というわけで「ランナウェイ/逃亡者」であります(画像はアフィリエイト)。


 

 

一言で言えば、本作は「原作が素晴らしすぎて映画版が残念なことになってしまった」作品の典型例です。

 

……が、それで終わらせるのはもったいない作品ですので、是非、原作を読んでいただきたい、ということを以下に書きました。

 

 

70年代新左翼運動に真っ正面からぶつかっていく

本作は主に現在(2000年代ぐらい)を舞台に展開しますが、ストーリーの鍵を握るのは、70年代の新左翼運動です。

 

Osawatomiecoverbig日本でも東大安田講堂事件、連合赤軍事件などが知られていますが、同じ時期、アメリカでも過激な左翼運動が盛り上がりを見せていました。

 

本作は、その時代の延長線上に生きる大人たちと、大人たちの過去とは切り離された存在である子供たちとの、絆や葛藤を描いた意欲作です。

 

容易に想像できることでしょうが、こうした題材に真っ正面からぶつかっていくのは、作家にとって極めて危険なことです。周囲から変な目で見られたりもするでしょうし、作品自体が自己満足に終わってしまう可能性も少なくない。

 

実際、主要登場人物が大麻をスパスパ吸ってたりするのにちっともラリってなかったりとかする描写は、普通の日本人の感覚からすると理解できないでしょうね(映画ではカットされてますし)……

 

しかしまあ……とにかく原作は素晴らしい。難しい題材をよく描ききったものだと思います。この記事を読んでいる皆様にも、是非読んでいただきたい。

 

映画版にはご同情申し上げる

私は、映画の宣伝を見て本作を知り、映画の上映が終わったタイミングで原作を買って読み「しまった! なぜ映画館で見なかったんだ!」と頭を抱え、最近になってようやくBDで映画を見た、という口です。

 

映画を見た感想としては「残念!」という感じでした。

 

まあでも、原作を読み、映画の上映時間が約120分だと聞いた時に、嫌な予感はしてたんですよ。原作は(amazonによると)651ページという大長編なので、120分に収まるとは到底思えなかったのです。

 

案の定、映画は原作から大きく内容を削ぎ落としたものになっていました。主人公の妻が(原作では薬物依存なのですが)映画では他界しているのはまだいい方だったのですが、主人公を追う記者の描写がちょっと映画では足りていない感があります。

 

この記者、事件について調べるにつれ新左翼運動の歴史を知り、運動に強烈なシンパシーを抱くまでになるのですが、そこのところが映画ではもやもやした不十分であやふやな描写になっているのは、さすがに頂けないな、と。

 

さらに、原作では彼が事件関係者の保守的な女性(つまり、新左翼に反対の人)と口論していたと思ったら、紆余曲折あって彼女と結ばれるという展開がまた感動なのですが、これが映画ではごっそりとなかったことになっているのです。

 

とはいえ、まあ、普段なら映画スタッフへの恨み言の一つや二つ言うところなのですが……今回は、あまりそういう気がおきません。

 

なぜなら、繰り返しになりますが、原作が素晴らしすぎるからです。こんな原作を越える事は愚か、比肩する映画さえ、作るのは難しいだろうなと、素直に思えてしまうからです。

 

というわけで、私は原作の素晴らしさ故に、今回は映画版に対しては、怒りよりも同情を多く感じてしまいました。

 

それに、映画版がなければ、私が本作を知る事も、本書が邦訳されることもなかったでしょうしね。それを考えれば、さすがの私も、映画版を叩くのをためらってしまいます。

 

原題は"The Company You Keep"

最後に一つ触れておきたいのは、邦題の「ランナウェイ/逃亡者」についてです。

 

実は本作、原題は「The Company You Keep」となっています。

ええっと、英語の授業でやりましたね、こういうの。関係代名詞……でよかったですかね。

 

要するに意味は「YouがKeepするCompany」です。"Company"には色々な意味がありますが、この場合は「絆」とか「連帯」などと訳すのがいいでしょうか。

 

作品を読み終わった今となっては、この原題は内容をよく言い表していて良いタイトルだと言えると思います。三十年以上前に築いた絆に助けられる、という場面がしょっちゅう出てきていて、一つ一つに感動させられますからね。

 

しかし、邦題を考える人はこれには困っただろうな、と、これもまた同情を禁じ得ません。関係代名詞をカッコよく訳すのは難しいのです。

 

かといって「ランナウェイ/逃亡者」はないだろうとも思いますが……うーん……

 

結論:原作を読んでください。オナシャス!

というわけで、ちょっとでも興味を持たれた方は、是非原作の方を読む事をおすすめします。

映画の方はまあ、気が向いたらでもいいんじゃないかなと……