全部戦闘機ですこの解説企画もこれで六回目(サイト移転時に第3回と第4回を合併したので)。無事、半年続きました。誰が驚いているかって、私が驚いてますよ、ええ。いや、そこでそんなしらけないで、これからもどうぞよろしくお願いします。

 

さて、〇〇機、というと「戦闘機」やら「攻撃機」やら色々ありますが、皆さん、どれがどんな飛行機だか分かりますか? 実はこの画像の飛行機、全部「戦闘機」なんですよ。

 

 

今回は、○○機って何? というお話をします。実はこの話、無料メルマガのサンプル版で一部掲載したはずなのですが、そのサンプル版がどこを探しても見当たらずに焦りました。なんとか見つけてきましたが。危ないところだった。

というわけで、以下、最初の方はサンプル版で既にご覧になった方がいらっしゃるかもしれませんが、後半に追加部分が足してありますので、飛ばしてお読みください。

 

(*文中、「軍用機」という言葉を使っていますが、ここでは軍用ヘリのことは考えないことにします。また、「対地戦」という言葉も頻出しますが、これは対艦戦も含むものとします)

 

前置きが長いよ

○○機、といえば、まあ日頃から私が連呼しているので、「戦闘機」が真っ先に思い浮かぶ人が多いでしょうか。

 

でも、○○機って色々ありますよね。一般的な「旅客機」とか世にも恐ろしい「爆撃機」とか、空母に乗ってる「艦載機」なんてのもあります。ちょっと詳しい人だと「攻撃機」「輸送機」「練習機」さらには「早期警戒管制機」なんて長いのまであります。

 

これらの○○の中に入る言葉は、もちろん、その飛行機の主な仕事を表しているわけです。旅客機ならお客さんを運ぶのが仕事、輸送機なら輸送が仕事、ですね。

 

さて、この業界に詳しくない方の中には、最前線に出て戦う飛行機はみんな「戦闘機」だとお思いの方も少なくないかとは思いますが、実はこれ、ちょっと違うんです。実は「戦闘機」の仕事は「敵性航空機と交戦し、これを撃墜する」ことなのです。

 

つまり、敵の飛行機と戦うから「戦闘機」なのであって、敵の陸軍をばばばばばーっと爆撃するのは、本来は戦闘機の仕事ではないのです。

 

もっとも、最近は戦闘機の性能向上が著しく「こんな高性能な飛行機に対空戦ばかりやらせるのはもったいないから、対地戦もやらせてみよう」ということになっていることも多いので、一概には言えません。

 

現に、米空軍のF-16や米海軍のF/A-18はそんな戦闘機です。一方、米空軍や航空自衛隊などが使っているF-15C戦闘機などは、未だに対地戦は苦手、というかあまり考えられていません(改造型のF-15Eは長距離侵攻しての対地戦のために作られましたが……)。

 

F-15戦闘機

画像は米空軍のF-15です。本来戦闘機として設計された本機が、後に優秀な侵攻攻撃機に改設計されたのは、本機の持つ基本性能の優秀さからでしょう。

 

 

また、航空自衛隊のF-2は名称上は戦闘機ですが、最初から対地戦(F-2の場合、特に対艦戦)を非常に強く意識して作られました。

 

(*ここまでがサンプル版の内容です)

 

 

もう全部戦闘機でいいじゃん

このように、最近の時代の流れでは「もう全部戦闘機でいいじゃん」と言いたくなるのも無理はありません……が、対空戦がほとんどできない軍用機は明らかに戦闘機ではなく、そういった対地戦専用の軍用機もまだまだ存在するので、ちょろっとご紹介します。

 

地上を攻撃するためだけに作られた軍用機は、皆さんご存知「爆撃機」です。ただ、米軍だけは「攻撃機」という名称の機体が同時に存在します。英語では"Attacker"と"Bomber"です。何が違うのでしょうか。確認のために一応Wikipediaを覗いたところ「歴史的に見れば両者の違いに特に意味はない(2012年5月30日、「爆撃機」を閲覧)」と書かれていて「ええっ」と思いましたが、一応、私なりに説明を試みます。

 

実は、軍用機による対地攻撃にはいくつかの種類があります。線引きが微妙な例もありますが、まず、敵の陸軍と戦っている味方の陸軍を対地攻撃で支援するのが「近接航空支援」。後方から前線へ向かう敵の陸上部隊や物資を攻撃する「航空阻止」。工場や都市を爆撃することにより敵国の継戦能力を攻撃する「戦略爆撃」(日本が経験した、いわゆる空襲がこれです)。特に一般化した名称はついていませんが、前線後方の、敵基地など重要軍事目標を攻撃する作戦。最後のやつは戦略爆撃に含めてしまってもいい気がしますが、仮に「侵入攻撃」とでもしましょうか。

 

戦略爆撃を行う軍用機に要求される性能と、その他の三つの作戦を行う軍用機に要求される性能は全く異なります。また「近接航空支援」「航空阻止」「侵入攻撃」のそれぞれでも、要求される性能は微妙に異なります。

 

爆撃機の中でも、戦略爆撃専用の戦略爆撃機はとにかくたくさんの爆弾を積むこととそれを遠くまで運ぶことが重要です。なので、搭載量(英語ではペイロード、といいます)と航続距離、そして敵の迎撃を受けても持ちこたえられる頑丈さや敵機を迎撃するための装備などが求められます。運動性に関することはほぼ全く考えられません。このため、巨大で図体の大きな航空機になります。

 

B-29戦略爆撃機

画像は日本を焼け野原にした米軍の戦略爆撃機B-29。日本軍を相手に優勢に戦いを進めた本機ですが、対日終戦からわずか五年後の朝鮮戦争で、ソ連製の戦闘機にボコボコにされたことは、現代の日本ではあまり知られていません。

*画像はWikipedia「B-29」より。2013/01/06閲覧。

また、戦略爆撃機の爆撃機の場合、いずれも軍事目標に対する攻撃が任務なので、手痛い反撃を受ける可能性が高くなります。もちろん頑丈さも考えて作られますが、敵の攻撃を身軽さで回避することも、戦略爆撃機に比べれば重視されます。また、戦略爆撃が面に対する爆撃であるのに対して、それ以外の爆撃は基本的に点目標に対する爆撃です。このため爆撃の精度も重視されるので、そういう意味でも運動性があった方が望ましいでしょう。その機体は、戦略爆撃機とは対照的に、戦闘機とそれほど変わらない大きさになります。そして、そういった戦略爆撃機とは明らかに違う爆撃機を、米軍は「攻撃機」に分類しているようです。逆に言えば、米軍の爆撃機は(特に現代では)全て戦略爆撃機であるということです。

 

A-10攻撃機

画像は現代米軍のA-10攻撃機。上記のB-29と比べて身軽そうなのがおわかりいただけるでしょうか。

*画像はWikipedia「A-10」より。2013/01/06閲覧。

 

 

ただ、これには色々と混乱がありまして……たとえば、米軍が保有している、鈍重な大型輸送機の横っ腹に大砲を積んで「これで地上を砲撃してやるぜハッハッハッ」という嘘みたいな軍用機AC-130(コールオブデューティーというアメリカ製のゲームで有名になりましたね)も、分類上は攻撃機です。まあ、そういう意味では、Wikipediaの有志があんな風に書きたくなるのも分かりますが……。

 

夜間射撃中のAC-130攻撃機

画像は夜間射撃中のAC-130。普通の人が見たら、撃っているところではなく撃たれているところだと思うかもしれませんねw

 

*画像はWikipedia(英語版)「AC-130」より。

 

 

ただ、現在では戦略爆撃は非人道的であるなどの理由でほぼ行われなくなっています。2001年頃に某漫画を読んでいた時、ロシアの戦略爆撃機が日本の都市部を戦略爆撃するシーンが出てきましたが、今時あれはないよなあ、とちょっと思わなくもありません。もっとも、絶対にないとは言い切れないのがあらゆる意味で辛いところですが。

 

じゃあ戦略爆撃機はなくなったのかというとそうでもありません。大規模な戦争をする国が減ったので、確かに戦略爆撃機を保有する国はほとんどなくなりました。ただ、戦略爆撃機の長い航続距離と多い搭載量という特徴を生かした作戦が行われています。

 

たとえば、戦略爆撃機は敵からの反撃に弱い一方火力は相当なものなので、ろくな対空装備を持っていない後進国の陸軍を大量の爆弾でごりごり潰すといった目的に使われています。まあ、全ての部隊に手柄を立てさせるためという、軍隊組織内の事情によるところだとも見えなくはないのですが……。

 

艦載機とか早期警戒管制機、っていうのは?

爆撃機と攻撃機に関する説明は以上です。最後に、せっかく冒頭でちょろっと出したので、「艦載機」と「早期警戒管制機」について軽く触れておきます。

 

艦載機は、ただ単に軍艦から発着できる航空機(特に飛行機とヘリ)のことです(より狭い意味では、軍艦上で整備・補給を受けられ、継続的に作戦できる航空機です)。ということで、「艦載の戦闘機」や「艦載の攻撃機」などがあります。「艦載機」だけではその飛行機の種類は分かりませんので注意してください。

 

director_prepares_to_assist_an_F-A-18_Hornet_to_one_of_four_steam_driven_catapults_during_flight_operations_on_the_flight_deck_aboard_USS_Nimitz_(CVN_68)

画像は代表的な艦載機「F/A-18」です。艦載機である上に空戦と対地戦を両方やる「戦闘攻撃機」であるという、ややこしい機です。翼を広げて空母から飛び立とうとするところだそうです。

 

*画像はWikipedia「F/A-18」より。2013/01/06閲覧。

 

 

 

E-3aawa「早期警戒管制機」は"AWACS"(エイワックスと読みます)とも言い、大きめの機体の背中に、でっかい円盤を背負った形状をしています。この円盤はレーダーでして、全周を遠くまで見渡すことが可能です。

画像は代表的な早期警戒管制機、E-3です。機体上部にレーダーを背負っているのが分かるでしょうか。

*画像はWikipedia「E-3」より。2013/01/06閲覧。

 

radar_coneそう、実は戦闘機のレーダーは機体先端の円錐形にとがった部分についていて、前しか見えない上に小型なので有効距離も限られるのです。

 


 

このため、AWACSが戦闘機に情報提供して戦闘を支援します。いわば空飛ぶレーダー基地でして、必要な場所に飛んでいって索敵できる上、上空から見渡すことによって水平線の向こうを見ることができ、さらに高価で数が少ないこともあって軍事上の重要目標とされています。

 

また、早期警戒管制機は強力なレーダー波を利用して、探知した航空機のエンジンの形や数を見ることができるらしく、それによって敵味方を識別しているそうです。これは戦闘機にはできない芸当なので、敵味方識別情報の提供もAWACSの重要な任務です。

 

なお、早期警戒管制機とは別に早期警戒機というのもあり、こちらはAWACSをやや小さくして、戦闘機に直接指示を出す管制能力を省略したものらしいです。

 

後書き

さて、長々と解説してきた「○○機って何?」も、こんなところです。お疲れ様でした。


次回は……全くの未定ですが、もしかしたら空戦の解説に入るかもしれません。

 

それでは。

 

See you next FLIGHT!