640px-F-15_firing_AIM-7Ms今日は前回に引き続き、航空戦で用いられる兵器のうち、空対空戦闘で用いられる兵器を詳しく見ていきたいと思います。

 


 

そもそも戦闘機の任務とは

突然ですが、相手の偵察機や爆撃機は邪魔です。誰だって爆撃されたくはないですし、偵察機に偵察されるのも嫌です。

そこで、偵察機や爆撃機を撃ち落とそうという話になります。しかし、前回の記事でも触れた通り、高射砲や地対空ミサイルなどで地上から飛行機を撃ち落とすのは難しいです。

 

ここで戦闘機の出番ということになります。戦闘機は、高い機動力を利用して偵察機や爆撃機に接近し、必要十分な武装で効率よく撃ち落とすことが求められますし、それができます。
そうなると、相手の戦闘機も邪魔です。撃ち落としたくなります。また、こちらの爆撃機や偵察機、その他の軍用機が敵の戦闘機にやられないように、護衛しなければなりません。これも戦闘機の仕事です。


以上が、戦闘機が必要になる背景と、戦闘機の任務の簡単な説明です。

 

 

空対空戦闘、つまり飛行機同士の(もちろん、戦闘機同士の)戦いで用いられる兵器は、大きく分けて

1:機銃 2:ミサイル

の二つです(なお、記述の都合上、機関砲は機銃に含めるものとします)。このほかにロケットが用いられる場合も過去にはありましたが、例外的ですので補足程度にとどめます。順番に見ていきましょう。

 

1:機銃

MiG-17_shot_down_by_F-105D_3_June_1967飛行機が戦争に使われるようになったのは二〇世紀初めのことですが、それから1960年頃にミサイルが実用化されるまで、機銃は空対空兵器の王様でした。

 

まあ、大砲では飛行機に搭載して相手の飛行機に命中させるには大きすぎますし、ピストルでは相手の飛行機を撃ち落とすには小さすぎますから、機関銃になったのは必然なのですが。

 

*画像は機銃射撃によって撃ち落とされるMiG-17戦闘機

 

前回の記事でも軽く触れましたが、機銃を搭載する方式には二つあります。固定式と旋回式です。固定式はその名の通り機銃の向きを固定する物ですが、旋回式は乗組員の操作によって機銃を旋回させることができます。

 

一見、旋回式の方が全てにおいて優れているように見えるのですが、実際に使ってみると、戦闘機の場合は機銃を前方に向けて固定する方式が優れていることが分かりました。旋回式は重量が重くなりますし、激しく動き回る戦闘機から相手の飛行機に命中させるのは難しかったからです。

 

このコラムの第一回でも解説した通り、飛行機は前に進まなければ飛べません。つまり飛行機は前に進み続けなければならないのです。このことは、すぐには後ろを振り返れないことを意味します。つまり、戦闘機は後ろからの攻撃に弱く、逆に戦闘機は前方にいる相手への攻撃が得意なのです。また、少し後に詳述しますが、空対空射撃では相手の未来位置を予測して撃たなければなりません。ところが、相手の真後ろから撃てば、見越し角が少なくて済み、より狙いやすくなります。

 

だったら、機銃を前方固定式で搭載して、敵を後ろから撃つのが最も効率的だという話になります。実際、機銃による戦闘は基本的にそのように行われ、戦闘機動のほとんど全てが、相手の戦闘機の後ろをとるためのものです。

 

*ただし、爆撃機が自衛用に装備する機銃の場合は、旋回式が用いられます。

 

機銃の性能は、信頼性(故障の少なさ)を別にすれば、命中率と威力ということになりますが、この二つはお互いに関連しあっています。というのも、たくさん命中させることができれば、一発あたりの威力が少なくてもそれを補えますし、一発あたりの威力を大きくしようと思うと、技術的な理由から多数の弾頭を命中させるのが難しくなるのです。

 

命中率と威力を決定するのは、弾道特性(弾が狙ったところに真っ直ぐ飛ぶかどうか)、単位時間あたりの発射速度(連射速度)、初速、弾頭性能など(また、機銃の性能とは別ですが、一機の戦闘機に機銃を何丁積むかも重要)ですが、これら全てはあちらを立てればこちらが立たずという関係にあるので、どれを重視して機銃を選ぶかは戦闘機の仮想敵によって決めます。

 

Bomber_stream第二次世界大戦で日本やドイツがアメリカの爆撃機による空襲を受けたことはご存知ですね。

*画像は米軍爆撃機の大群。

 

日本やドイツにとって一番恐ろしいのはアメリカの爆撃機でした。爆撃機というのは相手の攻撃を避けられない分、少しぐらい相手の攻撃が当たっても撃ち落とされないように頑丈に作ってあるので、日本やドイツの戦闘機は一発当たりの威力を重視して機銃を選びました。つまり、発射速度や初速が低めだが一発当たりの威力が大きい大口径の機銃を少数積んだのです。一撃必殺を狙ったわけですね。

 

一方でアメリカは空襲を受けることはなかったので、アメリカの戦闘機の主な敵はアメリカの爆撃機を攻撃しようとする日独の戦闘機ということになります。戦闘機は爆撃機ほど頑丈ではありませんがとてもすばしっこいので、アメリカの戦闘機は命中率を重視して機銃を選びました。つまり、一発当たりの威力は小さいが、初速が速く、発射速度が早い小口径の機銃をたくさん積んだのです。ちょっとでも当たれば撃墜できるということで、速い弾をたくさんばらまくことにしたわけですね。

 

ただ、現代では技術の進歩により、戦闘機にも爆撃機にも対応可能な高性能な機銃(機関砲)を一門装備する方式が普通になっています。

 

 

ちなみに、ドイツ人は三十ミリの大口径機関砲を積んでもまだ威力不足を感じたらしく、大戦末期に、一発でも当たれば相手を撃墜できるロケット弾を相手の爆撃機の周囲にばらまくという戦術を試して成功していますが、現代ではミサイルが登場しているのでそういうことはなくなっています。

 

 

また、空対空機銃射撃では照準器の性能も重要です。第二次世界大戦当時には既に、パイロットの頭の位置が多少ずれても弾が飛んでいく点を正しく示し続けてくれる照準器が存在していました。

また、銃弾は音速の数倍で飛びますが、第二次世界大戦期の戦闘機も音速の半分ぐらいのスピードで飛ぶ能力はあります。相手が目の前を横切るように飛んでいる場合など、相手との位置関係によっては、相手が今いるところを狙って撃っても、弾は当たりません。

 

大戦末期になると、相手の未来位置を予測して照準を調整してくれる照準器が登場したり、戦後になるとレーダーを使用してさらに正確に照準を示してくれるようになったりしています。

 

 

ミサイルが実用化されたことにより、機銃は空対空兵器の主力の座から去りましたが、ベトナム戦争の経験で機銃は必要であると分かったため、現代の戦闘機は今も機銃を標準装備しています。

ミサイルの性能がベトナム戦争当時と比べて向上していることから、次世代機ではいよいよ機銃を廃止しようという動きがあるようですが、さて、吉と出るやら凶と出るやら。

 

 

2:ミサイル

462px-AIM-120_first_killミサイルには色々ありますが、ここでは空対空ミサイルに関してのみ述べます。ただ、地対空ミサイルなどと共通する事項も多く含まれます。

*画像はミサイルによって訓練用の標的機が撃墜される様子

 


ミサイルが初めて登場したのは台湾海峡における中台の軍事衝突だったそうですが、大々的に使われたのはベトナム戦争からだとしていいでしょう。


 

空対空ミサイルには大きく分けて赤外線誘導式とレーダー誘導式があり、さらにレーダー誘導式はセミアクティブ方式とアクティブ方式に分かれます。順番に見ていきましょう。

 

赤外線とは、簡単に言ってしまえば全ての熱を出すものが放出している目に見えない光です。赤外線誘導式ミサイルは、この赤外線の発信源(熱源)を目指して飛んでいきます。要は相手の熱に反応して追尾するミサイルと考えてしまって差し支えありません。


ジェット機はエンジンから大量の熱を放出しているので、このミサイルはジェット機のエンジンの熱を捉えて追尾するわけです。

その特性上、このミサイルが最も効果を発揮するのは相手の後方から発射された場合です。この場合、ミサイルは相手の熱をはっきりと捉えることができ、追尾しやすくなります。逆に正面から撃つと追尾しきれない場合が多くなります(実際、初期の赤外線誘導式ミサイルは相手の尾部以外を追尾できません)。現代では飛行機を正面からでも追尾できるものが登場していますが、それでもやはり後方から撃つ方が望ましく、射程も長くなります。


また、後述するレーダー誘導式ミサイルが電波を使うのに対し、赤外線は電波ほど遠くまで届かないので、有効射程が短くなります。

 

それでも、赤外線誘導式は安く簡単に作れるなどの理由から、現代でも広く使われています。

赤外線誘導ミサイルは、その特性上、レーダー誘導式に比べて相手との距離が近い場合で用いられます。敵の戦闘機が肉眼で見えるぐらいの距離です。そのため、赤外線誘導ミサイルは、接近戦を繰り広げている発射母機がどんな姿勢でも発射できる能力や、激しく機動する敵機を追尾するのに十分な機動力を備えています。

 

ちなみに、パイロットが赤外線誘導式ミサイルを選択すると、特徴的な音が聞こえてきます。この音は大きくなったり小さくなったりするのですが、これはミサイルが捉えている熱源の大きさを示しています。この音が一際大きく甲高く響き始めた時にミサイルを発射すると、狙い通りに飛んでいくわけです。

 

映画やゲームなどでは、戦闘機が敵をロックオンすると「ピー」などと音がしますが、あれはこの赤外線誘導ミサイルの音を模しているものと思われます(もっとも、映画やゲームなどの「ピー」と実際の赤外線誘導ミサイルの音はだいぶ違うようですが)。

 

 

続いて、レーダー誘導式ミサイルについてです。


レーダーはそもそも、電波を空間に放射して、遠くの物体に当たって跳ね返ってきた電波を分析することにより、遠くの物体の情報を得るものです。

 

このレーダーを応用して、レーダーの電波が跳ね返っている場所(物体=敵機)めがけて突っ込んでいくようにしたのが、レーダー誘導式ミサイルです。

 

さて、そうなると、照準用のレーダーを誰が敵機に照射するのかが問題になります。常識的に考えれば発射母機が照射すればいいのですが、ちょっと待ってください。ミサイル自身にレーダーを搭載して、照射させるのも面白そうじゃありませんか?

 

というわけで、ミサイルの母機である戦闘機が敵機にレーダーを照射し、その反射波を頼りにミサイルが突っ込んでいくのが、セミアクティブ方式。ミサイルが自分で搭載しているレーダーで敵機を捉えて飛んでいくのがアクティブ方式です。

 

どちらにも一長一短があり、どちらを選択するかは、その戦闘機の任務によって変わるのですが、最近ではアクティブ方式の方がいいのではないかという意見が多いようです。というのも、セミアクティブ方式では発射母機が相手にレーダーを照射し続けなければならないのに対して、アクティブ方式ならミサイルを発射した後、母機は次の行動……他の敵機の攻撃や、敵機からの攻撃の回避……に移れるからです。

 

もっとも、アクティブ方式のミサイルであっても、ミサイルのレーダー性能には限界があるので、遠距離で発射した場合は、途中まで母機が誘導してやることが多いようです。

 

もう一つ上げられる大きな違いとして、セミアクティブ方式の場合はミサイルを発射した瞬間に相手が「ミサイル攻撃を受けている」と察知できるのに対し、アクティブ方式の場合は相手が同じ事を悟るのはミサイル搭載レーダーが作動した後だということです。詳しい説明は省きますが、相手から照射されるレーダー波を分析することにより、相手が攻撃意図を持っているかどうか分かるのです。

 

どちらの方式にしろ、レーダー誘導式ミサイルは主に遠距離(敵機が肉眼で見えない距離)での交戦に用いられることが多いです。また、赤外線誘導ミサイルの性能が十分でない時代は、正面から相手を撃てるミサイルとしても重宝されました。

また、詳しい説明はまたの機会にしますが、ミサイルでの交戦時には、敵味方の識別がとても重要になります。

 

信用ならない次回予告

つい熱くなって長々と解説してしまいましたが、いかがだったでしょうか。なかなか空戦戦術の説明に入れませんが、兵器についての知識がないと戦術は分からないですからね……。

 

次回は……何にしましょうか。そろそろここらで電子戦に関する説明をした方がいい気がしますが。

 

それでは。

See You Next FLIHGT!