編隊を組むスピットファイアこんにちは。言うまでもないことですが、今月も締切がピンチな神無悠樹です。

今回は空戦の五段階のうち、最初の二つ、発見と接近をお送りします。

 


 

さて、前回のおさらいです。空戦には五段階あるという話でした。

 

1:発見
2:接近
3:視界外攻撃
4:視界内戦闘
5:離脱

 

の五段階です。今回は予告どおり、このうちの1:発見 と 2:接近 について詳説します。

 

1:発見

現実の空戦は、ゲームのように始まりと終わりがはっきりとはしていません。「戦闘機は、三分の一の燃料で目標地点まで飛行し、三分の一の燃料で戦闘を行い、三分の一の燃料で基地まで帰ってくる」という言葉がありますが、ここからはっきりと読み取れるように、戦闘機が飛んでいる時間の三分の二以上(理論的には。現実はもっと高割合)はただ飛んでいるだけなのです。

 

もちろん、戦争ということになれば戦闘機の目標地点以外の空域も多かれ少なかれ危険です。いつ不意打ちを受けてもおかしくありません。地対空ミサイルということも考えられます。ただ飛んでいるだけといっても、それは気の抜けない飛行なのです。

 

このため、相手に発見されるより先に相手を発見することは、死活的に重要になります。どちらかが相手を発見した瞬間から空戦は始まります。この時、まだ相手を発見できていない側は、戦いが始まったことを知らされないまま戦っていることになります。文字通り、これでは戦になりません。

 

ところが、戦闘機のレーダーというのは、前しか見えない上に、戦闘機に積むために小型化されているので必ずしも高性能とは言えません(少なくとも同世代の、より大型のレーダーと比べれば)。


そこで、AWACSや地上レーダーの支援が重要になります。AWACS搭載のレーダーや、地上のレーダーサイトは普通、全周囲を長距離まで見通すことができます。これらの部隊から支援を受けて戦えば、戦闘機のパイロットは万全の状態で任務を遂行できます。もっと言えば、支援部隊の情報網が十分なら、戦闘機はレーダーをオフにしたまま飛行できます。理論的には、相手がこちらが発したレーダー波を逆探知できる距離は、こちらがレーダーによって相手を探知できる距離の二倍ですから、そのレーダーをオフにできればとても有利になります。同じ理由から、無線通信も可能な限り控えるべきです。

 

また、パイロットは目視で機の外を警戒しなければなりません。レーダーの目をかいくぐる方法は皆無ではないので、今でもなお、目視での警戒は重要です。

 

戦闘機パイロットに求められる資質の一つに「注意力を分散させる能力」というのがあります。これは、戦闘機パイロットは機外だけを見るのも、機内の計器だけを見るのもダメで、機内と機外を交互に、理想的には同時に見ることが求められるということです。

 

F-16のコクピット逆に一つの計器をじっと見ていたり、機外ばかり見ていて計器を全く見ないようなのは「一点集中」と呼ばれ非常に嫌われます。

 

*画像はF-16のコクピット。とても複雑ですが、最新の戦闘機ではタッチパネルの採用でもう少し分かりやすくなっているのだそうです。

 


 

識別 の重要性

前回の記事でも軽く触れましたが、現実の空戦ではゲームと違って、敵味方の識別が非常に重要になります。レーダーに機影が映っただけでは、それが敵なのか味方なのかは判然としません。遙か遠くに見える黒い機影、でも同じです。


IFFと呼ばれる敵味方識別装置も存在しますが、これは一般に思われているほど当てにはなりません。IFFの仕組みは、こちらから電波で暗号質問を送ると、聞かれた側はあらかじめ用意していた応答を返す、というものです。つまり「山」と呼びかければ「川」と答えたら味方、という、忍たま乱太郎で見たような原始的な暗号と一緒です。


確かに、正しい答えを返したら確実に味方ですが、答えが返ってこなかったら、敵かもしれませんし、IFFの故障かもしれませんし、もしかしたら民間機ということも考えられます。IFFに応答を返さなかったからすぐ攻撃というのは無茶な話です。また、いまひとつうろ覚えですが、ベトナム戦争中の米軍が北ベトナムの質問波を解読し、敵機の探知に使ったという話もあります。そういう恐れがある時はIFFの電源を切るしかありません。

以上見てきたように、戦闘機単独での敵味方識別能力は、一般に思われてるよりもずっとひ弱です。


この点もまた、全体の状況を俯瞰して見ているAWACSや地上レーダーの支援を受けられれば、パイロットの負担は大幅に軽減されるでしょう。ただ、AWACSの攻撃命令を疑問に思ったパイロットが、不明機に接近してみたところ民間機だったという例や、実際に民間機を撃墜してしまった例もあるので、万能ではありません。

 

E3セントリーまた、冷戦炎上に匹敵するような大規模な空戦が発生したら、AWACSの処理能力を超えてしまう可能性もあります。ではどうするのかというと……一番確実なのは目で見て直接確認することですが、それ以上は割とどうしようもありません。戦争なんてそんなものです。

 

*画像は代表的なAWACS「E-3 セントリー」です。

 

 

2:接近

敵か味方か識別できてから次の行動に移るのがもちろん理想ですけれども、現実にはなかなかそうはいかず、敵か味方かよく分からないままで決断を強いられることもままあります。また、どちらかに決めつけるのも危険なことがあります。

 

どうも敵であるらしいという場合、回避するか攻撃するか決定します。敵機の機種や、位置、運動状態、彼我の装備、受けられる支援、地対空火器の配置、こちらの任務、残燃料などなどを考えて総合的に判断することになります。そして、攻撃すると決めたなら、有利な位置につかなければなりません。理想的には、AWACSや地上レーダーからの誘導を受けるべきでしょう。状況が許せば、急加速して、相手に対応の暇を与えずに攻撃位置を占めることも必要です。

 

えっ。もう終わり?

と、今回はこんなところで終わりたいと思います。発見と比べて接近があっさりになってしまいましたが、いや、それだけ発見が大事なんだよ、ってことでご勘弁を。

 

次回はいよいよ「空戦の流れ3 戦闘と離脱」です。3:視界外攻撃 4:視界内戦闘 5:離脱 を一挙に解説します。お楽しみに!

 

See You Next FLIGHT!