N931_hikarinokawa500-thumb-718x500-1823今回は、空戦の流れ第三回として「戦闘と離脱」をお送りします。

 

 

前回までで、空戦の流れのうち、1:発見 2:接近 までを解説しました。今回は3:視界外戦闘 4:視界内戦闘 5:離脱 までを一気に解説しようと思……ったんですが、長くなってしまったので4:視界内戦闘は分割してまた今度にしてしまいました……すいません。


(なお、以下の文章では1マイル(=1海里)=約1.9km、1ノット=時速1マイル としています)

 

3:視界外戦闘

幸運にも、視界外(敵機を肉眼で捉えるには遠すぎるけれども、レーダー上では捉えられる距離)で目標が敵だと識別できたとして、攻撃すると判断したならば、理想的なのは奇襲、それも一撃で敵を仕留めるような奇襲です。前回解説した「2:接近」もこのことを念頭に置きながら実行されるのは解説済みですね。

 

この段階で使用されるのは、レーダー誘導式のミサイルになります。近年ではアクティブレーダー誘導式が多いでしょう。

 

ゲームと違って、現実ではミサイルは無限に飛ぶわけではありません。ミサイルのロケットモーターは短時間で燃え尽きて、後は惰性で飛行します。実は、空対空ミサイルというのは射程が決まっているわけでもありません。これはどういうことかというと、航空機はミサイルが発射されてから着弾するまでの間も高速で移動するので、ミサイルの有効射程は目標の運動状態により変化する、ということです。

 

ミサイルを発射するF-22たとえば、正面攻撃の場合、距離24マイルから敵機がまっすぐこちらに400ノットで近づいて来ていて、ミサイルの平均速度が(非常におおざっぱに)2000ノットだとしましょう。この場合、ミサイルと敵機の接近速度は2400ノットになりますので、ミサイルはは36秒飛ぶことができれば目標に到達できます。

 


一方、逆に敵機が同じ条件で、ただし今度はまっすぐこちらから逃げていくと考えてみましょう。この場合、ミサイルと敵機の接近速度は1600ノットまで減少し、ミサイルの必要飛翔時間は50秒を超えてしまいます。


このことから、ミサイルの射程は正面攻撃の時がもっとも長く、後方攻撃の時は最も短くなることが分かります。

 

しかし、正面攻撃は反撃を受けるリスクが大きくなります。間を取って側面攻撃というのもあまり上手くない話です。この場合、敵機が自機の前を横切っている時にミサイルを発射することになりますが、ミサイルは常に針路を修正しなければなりませんので、その分エネルギーを使い、射程は短くなり、命中率は下がります。

 

このほかに実戦では、航空機が等速直線運動をするわけではないということも考慮する必要があります。たとえ正面攻撃であっても、最大射程でミサイルを発射した瞬間に相手がそれを察知して反転してしまえば、ミサイルは絶対に当たりません。というか、本当に最大射程で撃った場合は、ミサイルの着弾直前に反転されたとしても、当たらない可能性があるでしょう。

 

このことから正面攻撃の場合は敵機をぎりぎりまで引きつける必要があります。しかし、相手も同じことを考えていると思われますので、これではチキンレースです。高価な航空機とパイロットを使って戦われる現代航空戦では、敵一機撃墜につき味方一機被撃墜では勝利とは全く言えないので、できればこうした事態に陥るのは避けたい。 だから不意打ちが最も望ましいとされるのです。

 

ミサイルの射程延伸以外に、戦術レベルでこのチキンレースを解消する方法としては、まず高度を高く、速度を速くしてミサイルの運動エネルギーを高め、実質射程を少しでも伸ばすこと。他には、一発のミサイルは最大射程ぎりぎりで撃ち、相手がそれを回避するために体勢を崩したところを、追撃して仕留めるという合わせ技などが考えられます。一対一で空戦する機会というのは現代ではあまりないと思うので、僚機との連携もいいアイデアでしょう。

 

4:視界内戦闘

いわゆるドッグファイト。肉眼(または暗視装置・赤外線探知システムなど)による目視視界内に敵機を捉えて行われる戦闘です。
ここでは、主に赤外線誘導式の短距離ミサイルと、機関砲が使用されます。どちらの場合も、一般的に後方から攻撃するのが有利です。なので、この段階に入った戦闘機同士は、相手の後方に占位しようとして激しい機動を繰り返します。詳細な解説は来月号にて行う予定です。

 

5:離脱

理想的な離脱は敵機を全機撃墜することですが、なかなかそうはいきません。戦闘機は燃料が残っている間しか飛べませんので、頃合いを見て離脱することになります。


次善の策としては、視界外からミサイル攻撃を浴びせて、そのまま針路を変えて戦闘空域を離れることかもしれませんが、視界内戦闘にまで入ってしまった場合はそう簡単ではなくなります。

 

急旋回するF/A-18離脱は最低でも状況が互角の時に行うべきです。基本的には劣勢の時に行うべきではありません(燃料が残っていなければ選択の余地はありませんが)。いずれにせよタイミングが全てでしょう。

 

 

先制攻撃を受けて無傷で離脱できれば勝ったと言えますし、先制攻撃をしかけたはいいが相手の防御機動によって中立まで持って行かれた場合も、無理をせずに離脱して生き残り、楽な獲物を探した方が、戦争全体にとってはいいかもしれません。

 

地味ではありますが、離脱は空戦における外せない要素です。

 

今度はたぶん守れそうな次回予告

いかがだったでしょうか。視界内戦闘の基本が来月に持ち越されてしまって、書いている人としても残念なのですが……そこはまた、新年のお楽しみということで!

 

ではまた。

 

See You Next FLIGHT!