Streetfight_Stralingrad01スターリングラードとは、第二次世界大戦において、ナチスドイツとソ連の激戦地となった都市です。

 

それまで破竹の快進撃を続けていたドイツ軍は、この都市を巡る戦いで一敗地にまみれ、以降は下り坂を転がり落ちるように凋落の一途をたどります。

 

スターリングラードは史上稀にみる大規模で壮絶な市街戦が行われたことでも有名であり、その地獄絵図は幾度となく映画化されてきました。

 

一般にはカッチョイイ狙撃兵の戦いを描いたハリウッド版が有名ですが、今回私が見たのは他ならぬドイツ版。

 

敗者の側から、民族の歴史の汚点である悪夢の戦争を映画化するとは。それだけでなかなか興味深いですね。というわけで、以下はその感想です。

 

 

 

ドイツの過去

まず最初に思ったのが「ドイツ兵が多い!」。

いや、恥ずかしながら、私も(たぶん)多くの人と同じく、第二次大戦の映画はほとんどアメリカ映画しか見たことがなかったので、ドイツ兵は当然いつも敵役だったわけです。

 

ところが、今回見たドイツ版「スターリングラード」はドイツ兵の視点から描かれているので、当たり前ですが画面に出てくるドイツ兵の数が段違いに多い。これだけでもちょっと新鮮。

 

Stahlhelmフリッツヘルメット(ドイツ兵の特徴的なヘルメット)が画面に溢れているのに、銃撃戦にならないなんて!

 

……なんていうくだらない驚きに浸る暇もなく、舞台はスターリングラードへ。

 

主人公らの部隊は、スターリングラードへ到着早々、ロシア兵捕虜の過酷な扱いを目にします。主人公の若手将校がそれをとがめても、聞き入れる者は誰もいません。

 

そして前線へ。建物の一つ一つ、建物の中にある部屋の一つ一つを取り合う戦いは、ただひたすらに悲惨で、プロパガンダで喧伝されるような、華々しく英雄的なイメージとはほど遠い。その上、部隊の人間関係のせいで危険な任務に行かされて戦死する兵士など、軍隊内部の醜い有様についても生々しく描かれます。

 

その後も刻々と戦況は悪化し、到着した時は百人以上いた主人公の部隊も、いつの間にか数十人、ついには生き残りはわずか数人に。

 

負傷者を助けるために勝手に休戦したことをとがめられて、主人公は懲罰部隊に送られ、ろくな装備や訓練を与えられぬまま、地雷処理という危険な任務にかり出されます。

 

その後も、民間人の処刑、ソ連軍の包囲を脱して本国へ飛ぶ輸送機に群がる兵士たちなど、痛ましい描写が次々と……

 

Disfatta最終的に、主人公とその周囲の人物は「全滅」します。しかしこれはなんの誇張でもありません。ソ連軍に包囲されたドイツ軍は30万人、降伏した時でも10万人が生きていたとされますが、降伏後の扱いが過酷だったこともあり、生きて祖国へ帰還できたのはわずか6000人とされます。まさにほぼ全滅といっていいでしょう。

 

 

 

日本人の奮起を期待

このドイツ版「スターリングラード」は1993年公開だそうです。いまからだと二十年前ということになりますね。

 

日本でも、1970年ぐらいまではこういった生々しい戦争映画が多く作られていたのですが、近頃はめっきり見かけなくなりました。見かけたとしても、日本軍の上層部は無能だったが、現場の日本兵たちは優秀で勇敢だったというような描かれかたをすることが多いような気がしますね。

 

また、近年これだけ中国の存在感が高まっているにも関わらず、最近の戦争映画は日米戦の映画ばかりで、日中戦争の映画がほとんど見受けられないのも気になるところです。

 

歴史認識問題が取りざたされる昨今ですが、これが日本の現状では、中国人が日本人の歴史認識を疑いたくなるのも、ちょっと分かるような気がしますね。

 

是非とも日本の映画人には、このドイツ版「スターリングラード」を参考に、日本人が日中戦争についてどういった認識を持っているかを示すような、いい映画を作っていただきたいものです。