今回は趣向を変えて、「F-16 ファイティングファルコン」というボードゲーム(ウォーゲーム)の紹介です。空戦がテーマのボードゲームという、いつもより一段とマニアックにな内容になっております。
2013年12月26日にいつの間にか発売されていた本作。よく分からんのですが、昔出ていたゲームの復刻版らしいです。
表題にF-16とあることからも分かるように、ゲームのテーマは現代ジェット戦闘機同士の空戦となります。が、F-86などの朝鮮戦争期の機体や、F-4などのベトナム戦争期の機体も収録されています(詳細は後述)。
この手の空戦ボードゲームは、ルールが複雑になりすぎて、まともに遊べなくなってしまうことが多いです。が、本作はその点には気を遣っているようで、かなりプレイしやすいルールとなっています。プレイ時間も公称30分~60分とお手軽で、お値段も2310円と大変財布にお優しい。
公式サイトを見ると、本作は「コマンド:タクティカル・コンバット・シリーズ」なるシリーズの第一弾だそうで、同シリーズはこれからも、ボード・ウォーゲーム入門者向けの作品を出していくそうです
~内容物~
では、早速内容物を確認。
実は本作はボードゲームと言っても実際にはボードは入っておらず、一冊の冊子という形で店頭に並んでいます。言ってみればペーパーゲームか。
チットはこんな感じ。米軍機は青、ソ連軍機は赤で色分け。他に少数の英仏、イスラエル機が参戦。
表紙-裏表紙は一枚の紙になっていて、裏返すとプレイシートになっています。ここで各機の姿勢、高度、残弾数などを管理するわけです。
このほか、わざわざ写真には撮りませんでしたが、ルールブックや、ヘックスが書き込まれたマップ(3枚)も入っています。
Contact confirmed hostile.
では、ゲーム風景をちょっとだけ見てみましょう。
今回、協力してくれたのはT氏。あまり複雑なゲームは好きではないT氏ですが、今回は簡単なルールということで参加してくれることに。ありがとう、T氏。
さて。ルールではシナリオに基づいて機種選択を~なんて書いてありますがめんどくさいので今回は即興シナリオで。
機種選択は私がMiG-23×2、T氏がF-14×2。RH(レーダー誘導式)ミサイルを含めると、少しルールが複雑になりすぎるので、今回はHS(赤外線探知式)ミサイル限定ルールとします。
これだと少しT氏が有利な気がしますが、まあそこはハンデというやつです。こんな風に適当に調整ができるのは、ボードゲームの隠れた美点ですよね。
初期配置はこんな感じ。MiG-23とF-14がすれ違ったところからスタート。
ちなみに、この「F-14 vs MiG-23」という対戦カード、実はシドラ湾事件という事件で現実のものになっているんですね(アメリカ海軍 vs リビア空軍)。
まあその時はF-14の圧勝でしたが、今回はその史実を元にして、こういう筋書きを考えてみました。
――哨戒飛行中のF-14編隊に異常接近するリビア空軍のMiG-23編隊……無線交信に応答はなかったものの、事前情報から、米海軍の指揮官は攻撃を仕掛けてくるとは考えにくいと判断する。しかし、何事もなくすれ違うかに思われたMiG-23は、F-14の後方に回り込もうとする動きを見せた。その時、F-14のパイロットは応戦を決意する。
おお、たった今でっち上げたわりには、ちょっとだけそれっぽくなっている。
ではゲーム開始。ここからはルールを解説しながら進めていきます。
行動順は「高度が低い機から」がこのゲームのルールなのですが、今回は全機同高度からのスタートなので、私の一番機からです。
一番機は急上昇を開始。そのままインメルマンターン(宙返り)で反転する構えです。二番機は順当に右急旋回でF-14の後方に回り込もうとします。
続いてT氏の一番機。緩く上昇。当分様子見か? しかし、二番機は右急旋回で、こちらの二番機に対峙してきます。
このゲームでは、移動時にまず機体の姿勢を決定するのがポイントです。姿勢は水平直進、左右(急)旋回、(急)上昇、(急)降下とありますが、組み合わせて「右急旋回急上昇」とかもあります。
ルールブックでは、各機種ごと・それぞれの姿勢ごとに、そのユニットがどのように移動できるかが決められています。たとえば、F-16の右急旋回急上昇は「2マス前進する間に2回右転針。高度を3上げる」などといった具合です。ルールブックのこのページは、コピーして対戦相手に渡すようにすれば便利。
しかし、この姿勢変更、1ターンで縦か横かのどちらかに、最大2個ぶんしか動かせないのがポイント。たとえば、右急旋回していた機が左旋回に切り返すためには、2ターンを要するのです。
このため、あえて急旋回ではなく通常旋回にとどめておく方が良い場合もあり、このあたりが駆け引きのしどころ。
また、高度差が一定以上あると、ミサイルの射程外と見なされてしまうため、これもポイントですね。攻撃を避けて体勢を立て直したい時は、相手と高度をずらすと良かったり。攻撃する側も、これを想定して機動する必要があります。
あ、ちなみに、このゲームの特徴として「速度の概念がない」というのが挙げられますね。普通、こうしたゲームでは速度も再現するのですが、これはゲームを複雑にする大きな要因でした。
本作ではここを大胆にオミットすることで、ルールの簡易化に大きく貢献していますね。同じ理由で「高度による戦闘機の性能差」もありません。
リアリティは確かに低下するかもしれませんが、まあ「空戦中は常にエンジン全開なんだろう」とか「パイロットが良い感じに調節しているんだろう」とか考えることにしましょう。
Check Six.
ではゲームを続けてみましょう。
日和見的な態度のT氏一番機に、こちらの2番機は隙ありとばかりに大回りに右旋回して、なんと一発で後方占位。相手エンジンの排気熱をとらえ、ミサイルを発射します。
距離は2マス。ミサイルはソ連製ということで、命中判定表を見ると、六面体ダイスを二個振って7未満なら撃墜とのこと。7未満……けっこう微妙な(ちなみに7ちょうどだと損傷判定)。
しかし、十分チャンスあり、と気合いを入れてダイスを振る私。結果は……8! 惜しい!
……その後、私は初心者T氏を大人げなく圧倒し、ミサイル発射の好機を二回も得るのですが、あえなく外れ。
くっそーと思っていたら、うっかりF-14の前を横切ってしまい、その時発射されたミサイルが見事に命中。
時間も経っていたので、そこいらで投了となりました。むむー。途中まで確かに優勢だったんだけどナ。
「ボード・ウォーゲーム入門者向け」の看板に偽りなし。この分野に興味があればぜひぜひ
というわけで、簡単なルールで手軽に空戦ができるボードゲームが再販された、ということでして、私としては大歓迎したいところです。
パソコンでプレイするコンバットフライトシムもいいですが、こんな風に俯瞰しつつ楽しむ空戦もまたいいものです。
確かに「空戦をテーマにしたボード・ウォーゲーム」と、かなり人を選ぶ内容ではあります。しかし、この分野に興味がある人でしたら、最初の一作として十分におすすめできる内容です。
あ、最後になってしまいましたが、収録機体を全部書いておきましょう。
米軍:F-86,F-4,F-105,F-14,F-15,F-16,F-5,A-4
ソ連軍:MiG-15,MiG-19,MiG-21,MiG-23
英軍:HARRIER
仏軍:MIRAGE,MIRAGE F1
イスラエル軍:KFIR-C2/4
となっています。個人的には、ソ連のMiG-29やSu-27がすっぽり抜けているのが残念なところですね。まあでも、そこはボードゲームですから、その気になれば自作できるかもしれません。なんか追加パックが来るとかいう話もありますし。
あー、あと忘れちゃいけないのが、このゲーム、最近のゲームの割にはエラッタ(発売後の修正)が多い気がします。公式サイトに訂正内容が書いてありますので、一度チェックを。