640px-MQ-9_Reaper_-_090609-F-0000M-777というわけで、今回は無人機(その中でも特に「無人航空機」)の過去を振り返り、現状を点検し、未来を展望してみたいと思います。

 

 

無人機とは何か

無人機の定義は、簡単なようでいて少しややこしいところがあります。と言うのも「人が乗っていない飛行機」というだけでは「従来からあるミサイルなどと何が違うのか」という話になってしまいがちだからです。

 

640px-Tomahawk_Block_IV_cruise_missile_-crop特に、プログラムされた航路に従って、長距離をジェットエンジンで飛行する「巡航ミサイル」などは「自爆無人機」と言ってしまってもいいぐらいです。

 

ただ、近年に限って言えば、無人機が共通して持っているが、ミサイルにはない要素として「(飛行中に)人間が遠隔操作している(または、遠隔地から指令を与えている)」ことが挙げられます。

 

640px-CBP_unmanned_aerial_vehicle_control無人機の遠隔操作の形態としては、人間が地上からゲーム機のようなジョイスティックで「操縦」する場合と、パソコンの地図上に点を打つようなイメージで航路を「プログラミング」する場合とがありますが、いずれにしても、人間の指示の下で動いていることには変わりありません。

 

将来的には、人間がいちいち指示を出さなくても仕事をしてくれる「自律行動型」の無人機が実用化されるでしょうが、今のところそうした例は少ないので、とりあえずは「無人機と言えば、人が遠隔操作(遠隔指令)しているものだ」と思っていていいのではないでしょうか。

 

というわけで、より厳密には、無人機とは

 

「人が乗っていない航空機のうち」

「任務の最初から最後まで、遠隔地の人間と通信し、指示を受けられるという前提で設計されており」

「仮に人間と通信が途絶えた場合の機能を持っていたとしても、それは非常事態に備えた機能でしかないもの」

 

とでも言うべきでしょうか。

 

 

無人機の歴史

では、無人機は過去、どのように発展してきたのでしょうか。

 

最も初期の無人機として知られているのは、1950年代に米軍が開発した、射撃訓練用の「標的機」です。

 

387px-AIM-9L_hitting_QF-9J_over_China_Lake_1973この連載でも以前、空対空機銃射撃は非常に難しいのだと書いたと思います。そこで米軍は、古くなった戦闘機を改造して、実物大の射撃訓練用標的としてリサイクルしてしまったというわけです。


 

 

……と言っても、標的機そのものが射撃目標になることはそれほど多くなく、実際には標的機が紐で引っ張って曳航する射撃標的を狙って撃って訓練するんだそうです。でも有人機にやらせるには危なすぎるので、無人機の出番、というわけですね。

 

640px-RQ-2B_pioneer_uavこのほか、1990年代の湾岸戦争などでは、(砲弾の弾着観測など)偵察用の無人機が小規模に用いられたといいます(画像が当時の無人機「パイオニア」。現用機と比べると素朴な形状をしているのが見て取れると思います)。

 

また、無人機は軍用だけでなく民生用としても広く普及しており、娯楽用のラジコン飛行機はもちろんのこと、一時期話題を振りまいた、農薬散布用のラジコンヘリなども広く知られています。

 

 

無人機の現在

「現在」と言うと少々曖昧かもしれませんが、ここではだいたい2000年~2014年ぐらいに実用化され、実際に使用された無人機技術について書きましょう。

 

軍事用途の分野では、やはり米軍が世界の中でも頭一つ飛び抜けている感があります。

 

特にアフガン・イラクの両戦場では、最初は小規模ではありましたが、急速に規模を拡大して、無人機が投入されるようになりました。その中で、従来のような偵察任務だけではなく、ミサイルを使った攻撃任務にも使用されるようになってきています。

 

このうち、アフガン国境を越えたパキスタン領内への無人機の攻撃は、国際的に非難を浴びましたね。アメリカ側としては「有人機で攻撃したら万が一撃墜されたときにパイロットが捕虜になるかもしれないので……」などとそれ言い訳になってないだろと思わされるようなよくわからんことを言っておりますがw まあ有人機だと困る任務を無人機に、っていうことなんでしょうね。無人機にすればいいってもんじゃないでしょうけど。

 

閑話休題。

こうした軍用の無人機は、先述した「標的機」を別にすれば「偵察型」と「攻撃型」のタイプに分けられます。

 

まず一つは「偵察型」。ここでいう偵察型とは、攻撃能力を持たない純粋な偵察用の無人機のことです。攻撃能力を持たない代わりに、偵察に関わる能力は後述する攻撃型よりも高くなっていたりします。

 

640px-Global_Hawk_1代表例が、このたび日本の米軍三沢基地にも配備されることが決まった「グローバルホーク」です。

 

グローバルホークは、攻撃能力を持たない代わりに、15000メートル以上の超高高度を30時間以上に渡って飛行し、高性能なセンサーで地上の情報を収集できる、とされます。

 

グローバルホークは全幅35メートルととても大きいのですが、15000メートルなどといった高高度にもなると、肉眼では見えませんし、ジェットエンジンの音も聞こえません。しかし向こうからは見えているという、まあちょっと不気味な状態ですね。

 

しかし、こうしたグローバルホークの卓越した偵察能力は、中国やロシアなどだけではなく、日本国民の監視にも使われる可能性があるわけですが……あんまり心配する声は聞こえてきませんね。これも平和ボケですかね。

 

それはともかく。

 

639px-RQ-11_Raven_2偵察型の中にはグローバルホークのような高性能偵察機の他に、地上の歩兵から放り投げられるようにして離陸する、ラジコン飛行機のような外観をしたものもあります。

 

もちろんグローバルホークほどの能力はありませんが、陸軍の前線部隊がお手軽に使える無人偵察機として、重宝されているようです。

 

次に挙げられるのは「攻撃型」です。これは、偵察型ほどの偵察能力は持たず、高度もやや低い高度を飛行するものの、ミサイルなどを使って地上を攻撃できるものです。

 

Predator_and_Hellfire代表的な例が「プレデター」「リーパー」などでしょうか。

 

従来、偵察能力しか持たない無人機では、上空から敵を見つけても、すぐには攻撃できない(味方の攻撃機を呼ばなければならない)もどかしさがあったと言います。こうした攻撃型無人機なら、敵を発見し次第すぐさま攻撃に移れる、というわけです。

 

一方、民生用としては、近年は娯楽用のラジコン飛行機にカメラをつけたりして、進歩が著しいです。代表的な例は(飛行機ではなくヘリですが)「AR.Drone」とかですかね。電子制御で、初心者でもスマホを使って簡単に飛ばせるんだそうな。

 

無人機のメリット・問題点

無人機の未来について考える前に、メリットと問題点について考えたいと思います。

 

メリットの一つは「有人機では様々な事情で困難と思われる仕事をこなせる」点です。危険が大きい仕事、たとえば射撃訓練の標的とか、爆発した原子力発電所の偵察とかです。

 

二つ目は「小型軽量にできる」点です。もちろん、近年の無人機には有人機よりも大型のものも多くありますが、ラジコン飛行機のような手軽な偵察機は、有人機では実現不可能です。

 

三つ目は「操縦者を交代させられる」点でしょうか。軍用飛行機には「空中給油」という技術があり、これを使えば燃料は理論上無限に供給できます。が、有人機の場合、パイロットの交代はちょっと不可能でした。

 

ところが、操縦者が地上にいる無人機だったら、パイロットもいくらでも交代させられます。グローバルホークの航続時間を「30時間」と書きましたが、従来の飛行機ならこれほど長い航続時間は無意味だったところでも、無人機なら大丈夫というわけです。

 

一方、無人機の問題点は、どんなものが挙げられるでしょうか。

 

ここで挙げるのは軍用に限った問題点になりますが、一つは「法的・倫理的な問題」があります。

無人機の軍事利用については、国際法的に明確な位置づけがなく、しばしば問題になっています。

 

たとえば、A国がB国の有人軍用機を撃墜したら、両国の緊張が一気に高まるのは当然です。ところが、撃墜したのがもし無人機だったらどうなるのか? といったことが不明瞭な現状は、今後、深刻な事態を招くかもしれません。

 

また、現在は人間が遠隔操作しているからいいものの、将来、人間に対する攻撃を自律して行う無人機が登場した場合、倫理的な論争が起こると思われます。

 

実際、私も時々プログラミングをしているのですが、この手の話題が出るたびに「プログラムのソースコードに『殺してはいけない人間』と『殺していい人間』の区別をさせるなんて、無茶苦茶だよなあ……」などと思います。

 

もう一つの問題点としては、意外に思われるかもしれませんが「操縦者の精神的な負担」がある、と言われています。

 

一部報道によると、無人機を地上から操作するオペレーターたちは、昼間は戦場の上でミサイルを撃ちつつ、夜は家に帰って配偶者と家庭問題を話し合う、などといった生活を送っていると言います。

 

こうした中でオペレーターたちは、生活の中で繰り返される、戦争と平和の極端な落差にさらされており、これが多大なストレスとなって降りかかっているようです。精神疾患の発症率も高い、という話も出ており、今後の研究が注目されるトピックと言えそうです。

 

無人機の未来

では最後に、無人機の未来を軽く展望して、この記事を締めくくりたいと思います。

 

640px-x47b軍事の世界では、無人機はますます存在感を高めていくことでしょう。従来は、無人攻撃機と言っても偵察機をちょこっと改造したに過ぎないことが多かったのですが、これからは設計段階から攻撃任務を考えて作られた無人攻撃機が登場してきます。

 

自律行動型の無人機も登場してきて、先述したような倫理的論争を巻き起こすでしょうし、もしかしたら、敵の戦闘機と交戦して撃墜する「無人戦闘機」も登場するかもしれません。

 

民生用としては、一部の宅配・通販業者が、荷物の宅配に無人ヘリを活用しようとしているらしい、というニュースが入ってきて、これもなかなか注目ですね。

 

そろそろネタ切れの次回予告

この連載も一年半、18回となりました……ここでカミングアウトしちゃいますが、そろそろ、ネタ切れが近いですね。

 

とりあえず次回は「空中給油」をテーマにしてやろうかな、と思いますが、いやはや、どこまで続くかどうか。

 

良かったら、最後まで見守っていってやってくださいね!

 

では、また次回!

 

See You Next Flight!!!