旋回する軽飛行機えー、このコーナーもついに第三回になりました。まだ三回ですが。あはははは。

今回は、前回お約束した通り、飛行機がいかにして水平方向への移動「旋回」を行うか説明します。

 

今回は長くなりますが、ぜひ根気よくお付き合いくださいませ。

 

 

前回までのおさらいをしましょう。

 

戦時中のBf-109戦闘機のコクピット飛行機の翼は大きく分けて三つあるのでしたね。主翼、水平尾翼、垂直尾翼です。

また、飛行機を操縦する上で必要なのは、操縦桿、ラダーペダル、スロットルレバーでした。

飛行機の上昇・降下は、操縦桿を前後に倒すことによって、水平尾翼にある昇降舵を操作し、機首を上げ下げして行うのでしたね。ここまではいいでしょうか。

 

操縦棹とラダーペダル

さて、上昇と降下は分かったので、次は左右への動き「旋回」について説明したいと思います。

その前に、操縦桿とラダーペダルについて説明します。

 

操縦桿は、前後左右に動くようになっています。前後の動きが機首の上げ下げにつながっているのは、前回説明した通りです。ここでは、操縦桿を左右に倒すとどうなるかについて説明します。

 

左右の主翼後縁の一部は上下に傾く可動式になっていて、この部分をエルロン(補助翼)と呼びます。エルロンは「補助」翼どころか極めて重要な舵なのですが、慣習的にこう訳します。

 

主翼は当然左と右に分かれますので、エルロンも左と右に分かれます。

さて、操縦桿の左右の動きは、このエルロンの動きにつながっています。具体的には、操縦桿を右に倒すと、左のエルロンは尻下がりになり、右のエルロンは尻上がりになります。操縦桿を左に倒した場合は、その逆です。

 

エルロン翼は尻下がりになると揚力を得て、尻上がりになると逆に揚力を失う、というのは前回説明した通りです。つまり、操縦桿を右に倒すと、主翼左が揚力を得て、主翼右が揚力を失います。すると機体は右にロール(横転)します。操縦桿を左に倒すと、その逆に、機体は左にロールするのです。ここは割と簡単ですね。

 

 

次はラダーペダルについてです。ラダーペダルは左右両足に対応して左右に一つずつあり、一方を踏み込むともう一方が手前にせり出してくる構造になっています。

 

垂直尾翼の後縁は、やはり一部が左右にひらひらする(尻が右や左にふりふりする)可動式になっており、この部分をラダー(方向舵)と呼びます。ラダーペダルはその名の通り、このラダーにつながっています。

 

ラダーラダーペダルを右に踏み込むと、ラダーの尻は右に振れます。よく考えて見てください。ラダーの尻が右に振れると、方向舵は右から左への力を受けますね。今までの上とか下が右や左に変わっただけです。すると、機首は右を向きます(右ヨー)。ラダーペダルを左に踏み込むと、ラダーの尻は左に振れ、機首は逆に左を向くのです(左ヨー)。

(画像は分かりやすいように振り幅を大きくしてあります。実際はペダルを一杯に踏み込んでもこうはなりません)

 

 

 

横滑り

ここで「ふーん。じゃあ、右に旋回したい時は右ラダーを踏み込んで、左に旋回したい時は左ラダーを踏み込めばいいんだね。簡単!」と、思われたかもしれませんが、それは実は間違いなのです。

 

ラダーの動きは地上の自動車のハンドルの動きに近いですから、ラダーを切れば左右に曲がれると考えるのは無理ありません。しかし、ここは空中なのです。車輪は地面についていないのです。

 

車輪が地面についていないと、何が違うのか。それは「横滑り」の発生です。

考えて見てください。車がハンドルを切ると、前輪の向きが変わって、曲がることができます。しかし、飛行機は機首の向きを変えたぐらいで曲がることができるでしょうか……?

 

横滑り実際には、ラダーを踏み込んで機首の向きを変えても、飛行機の向きを効率よく変えることはできません。たとえば、0度の方向に飛行機が進んでいたとして、いまラダーを踏み込んで30度機首の向きを変えたとしましょう。しかし飛行機には、まだ0度の方向に向かう力が残っています。なので、飛行機が実際に飛ぶコースは、0度の方向に向かう力と、30度の方向に向かう力を合わせた、斜めのコースなのです。これを「横滑り」と言います。

しかし「横滑り」があるからといって、機首の向きを変えすぎると、飛行機は前から受ける風を失って墜落してしまいます。

 

ラダーだけで効率よく曲がることができない、ということを、分かっていただけたでしょうか。

 

旋回の仕方

では、飛行機が左右に曲がりたい時は、どうすればいいのでしょうか。実はそれには、今まで説明した、エレベーター、エルロン、ラダー、全てを使う必要があります。

 

実際の旋回の方法は以下の通りです。右旋回の場合で書きます。

 

右ロールした時点の力ベクトル1:まず、操縦桿を右に傾けて、十分右横転したところで操縦桿を戻します。
すると当然、主翼も右に傾きます。この時、主翼から発生する揚力は、水平飛行している時は真っ直ぐ上なのに対し、やや右向きになります。すると当然、飛行機を浮かばせる力は減りますね。このため、横転飛行中の飛行機は一般的に、少しずつ高度が下がります。また、揚力がやや右を向くので、これだけでも飛行機はゆっくり右に曲がり始めます。


 

操縦桿を引いた時点の力ベクトル2:高度低下を補うために、操縦桿を引いて、機首を上げます(この時、操縦桿を戻してしまうとすぐに高度は下がり始めるので、一定の力で引き続けます)。
これにより機首が上がり上昇するわけです。上手く力加減を調整してやると、上昇させる力と降下させる力が釣り合って、飛行機は高度を変えずに飛行できます。また、飛行機は既に右横転しているので、機首を上げることで右に曲がる力を生み出すこともできます。

 

アドバースヨーを打ち消す3:実はこのままでは、エルロンに対する空気抵抗の大きさが変わる関係で、機首が(この場合)左を向き、例の横滑り状態になってしまいます。横滑りしながらの旋回は効率が悪く、また飛行機に乗っている人も不愉快な横向きの力を感じるので、右方向にラダーを踏んで機首を右に振って調節します。

 


 

実際の操縦では、少しでも右ロールした瞬間から高度の低下などは始まります。なので、旋回の最初では操縦桿を右下に引きつつラダーペダルを少しずつ右に踏み込んでいき、ロールを終えた時点で操縦桿を引く向きを真下にしてラダーペダルを一定の力で踏み、旋回が終わるまでそれを続ける、という手順になります。

 

私もテレビで拝見したことがありますが、非常に操縦に熟練した人(その人は戦争中から飛行機を飛ばしていたそうです)は、計器板の上に立てて置いたたばこの箱(だったかな?)を倒れないようにしながら旋回できます。水平線は大きく傾いているのにたばこの箱は微動だにしないというすごい映像でした。これは、旋回中に飛行機にかかる縦横の遠心力を完璧に制御し、飛行機の中の重力加速度の状態を常に地上と同じに保つことによって可能になります。目を閉じていれば、機内の人は飛行機が傾いていることに気づかないでしょう。すごい技術です。

 

後書き

いかがだったでしょうか。旋回は、見ている側、お客として乗っている側からすると何でもない動きですが、中身を初めて知ると、意外と複雑だったんじゃないでしょうか。

 

今回の記事は、こんなところで締めたいと思います。ありがとうございました。次回は……何にしましょうか。着陸の話でもしようかな、と思いますがちょっと未定です。

 

では。

 

See You Next Flight!