F-16の兵器今回は何を取り上げるか悩みましたが、まずは空戦入門第一弾として、空戦で用いられる兵器の概要について一通り見ておこうと思いました。

*画像はWikipedia「F-16」より。2013/01/12閲覧。

 

1:機関砲(機銃)

日本語では、旧日本軍の規則にならって、一定以上の大きさの口径を持つ銃砲を砲、それより小さい銃砲を銃と呼びます。

 

M61_Vulcanそこで、軍用飛行機に搭載される銃砲についても機関銃(機銃)と機関砲があるわけですが、現代ではほぼ全て機関砲であると言ってしまっていいと思います。

*画像はWikipedia「M61 バルカン」より。2013/01/11閲覧

 


 

現代の戦闘機も、ほとんどが機関砲を装備しています。これは、ベトナム戦争当時、米軍がミサイルの性能を過信しすぎて主力戦闘機から機関砲を外し、そのせいで苦戦したことの教訓に倣ったものです。当時のミサイルはまともに作動するか怪しいシロモノで、ミサイルを撃ち尽くした戦闘機が「機関砲があれば……」という状況に追い込まれることがたびたびあったようです。

 

現代ではミサイルの信頼性はだいぶ上がったようですが、それでもゲームのように百発撃てば百発がまともに飛んでいくわけではありません。

 

米軍や欧州の次世代機では今度こそ機関砲を外そうという動きがあるようですが、さて、吉と出るやら凶と出るやら。

 

なお、機関砲は戦闘機だけでなく、爆撃機も自衛用に装備していることがあります。
多くの場合、戦闘機の機関砲は前方固定式で機体全体を振り回して照準する方式(経験上、この方が命中率が高いのです)であり、爆撃機の場合はそうもいかないので旋回式です。

 

2:ミサイル

現代の航空戦といえばなんと言ってもミサイルですね。
飛行機から飛行機に向かって撃たれるミサイルは空対空ミサイル、地上(軍艦)から飛行機に向かって撃たれるミサイルは地対空(艦対空)ミサイル、飛行機から地上(艦船)に向かって撃たれるミサイルは空対地(空対艦)ミサイルなどと区別されます。

 

750px-AIM-120_AMRAAMそれぞれ全く違ったミサイルなのですが、それを説明するのはまたの機会ということにして、今回は巷に流布しているミサイル神話についてコメントさせてもらいます。

*画像はWikipedia「AIM-120 AMRAAM」より。2013/01/11閲覧。

 


 

一般の読者さんと話していると「でも、戦闘機なんてミサイルで撃ち落とせちゃうんだから、(パイロットなんて)いらないんじゃないの?」という疑問を口にされることがあります。

 

もっともなことです。現に、現用の中距離空対空ミサイルのカタログスペックを見ていると、最大射程100㎞などと書いてあったりして、これだけ見れば、戦闘機パイロットは飛んで、ミサイルを撃って、帰ってくるだけの楽な仕事だと思われるでしょう。

 

もちろん、実際は違います。たとえば、敵対する戦闘機同士が向かい合って接近していく場合を考えましょう。

 

戦闘機の時速はおよそ800㎞。向かい合わせだと接近速度は秒速約0.45㎞です。いま90㎞の距離を挟んで向かい合っているとすると、すれ違うまで約三分半ほどです。


戦闘機のレーダーに戦闘機サイズの飛行物体が映るのは大体90㎞ぐらいからだと思われているので、敵機をレーダーに捉えてからすれ違うまで三分半ということになります。

 

では、最大射程100㎞のミサイルを、敵機がレーダーに映った瞬間(約90㎞の距離で)撃っても当たるでしょうか?
答えはノーです。なぜなら、最大射程100㎞とは理想的な条件下での話、たとえば敵機がミサイルを撃たれても構わずにまっすぐ突っ込んできた場合の話で、敵機が反転して逃げてしまえばこの条件は簡単に崩れます。

 

よって、ミサイルを当てて敵機を撃墜するには、ぎりぎりの距離まで接近しなければなりません。もちろん、それだけ相手から撃たれる可能性も高くなりますが、仕方ありません。

 

最大射程100㎞のミサイルで敵の戦闘機のような小型で高速の目標を確実に撃墜したいと思ったら、向かい合わせであっても40㎞から50㎞まで近づくのが理想でしょう。


90㎞の距離でレーダーに映ってから50㎞まで近づくのにかかる時間は、およそ百秒。この間に、敵味方識別、目標の選定など、発射の前に必要な手続きを全て済ませなければなりません。

 

もちろん、敵も戦闘機なら、持ち前の高速・高機動を生かして逃げ回り、隙を見せれば攻撃してきます。そんな敵戦闘機に対抗するには、こちらも高速・高機動の戦闘機で勝負するしかありません。また、敵が一方向から来るとは限りません。右と左で同時に敵が現れたらどうするか、といった判断もパイロットには求められます。

 

どうでしょうか? 空対空戦闘を行う上で、小型高速の戦闘機が不可欠であること、その戦闘機に乗るパイロットは高度な戦闘訓練を受けていなければならないこと、ご理解いただけたでしょうか?

 

3:爆弾

飛行機が地上に落とす爆弾ですね。


800px-Mark82Bomb昔から変わらない爆弾もありますが、最近ではスマート爆弾というものが出てきたのをご存知でしょうか?

*画像は無誘導爆弾

 


 


800px-Paveway_ILA06これは爆弾に誘導装置をつけて狙った目標を確実に爆撃しようというものです。旧来型の無誘導爆弾は、いくら照準器を精密にしても精度に限界があるので、こうしたものが作られました。

*画像はレーザー誘導爆弾。先っちょになんかついてる、って感じです

 



現在主に使われている誘導方式はGPS誘導とレーダー誘導の二つですが、詳細な解説はまたの機会にしようと思います。

 

4:ロケット

ミサイルとロケットは何が違うかですが、ずばり、ミサイルは誘導装置がついたロケットのことを言うのです。つまりロケットとはミサイルから誘導装置を外したものなのです。以上。


launching_rocketsロケットは空から地上を攻撃したりするのに今でも使われているほか、ミサイルの信頼性が低かった頃は、見当をつけてまとめ撃ちという形で飛行機同士の戦闘を想定した実戦配備もされたようですが、あまり使われず、ミサイルの進歩と共に消えていきました。

 


 

5:対空砲

800px-Gepard_1a2_overview最後になってしまいましたが、対空砲について紹介しておこうと思います。なお、対空砲は高射砲と呼ばれることもあります。
対空砲とは、地上から飛行機を撃ち落とすために作られた砲のことです。

*画像はWikipedia「Self-propelled anti-aircraft weapon」より。2013/01/11閲覧。

 

地上戦用の機銃や自動小銃なども、万が一飛行機に当たればパイロットをびびらせる効果は十分に期待できますが、対人用の火器では撃墜は望めませんし、機関砲であってもまず当たりません。

 

やはり飛行機を攻撃するには専用の対空砲を用いるのがベストです。

対空砲の仕組みは簡単で、レーダーで敵機の位置を把握し、未来位置を予測して撃ち、弾頭は敵機の近くで爆発し、敵機に破片を浴びせるというものです。当たればかなりのダメージを見込めます。敵機が低空を低速で飛行していれば当たりやすいです。

 

おっと、ここでも読者の声が聞こえてくるようです。「でも、地対空ミサイルでいいんじゃない?」とのこと。なるほど。しかしですね、地対空ミサイルが大々的に使われるようになったベトナム以降の空戦を見ていても、依然としてけっこうな割合の飛行機が対空砲によって撃墜されているのです。

 

地対空ミサイルにも同じ事が言えるのですが、現代の場合、こうした地対空装備を避ける一番の方法は、高高度を飛行することです。対空砲は射程外に出てしまえば怖くはありませんし、地対空ミサイルの射程内であっても、ミサイルが高高度に到達するまでにはミサイルの勢いは削がれてしまい、回避するのも比較的簡単になります。

なお一昔前は対空砲火を避けるには低空を高速で通過するのがよい(主に地上の敵に見られる時間が短くなるから)とされていましたが、地対空火器の進歩によりそれは難しくなりました。

 

そこで偉い人は考えました。まず、高高度を飛ぶ敵機に対し地対空ミサイルを発射します。ミサイルの性能は「敵機が避けなければ命中するが、避ければ外れる」程度のものです。本当はここで命中させたいですが、それはなかなか難しいですね。

当然、敵機は回避運動を行い、ミサイルは外れます。しかし、それによって敵機は高度を失い、中高度に降りてきます。そこにまたミサイルを発射します。それもまた敵機は避けるでしょうが、それによりまた高度を失い、今度は低空に降りてきます。そこを短距離対空ミサイルや、対空砲の弾幕で仕留めるのです。

 

「って、それ、相当入念に準備しなきゃできないんじゃね?」と思われるでしょう。これはその通りです。所詮、今の技術では、地上に固定された防空システムは点目標を守ることしかできません。だから航空戦力の重要性が今日でも変わっていないわけです。

 

 

当てにならない次回予告

いかがだったでしょうか。空戦で用いられる兵器を早足で見て来ました。

 

次回は……何にしましょうかね。ミサイルについてもうちょっと詳しい解説をやるかもしれません。
それでは。

 

See You Next FLIGHT!