640px-Japanese_aircraft_carrier_Akagi_01_cap  ……というわけで、今日はおもむろに、かつて「最強の艦隊決戦兵器」などと、中二病っぽくはあるものの、あながち間違いとも言えない形容をされた「空母」を取り上げます。

 

特に、空母がなぜ、現代海戦では圧倒的に強いとされるのか、各国がこぞって保有したがるのかを、例によって初心者向け説明の免罪符を掲げながら、分かりやすく解説したいと思います。

 

 

そもそも空母とは?

まず、大前提の話ですが、空母とは軍艦の種類の一種です。「駆逐艦」「巡洋艦」「潜水艦」とかは聞いたことがあるのではないでしょうか。「空母」も、後ろに「艦」がついていないので分かりにくいですが、こうした艦の種類を表す単語の一つです。

 

日本語の「空母」は「航空母艦」の略です。なんだか天空の城みたいに空を飛べそうな気もしますが、そうではなく、普通の船のように海の上に浮かんでいます。ちなみに、一般的には、大きさは他の軍艦と比べても滅茶苦茶でかいです。

 

「航空母艦」というのはつまり、この大きい船を飛行場として使って、戦闘機などの軍用機を船の上から飛ばしたり、着陸(着艦と言いますが)させたりするための軍艦なのですね。

 

SantaCruzShokaku_cap「日米が戦った太平洋戦争では、空母が勝敗の鍵を握った」……といったようなことは、聞いたことがある方もおられると思います。

 

あるいは、第二次世界大戦終結から現代に至るまでも、空母は非常に強力な軍艦として存在感を保ち続けていることも、ある程度の知識がある方や、一定以上の年齢の方はご存知なのではないでしょうか。

 

「空母は強力である」これは全くその通りなのですが「でも、なぜ?」という「空母の強さの理由」を分かりやすく説明される機会は意外と少ないと思います。


以下ではこの点を

 

1:地上の飛行場に対する空母の優位
2:航空機以外の兵器に対する(空母から発艦する)航空機の優位

 

の二点に分けて掘り下げていきましょう。

 


 

1:地上の飛行場に対する空母の優位

Iruma_Air_Base_Aerial_Photograph_cap日本にもところどころに、自衛隊や在日米軍の飛行場がありますね。しかし、こうした地上の飛行場があれば、空母なんて要らないのでは……と思ってしまう人もいるかもしれません。

(画像は国土交通省撮影の航空自衛隊入間基地)

しかし、空母には、地上の飛行場にない利点がいくつかあります。

 

まず、地上の飛行場は一度建設したらもちろん固定ですが、空母は普通の船のように大海原を航海することもできるので、好きな時、好きな場所に行けちゃいます。

また、地上の飛行場は敵が来ても逃げも隠れもできませんが、空母なら姿をくらまし、ほとぼりが冷めたタイミングで、敵が予想もしないところに出現したりもできます。

 

飛行場が存在しない地域に、急に航空戦力を派遣する必要が生じた場合も、空母なら対応できます。

飛行場が存在しない地域なんて、今時あるのか、なんて思うかもしれません。しかし、戦闘機などの高価で精密な兵器は、ある程度の大きさの滑走路があればそれで十分、というわけにはいきません。

 

燃料や弾薬の補給はもちろん、戦闘機の整備が可能な人員や機材がなければ、継続的な戦闘行動は不可能です。

その点、巨大な空母には、それら後方支援部隊も乗り込んでいますので、いつでもどこでも作戦できます。

 

このように、地上にある空軍基地を、海の上で動かせるようにするというだけで、驚くほどの利点が生まれるのです。

ただ、作戦を行う地域が内陸深くで海から遠い場合は、もちろん地上の飛行場が重要になってきます。

 


 

2:航空機以外の兵器に対する(空母から発艦する)航空機の優位

で、地上の飛行場に比べて空母には色々な利点があることは説明したとおりですが「そもそも飛行機ってそんなに強いのか?」という問題がありますね。

 

この話題については以前の記事「陸軍と海軍に対しての空軍とは 」などでも取り上げたのですが、今回は空母にフォーカスを当てるということで「海戦」に限った場合の、航空戦力の優位を考えたいと思います。

 

ま、単純に言えばですね。


「軍艦から大砲やミサイルを撃つ」より「軍艦から飛行機を飛ばして、飛行機から爆弾や魚雷を落としたり、ミサイルを撃つ」方が、何から何まで良いことずくめなのですね。

 

 

naval_strike射程や命中精度はもちろん、反撃された場合のリスク(軍艦はすごく高価で、沈むと大勢死にますが、戦闘機ならそこまでではないです)、そして「決戦を強いることができる」ことです。

 

他はともかく、最後のはちょっと分かりにくいかもしれないので詳説します。

 

 

「決戦を強いる」ことの重要さと困難

海戦の歴史において、長い間「いかにして敵の艦隊に決戦を強いるか・決戦を回避するか」は大きなテーマでした。特に、外洋で絶え間なく繰り広げられた、中世~近世にかけての欧州各国の海上覇権争いに、この点は顕著です。

 

陸戦では、その場から撤退してしまうと、撤退した分だけ領地を失うことになります。しかし、海戦ではそう単純ではありません。

 

艦隊はいつまでも洋上に留まることはできず、定期的に港に寄港しなければなりません。
このことから、自軍が優勢な海域を決定するのは、艦隊の戦力だけでなく、港の位置だということが分かります。

 

つまり、艦隊か、港か、どちらかを失わない限り、海軍は海域を守れるのですね(もちろん圧倒的に艦隊戦力で劣ってしまっている場合は別ですが)。


しかし、歴史上の長い間、艦隊だけで港を攻略するのは至難の業でした。ほとんど全ての場合において、港は強力に守備されてきたからです。そもそも港の攻略は陸軍の仕事、というのが定石だったぐらいです。

 

そこで「艦隊温存主義」というものが生まれました。これは、相手の艦隊の方が強力な場合、あえて打って出て艦隊決戦を挑まず、極力艦隊を温存することにより、それによって間接的に相手の艦隊を牽制し続けようという戦略です。無理に相手が決戦を挑んで来るようなら、安全な港に引きこもってしまいます。

 

これに対し、積極的に相手の艦隊に戦いを挑み、撃破しようとする戦略を「艦隊決戦主義」と言います。

 

一般に、前者は艦隊戦力で劣勢な側が、後者は優勢な側が採用する戦略です。

 

戦争が長期に渡れば、港に引きこもる温存主義派に対し、決戦主義派は港の眼前に艦隊を展開させ続ける「海上封鎖」を行う、という形になります。

 

もちろん、これでは温存主義派の艦隊は、自国の海上交易路を十分に守ることができないなど、様々な弊害が生じます。
しかし、どうせ戦っても勝てないのだったら、海上封鎖に戦力を割くことを強いる分、こちらの方が有用と言えなくもありません。劣勢な艦隊とは言っても、無理に決戦を挑んで壊滅してしまえば、以降はそれこそ相手のやりたい放題を許してしまうのですから。

 

Turner,_The_Battle_of_Trafalgar_(1806)_cap一方の決戦主義派は、なんとかして相手艦隊に決戦を挑んで壊滅させたい。


 


ところが、これは言うほど簡単ではありません。仮に、運良く、相手艦隊が遠洋に出ているところを見つけられたとしましょう。
しかし、軍艦の速度なんてどれも似たようなものです。相手が逃げ続ければ、追いすがって戦いを挑むのは困難になります。小さくて速い船を造ったところで、大抵の場合は、遅くても大きい船に返り討ちに遭うだけです。

 

前置きが長くなってしまいましたが、この決戦主義派の悩みを一挙に解決したのが、空母から発進する航空戦力でした。

 

言うまでもないことですが、飛行機なら船に簡単に追いつくことができます。第一次世界大戦の頃は軍艦を撃沈するほどの火力を備えるのが難しかったのですが、第二次大戦の頃にはそれも可能になりました。

 

 

まとめ:空母大事。チョー大事

というわけで、先に挙げた射程、命中精度、反撃のリスクと合わせてこの「決戦を強いることができる」という特性から、航空戦力は現代海戦に欠かせない要素となっているのです。


ひいては、海上を自由に移動して航空戦力を展開させることができる、空母の重要性にもつながってきます。
各国がこぞって空母を保有したがるのも、うなずけるというものです。

 

_The_aircraft_carrier_USS_Nimitz_(CVN_68)_and_embarked_Carrier_Air_Wing_(CVW)_11_depart_San_Diego_for_a_scheduled_deployment_to_the_western_Pacific_Ocean_capもっとも、近年ではアメリカが十二隻の大型空母を背景に世界の海上覇権を確立したこともあり、艦隊決戦らしい艦隊決戦は長らく起こっていません。

 

他の国も空母を作ってアメリカに挑戦しようとはしないのか、という疑問が当然沸くでしょうが、実は空母というのはとても高価な軍艦です。空母を護衛する軍艦も合わせて建造しなければならないことを考えると、とてもそんじょそこらの国が建造し、維持できる軍艦ではありません。せいぜい一隻二隻がいいところです。

 

というわけで、そんな空母(しかもただでさえデカイ空母の中でも特にデカイやつ)を十二隻も持ってるアメリカ海軍には、その他の世界各国の海軍全てが束になってかかっても叶わないだろう、といわれるぐらいですから、誰もアメリカに海の上で刃向かおうとはしないわけです。

 

そこで、空母の役割としても、海から戦闘機を発進させて沿岸部を爆撃したり、ヘリコプターに載せた特殊部隊を送り込んだりと、艦隊決戦だけにとどまらない運用が中心になってきています。

 

とはいえ、これから先、アメリカの海上覇権に挑戦してくる国が出てくれば、空母はまた「最強の艦隊決戦兵器」としての活躍を期待されることになるでしょうけれども。

 

 

え? な次回予告

え? 次回予告?

……そんなのあったっけ?

 

ではまた!

 

See You Next FLIGHT!!!