というわけで、今日は仕事を休んで公開初日の「天気の子」を見てきました。


そこでネタバレつきの感想・レビューを投稿します。


※くどいようですが、ネタバレつきなので、その点はくれぐれもご注意願います。




結末には「鬱要素」あり

監督自身がインタビューで「賛否がわかれる」と表現したこの作品。


早速ですが、その「賛否がわかれる」結末とは、こういうものでした。



ヒロインの女の子は、東京の異常気象を治めるため、人柱となって天に召されていく。


主人公はヒロインを助けに行こうとするが、かねてから家出少年として主人公を捜していた刑事たちに捕まってしまう。

だが、主人公はそれまで関係を築いてきた人たちの助けを借りて、警察の追跡を逃れ、ついにヒロインが召されていった「空の世界」にたどりつき、ヒロインを助ける。


……だが、ヒロインが人柱にならなかったせいで、東京は永遠に降り続く雨という異常気象に見舞われ、三年後には、広範囲が水没するに至る。

保護観察処分となり、故郷の島に送還された主人公は「本当にこれで良かったのだろうか」と悩みながら日々を過ごし続けていたが、保護観察が終わり、東京で三年ぶりの再会を果たしたヒロインを目にした瞬間「自分のやったことは正しかった」と確信する。



……というものです。


まあ、哲学的に言うなら「最大多数の最大幸福」に関わる問題が、本作品の終盤におけるテーマだった、ということになるのでしょうか。

たった一人の犠牲で世界が異常気象から救われるなら、その方が……という考え方に対して、主人公がNOを突きつける結末ですね。


何年か前に流行ったマイケル・サンデル著「これからの「正義」の話をしよう」でも似たような話が取り上げられていましたから、読んだ人は連想したかもしれません。


しかし……いくらヒロインが助かったとはいえ、永遠に降り続く雨に見舞われ、東京の広範囲が水没するという容赦ない結末は「鬱要素」と言うしかないでしょうね。


ただ、個人的にはこの結末は、前作「君の名は。」への「現実に被災者という存在がいる中で、起きた災害をなかったことにする結末が、本当に救いと言えるのか」という批判に対する、新海監督の真摯な回答であるように思います(劇中で「災害と一緒に生きていく」東京都民の姿が描かれていることからも「批判への回答」の側面がうかがえます)。


そんなわけで、ちょっとアメリカンニューシネマ的な鬱要素のある結末なのですが……個人的には、割と好きですね。

私も、実生活で周囲から賛否両論を巻き起こすことをやらかしたりするのですが、それを連想して自分に重ねちゃったりしてね……感情移入しちゃいましたね。それもあって、割と好きですね、こういう結末は。


ただまあ、それと同時に、ぶっちゃけこの流れでこの作品を批判とかできる人いるのか、っていうのは見てて感じたりもしました(笑)。


つまり、ヒロインを助けた場面で、壮大な音楽と共に、美しい空を落ちながら下界へと帰って行く二人の姿が描かれるわけですよ、メチャクチャ綺麗に。


で、これだけの映像を見てなお、主人公の決断を批判とかできる人いるのかと。

本当に賛否両論覚悟するんだったら、こういう、エモーションをかき立てるような演出で本当に良かったの……とは、思わなくもないですが、まあアニメですし、監督が作品にメッセージを込めるのは普通のことですし、こう書いておきつつ、私もそれほどこだわる気はないです。


ただ「面白かった・面白くなかった」という議論はあり得ても「賛否両論」という形には、なかなかならないんじゃないかなあ、とはちょっと思いました。


警察官の描き方について

ただ、もしかしたら作中での警察官の描き方には賛否があるかもしれません。


話の流れで仕方ないんですが、この作品では警察は悪役なんですよ。


基本的に皆さんルールに基づいて仕事をしてるだけなんですが、あまり深く考えずに淡々と法律を執行しておられる(まあ現実もそうなんでしょうが)ので、色んなことに悩みながらやってる主人公サイドと比べて、どうしても官僚的・教条主義的に見えてしまい、それがまた悪役っぽく見える。


さらに、さきほどはさらっと「警察の追跡を逃れ」なんて書きましたが、実際の映画の中では主人公サイドの皆さんがけっこう派手にやらかしていて「おいおい」と思う場面もしばしばあり、ラストでは全員が公務執行妨害で逮捕(ないし補導)されています。


そんな風に主人公サイドは警察とやたら衝突(全面対決?)してるので、見てる側からすると「ひょっとして反権力・反権威のメッセージも入ってるのかな?」と微妙に感じます。これは確かに賛否両論ありそうですね。


……まあ、個人的には好きなんですけどね、そういうの(笑)。


いやね、恋愛とかでも「もう諦めろよ」って言われることあるじゃないですか。


で、若いとそれに対して「なんで諦めなきゃならないんだクソがあああああ!」とか思っちゃったりすることもあるじゃないですか。


そういう「社会」とか「世界」ってものに対する思いが、この作品の「警察との衝突」シーンに現れてるような気がしなくもなくて、個人的には好きなんですよね、そういうの。


ぶっちゃけ面白いのかどうか

まあ一番大事なのはこれですよね。面白いかどうかですよね。


とりあえず、終盤にどういう流れになるのかは書いた通りなので、序盤・中盤について書きます。


ずばり、序盤・中盤は、完全に「日常パート」です。

たまにピンチがあったりはしますが、おおむね、平穏で幸せな生活が延々と描かれます。


「日常パート」で幸せ模様を描いて、終盤に「泣き」を持ってくるという、よくあるパターンです。


で、問題はこの「日常パート」の出来ですが。


……ぶっちゃけ私は「つまんねー」と思いました。


前作「君の名は」の日常パートと比べても……「つまんねー」と、思ってしまいました。


うーん、なんというか、終盤の展開のためにある日常パートという感じで、日常パート単体ではあまり面白くないんですね。終盤の展開に備えて設定を並べている感じというか……。


RADWIMPSさんの音楽で盛り上げようとしているみたいなんですけど、あまり奏功してないというか。


そうすると、どうして日常パートがつまらないと感じるのかということを書かなければならないんですが……なんでですかね?(汗)


前作との対比で言うと、たとえば、前作の主人公とヒロインの喧嘩は見てて結構楽しかったんですよね。あと、音信不通になったヒロインを捜し求めるパートも、謎解きみたいでワクワクしましたし、その後の彗星災害のところなんかもうね……。


ただ今作はそういう「序盤~中盤に観客が観てて楽しめる要素」はなかったですよね。


「離島から家出してきた主人公が、東京での生活を確立していく様子」で楽しませようとしたのかもしれないですが、正直な話、楽しめないです。だって高校も出てなくて親の支援もない少年のそんな生活が長続きするわけない(長続きしたとしても良い方向にはあまり向かわない)って、観客にはわかりきってますからね。観てて楽しめるものではない……むしろそれこそ鬱要素まである。


主人公の家出の理由が「なんとなく息苦しくて」としか説明されていないのも、このシーンが楽しめない理由の一つかもしれません。前作では「田舎の悪い面」がしっかりと描かれていたためヒロインたちが田舎を出たがるのがよくわかったんですが、今作ではそれに当たるものがない。


いやわかるんですよ? 「なんとなく息苦しい」のはわかるんですよ? でもだからって家出するかなというか……そういえば「言の葉の庭」でも早く社会に出たい少年が靴作ってましたけど、あれと同根のものを感じますね。気持ちはわかるんだけどそこまでするか、みたいな……


ただ「言の葉の庭」の主人公はちゃんと靴作ってるぶん「すげえな」って思わせる面がありますが、今作の主人公にはそういうのがないというか……今作でも働いてる場面はありますが「すげえな」って感じではないですし。


「晴れ女ビジネス」のくだりも個人的にはそれほど面白くなかった気がしますね……「だってこれあとで絶対にしっぺ返しあるでしょ」って観てる側としては思っちゃうんですよね。やはり楽しめない……あ、でも値段の設定で悩むあたりはすごく気持ちわかるなって気はしました(笑)。でも三人が半日~1日稼働して3,480円じゃ割に合わないですよね~~……でもそこは子供っぽくて可愛い感じする(笑)


あと絵的には、やはり雨が降りすぎですよね。暗いです。

ヒロインが晴れを呼ぶシーンで感動させようとしたのでしょうが……どうなんでしょう。上手くいったんでしょうか。個人的には、それほど感動しなかったような……それこそ「言の葉の庭」のように「美しい雨」という路線で行った方がよかったのでは。


ヒロインって言えば、このヒロイン、申し訳ないのですがあまり主体性が感じられなかったです。「キャラが立ってない」というか……。


あとはそうですよね、序盤と終盤の整合性ってことで言うと「早く社会に出たくてもがく主人公」というのは一貫しているんですけど、それと「恋愛」って関係あるのかなと思わなくもない……


つまり、主人公がもがいた結果として、ヒロイン=幸福な恋愛を獲得した形になっているんですが、それに対して「お前がやりたかったことって恋愛だったの?」って気がしなくもない……ということです。二度目ですけど「言の葉の庭」だと、主人公はちゃんと靴作っていて、その上で恋愛に向かってますからね。ところが、今作の主人公には「靴作り」に当たるものがない。


もちろん、ヒロインが自分の生き方(=小学生の弟と二人で生きていく)を世界(=警察)から否定されて、絶望して追い詰められた末に半ば心中的に世界のために犠牲になろうとするところを、主人公が「君はそのままでいいんだよ」「君にはちゃんと価値があるんだよ」と承認してあげるのはとても素晴らしいことなんですが……それでもやっぱり「それが主人公のやりたかったことなの?」「物語としての一貫性がなくない?」って感じてしまうというか。


うーん、そう考えると「言の葉の庭」との対比で考えると、今作は読み解きやすいかもしれませんね。


両方とも「社会に早く出たい主人公」「やたら降る雨」「社会的(世界的)に許されない恋」っていうのが共通してますよね。


ただ「言の葉の庭」と「天気の子」で言うと、


社会に早く出たい → 靴作ってる vs 具体的なことはあまりしていない

やたら降る雨 → 美しく描かれる雨 vs 雨は(どちらかというと)悪役

許されない恋 → お姉さんでありながら保護欲をかき立てられるギャップ萌えヒロイン vs あまりキャラが立ってないヒロイン


ということで「天気の子」のほうはいま一つ……うわ。やばい。俺、いつの間にかすごい悪口書いてる。


ファンに殺されるのが怖いから、このへんにしておこうかな……もう手遅れかな。


で、ぶっちゃけ面白いのかどうか

で、ぶっちゃけ面白いのかどうか、ですが。


結論を言うと


日常パートは微妙。一気に駆け抜ける終盤は個人的には面白いと思ったが、鬱要素があるのでそうでない人もいるかもしれない。


というところでしょうか。


全体として「んん?」っていうところも確かにあるんですが……やっぱ終盤の2人の自由落下シーンと、あと主人公がひたすら走るシーンとかは良かったですねえ。前作でも走るシーンはありましたが、今作では走る場所が……(彼がどこを走るかは劇場で確かめてください(笑))


「なんとなく謎めいていて、繰り返し観たくなる感じ」も前作と同様で……私も「君の名は。」は3回観たんですが「天気の子」ももう1回ぐらい観に行くかもしれない……。


まあでも「ぶっちゃけ面白いのかどうか」で言うと


「どう感じるかは人によると思う=観なきゃわからない」ので、とりあえず観てください! 観るだけの価値はあると思います!


……というのが、私なりの評価、ということになるでしょうか。


 
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