


しかし、小説に限らずどんなメディアでもそうだと思いますが、どんな作品にも手のかかる部分とそうでもない部分がある、というのが現実ではないでしょうか。


小説で言うと、頭を使って書かなければならない心理描写のシーンだとか、戦略会議のシーンだとかは、どうしても作業速度が落ちると思います。反対に、スピード感が大事な戦闘シーンなどでは、執筆がサクサク進み作業速度が上がる人が多いのではないでしょうか(むしろ戦闘シーンにこそ時間をかけるという人もいるでしょうが)。
また、単純に「今日は調子が悪い」という理由でスピードが落ちることもあり得ますよね。


このように、作品を作る上では「作業速度はコントロールが難しい」のがわかると思います。


ここで、先ほどのペース管理の話に戻ります。
もし作業速度がコントロール困難だとすると、一日当たりの文字数を固定すると、必然的に、作業時間を調整してペース管理を行うことになってしまいます。


式に当てはめると、次のようになります。

 作業速度(コントロール不能) × 作業時間(毎日変動) = 文字数(固定)


さあ、大変ですね。文字数を固定したために、作業時間が毎日変動することになってしまいました。


楽なシーンの時は、一日1時間ぐらいで終わるのに、大変なシーンの時は、一日に2時間も3時間もかかってしまうわけです。「一日3ページ」と言っても、実は同じ3ページではないわけです(なんだか相対性理論を思い出す話ですね……)。


学生の人にはわからないかもしれませんが、規則正しい生活が至上命題の社会人にとって、このように「毎日何時間かかるか読めない」のは、はっきり言って致命的です。


作品作りを諦めることを考えてしまうレベルですね……。


文字数ではなく、作業時間を固定してペース管理しよう

一体、どこで間違えてしまったのでしょうか。
どこを直せば、適切なペース管理ができるようになるのでしょうか。


まず考えるのは、難しいのを承知で、作業速度を固定することだと思います。

しかし、もう一つの方程式を見てもらえればわかるように、作業速度を無理して維持しようとすると、クオリティが下がってしまうことが予想されます。


私としては、ここぞという重要なシーンで作業速度を落とすのは、何も間違ったことではないと思うので、重要な部分は思う存分時間をかけて丁寧に作ればいいと思います。


そうすると、答えは一つしかないですね。

ずばり、作業時間を固定して、それを元にペース管理をすべきです。「一日3ページ」よりも「一日1時間」の方が良い、と私は思うのです(もちろん、2時間でも3時間でも、やればやるほどいいですが)。


結果として、文字数の固定はできなくなり、一日当たりの文字数は毎日変動することになりますが、致し方ない、と諦めるのも一考かと思います。


この状態を式で表すと、次のようになります。


 作業速度(コントロール不能) × 作業時間(原則として固定) = 文字数(毎日変動)


ここで作業時間は、作業速度と違って「無理をして維持した場合の弊害」がない、というのがポイントです。作業時間は、増やせば増やすほど作品に貢献するのは、先述した通りです。


もちろん、文字数ではなく作業時間を固定することにより「規則正しい生活」を維持することもできます。やはり長丁場の執筆には、良好な生活リズムが欠かせないですよね。


ビジネス風に言うと「成果物の量ではなく、直接作業時間をKPIとして管理を行う」とでも言えばいいんでしょうか(ちょっと自信ありません間違ってるかも(汗))。


もちろん、このように作業時間をベースにした管理は、作品がいつ完成するかいま一つはっきりしない、という大きなデメリットを抱えています。


ただ、趣味で創作をしている人間にとっては、そこまで大きな問題ではないのではないか、と思ったりもするのですが、どうでしょうか。


このあたりは、人によって事情が違うかもしれません。たとえば、趣味でやってる人の中でも、コミケに出店してる人とかは、何よりも締切りを守ることが大事ですからね……。


時間基準のペース管理におすすめのツールを紹介

何にしても、私個人の意見としては「時間を基準にしたペース管理がおすすめですよ」というお話なのでした。


さて、では最後に「時間基準のペース管理」におすすめのツールについてご紹介したいと思います。


ずばりそのツールの総称は「タイムトラッキングツール」です。


タイムトラッキングなんて初めて聞いたという人も多いと思いますが(私も最近知ったので(汗))、簡単に言うと「高機能なストップウォッチ」みたいなものです。


タイムトラッキングツールでは、たとえば「執筆」と打ち込んで新しくタイマーを作った上で、執筆を始める時に画面上のボタンをぽちっと押すと、タイマーが動き始めて時間の計測が始まります。執筆を終えた後にもう一度押すと計測が終わり、これにより、執筆にどれぐらいの時間を使ったかが記録されます。


これを繰り返していくことで、今日一日で、あるいは今週一週間で「執筆」に何時間かけたかが記録・集計されます。


……と、たったそれだけのアプリなんですが、これがなかなか「時間基準のペース管理」に役立つんですね。「基準として決めた時間をクリアできているか」を簡単にチェックできるのはもちろん、他にもいろいろメリットがあるんです。


たとえば、用事があったりしてあんまり執筆できなかった週には、画面を見て「今週はたったこれだけしかできなかったのか……」と、反省の材料にできます。


また(時間基準で管理しようと言っておいてなんですが)、気分が乗って長時間書いてしまう時もあるでしょうから、そういう時は「今週はこんなに書いた!」ということがタイムトラッキングツールにより可視化され、モチベーションアップにつながります。


このようにタイムトラッキングツールは「基準として決めた時間をクリアしているか」を確認できるだけでなく、反省点の分析やモチベーションアップにもつなげやすいんですね。


ちなみに、こうした「数字を見て一喜一憂する」ことは、作業時間ではなく、文字数でも同じようなことができそうに見えますが、実は意外とそうでもないんです。


なぜかというと、それはもちろん「日によって作業速度が違うから」です。


文字数による管理だと、どうしても「今週は時間のかかる大事なシーンを書いたから、文字数の進み具合が遅くなっても仕方ないよね!」とか「今週は文字数の目標を大幅に超えることができたけど、簡単なシーンだったから、素直に喜べないなあ……」とかいう具合に、自己評価が曖昧になってしまいがちなんです。


その点、作業時間は言い訳ができませんし、過大評価の心配も無用です。作業時間は「多ければ多いほど良い」指標なので、数字をそのまま受け止めて、素直に反省したり、喜んだりすることができるのです。この点も、作業時間による管理をおすすめする理由ですね。


話を戻しましょう。


昔だったら、作業時間を計測・集計するにはそれなりに手間がかかったのでおすすめしづらかったのですが、いまはタイムトラッキングツールさえ使えば、作業の始めと終わりにボタンを押すだけでできてしまうので、作業時間による管理が現実的な方法になってきたわけです。


では具体的にどのサービスがおすすめかというと、英語ができる人なら「Toggl」が良いと思います。無料の範囲で十分に実用的です。PC・スマホ両方で使えます。


残念ながらTogglは英語のみですので、英語が苦手という人は「タイムトラッキング 日本語」で検索するといろいろ出てきますので、探してみてください。


ちなみに、私はTogglをClickUpというタスク管理ツールと連携させて、タスク毎に実際作業時間を記録しつつ、タスクの締切管理や、完成までの見積もり作業時間を元にした管理などもやっています。IT系のツールに苦手意識がない人には、TogglとClickUpの連携がおすすめです(ClickUpも英語オンリーなのが難点かもしれませんが……)。


まとめ

まとめると


・文字数(=作業速度)と違って、作業時間は増やせば増やすほど良い指標だから、作業時間を基準としたペース管理を行うべき
・ただし、作業時間基準の管理には、完成予定日が読めないという欠点があるので、そこだけは注意
・おすすめのタイムトラッキングツールはToggl


というところでしょうか。

いや、なんか、久しぶりに小説に関する記事を書きましたが、どうだったでしょうかね。


小説講座も終了から長いこと経ちますが、また何か良いネタがありましたら、今回のように特別編を書いていきたいと思います。


それでは、また会う日まで。


 
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