そもそもこの三類型は何の役に立つのか?

さて、読者の中には、ここまで読んで疑問を感じた方も多いと思う。

 

私は繰り返し、あるキャラクターは類型の間を揺れ動くものだ、と述べた。しかし、そんな曖昧な分類が、果たして正確と言えるのだろうか、と当然疑問に思うだろう。

 

開き直るようで恐縮だが、実のところ、私は博物学的な(学術的な)目的で、キャラクターを分類したいわけではない。

 

ではなぜこんな分類を作ったかというと、それは「そのキャラクターがどの分類に属しているかを意識していると、より良い小説を書きやすくなる」と考えたためだ。

 

というか「より良い小説を書きやすくする」ために、この分類を作ったと言った方が、順序としては正しい。

 

何が言いたいかというと「良い小説を書く」という目的のために作った実務的な分類法であって、客観的に(あるいは学術的に)見てこうだと言いたいわけではないのだ。

 

では、一体この三類型は、良い小説を書く上でどんな役に立つのだろうか。

 

それは「キャラクターを分類することによって、そのキャラクターを『どう描写すべきか』が明確になる」ことである。

 

ロボット型の場合だと、この点はあまり気にしなくていいかもしれない。ロボット型はあくまでも脇役なので、適当に格好いいことや面白いことを言わせておけばいいだけだ。

 

ただ、人間型や超人型はそうはいかない。物語全体の中で「人間型」としての役割を背負わされたキャラクターには「弱さ」の描写が欠かせない。「超人型」にとっての「強さ」や「非常識さ」も同じだ。

 

キャラクターの分類をせずに、漫然と小説を書いていると、ついこうしたことを忘れてしまいがちになる。ストーリー全体の主題が「人間型主人公の弱さの克服」なのに、主人公の弱さの描写・強調を怠ってしまったり、突拍子もない行動で読者を驚かさなければならないはずの超人型のキャラクターに、常識的な行動をさせてしまったり。

 

キャラクターを類型に当てはめて考えておくと、こうしたミスを減らすことができる、と思う。「ああ、このキャラは人間型だから、もっと『弱さ』の描写を増やさなきゃならないな」とか「このキャラは超人型だから、ここで非常識なリアクションをさせてみよう」とかいった具合だ。

 

言ってみれば、類型はキャラクターを型にはめるものではなく、作者がキャラクターを描写する上での指針にするものなのだ、ということになる。

 

特徴\類型 ロボット型 人間型 超人型
克服すべき弱さ ない ある ない
予想外の行動 ない 稀にある しょっちゅうある

 

……と、ここでふと思いついて、三類型の最も重要な特徴二つだけを抜き取って表にしてみた。

 

補足すると、人間型が「予想外の行動→稀にある」となっているのは、人間型キャラクターの成長を描くシーンで「『弱さ』を抱えていた時からは考えられないような(つまり予想外の、『強さ』を示す行動に出る」ためである。

 

三つあるハイブリット型

さて「キャラクターは類型の間を揺れ動くものだ」と書いた時から明らかだったと思うが、それぞれの類型の「中間」に位置するキャラクターも存在すると考えるのが普通だ。たとえば「超人型に近い人間型」とか「人間型に移行しつつあるロボット型」と言った具合に。

 

そこで最後に、二つの類型の特徴を併せ持つキャラクターを「ハイブリット型」として、それぞれ軽く触れておこう。

 

実際のところ、「純粋な人間型」とか「純粋な超人型」といったキャラクターは現実には稀で、大抵のキャラクターは二つの類型の間ぐらいに存在する。

 

なので、ハイブリット型の基本的な考え方を知っておけば、それを応用することによって、実際の執筆作業にはより一層役立つだろう。

 

・ハイブリット型その1 … 英雄型 = 人間型 + 超人型

最も分かりやすく、かつ最も頻繁に見かけるのが、人間型と超人型のハイブリットであるこの「英雄型」だ。

 

英雄型は超人型に見られる「強さ」と人間型に見られる「弱さ」の両方を持つのが特徴となり、当然、書き手にはこうしたキャラクターの二面性を上手に表現することが求められる。

 

強さと弱さのバランスについてはケースバイケースで、特定の分野ではめっぽう強いがそれ以外はからきしダメだったり、大抵のことでは圧倒的なパフォーマンスを見せつけるが一つだけ弱点があったりとか、様々である。

 

また、先に「人間型主人公の元では自己の変革が、超人型主人公の元では世界の変革が主題となる」といった趣旨のことを書いたが、英雄型主人公の元では普通、世界と自己、双方の変革が主題となることが多く、特に「世界を変革していく過程で、主人公もまた成長を促される」という展開が多い。

 

・ハイブリット型その2 … 遷移型 … 人間型 + ロボット型

ここで言う「遷移」とは「移り変わっている最中」という程度の意味である。

 

人間型とロボット型のハイブリットの場合、中間で留まって安定するということは少なく、人間型がロボット型に変化する途中か、ロボット型が人間型に変化する途中か、いずれかの形を取って現れることが多い(と思う)。なのでここでは「遷移型」の名称を用いた。

 

ロボット型が人間型に遷移するのは、割と分かりやすい。要するに、脇役が主役に昇格する途中、ということである。

最初は何でもない脇役として登場していたのが、徐々に血もあり肉もありそして「弱さ」を持つ人間型キャラクターに昇格するという展開は、特にライトノベルの長期シリーズに多く見られる。この過程で登場するのが「遷移型」という概念である、ということになる。

 

逆に、人間型がロボット型に変化するというのは、例が少なくてやや分かりづらいかもしれない。

たとえば、勇者が王子を助けて国王に即位させる話を考えてみる。勇者と王子は冒険を成功させ、王子は無事に国王となる。しかし、勇者の冒険は続き、物語は終わらない。今や国王となったかつての王子は国事に追われ、陰ながら勇者を助けたりはするものの、かつてのように勇者に帯同することはなく、物語の表舞台からフェードアウトしてく。

こうした展開の物語では、当初は人間型だった王子は、国王に即位した段階でロボット型に変化した、と考えることができる。

 

遷移型キャラクターを描写する上で重要なのは「このキャラクターの物語全体における位置づけが、変わりつつあるんだよ」と読者にアピールすることである。

 

人間型がロボット型に降格する場合はフェードアウトという形を取るのであまり気にしなくてもいいかと思うが、ロボット型が人間型に昇格する場合は「昇格しつつあるよ」アピールを怠ると「なんで急にこの脇役が……」と読者が混乱する恐れがあるので、気を配った方がいいかもしれない。

 

・ハイブリット型その3 … 聖人型 = ロボット型 + 超人型

「レッテルから逸脱しない」ロボット型と「予想外の行動をとる」超人型。水と油のような二つの類型だが、稀にこの二つのハイブリットである「聖人型」キャラクターが見受けられる(と思う)。

 

聖人型キャラクターは、定められた軌跡から逸脱しないロボット型の「静」の部分を保ちつつ、常人とはかけ離れた超人型の価値観を併せ持っている。これが浮き世離れした「聖人」のイメージに符合するということで「聖人型」と名付けてみた。

 

聖人型キャラクターは普通、何らかの理由で、俗世に直接関わることを嫌う。そのため、自ら行動を起こそうとはせず、物語の中では主人公への助言者として現れることが多い。

 

自らは行動を起こさない点がロボット型に似ている一方、その超人的な価値観や知識で以て、主人公をサポートする……それが聖人型キャラクターによくあるパターンだと言える。


 

types_of_characters_triangle


 

 

 

次回予告

さて、今回は(自分にしては)割と具体的な話になったんじゃないかと思う。

 

が、具体的な話になった分、細かいところでほころびが散見される結果となった。「たぶん」とか「と思う」という一部の記述に見られる自信のなさがそれだ。

 

このテーマについては未だ研究途上で、まだまだ研鑽を積まなければならないと再確認できた。

 

と、そんなものが読者の役にどこまで立てるのか、という問題はあるが、まあ「ここは良いな」と思ったところ(があれば)そこだけ取り入れる、といった具合につまみ食いしてもらえばいいんじゃないかと思う。

 

さて、次回は……少し迷うが「極私的プロット作り」と題してお送りする……かもしれない。今回の次回予告はちょっと自信がない。

 

ともあれ、また来月。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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