護衛艦「ゆうだち」相変わらず、私の書く時事ネタは時期を逸した感がありまくりですが……

ここでは、護衛艦レーダー照射騒動という、あの馬鹿馬鹿しい騒動について、僭越ながら私の見解をまとめておきたいと思います。


 

騒動の概要

小野寺防衛相2013年2月5日。防衛相が突如として緊急会見を開き、何を発表するのかと思いきや、驚くべきことに、海上自衛隊の護衛艦が中国海軍艦船に射撃管制用レーダー(Fire Control Radar=FCR)を照射されたという、実にくだらない発表を行い、勘違いした(?)日本のマスメディアがあたかも戦争の一歩手前であったかのように、大々的に報じたものです。


 

ちなみに、私としては、次項で詳しく述べますが、護衛艦がFCRを照射されたことを事件だとは思いません。強いて言うなら、日本側が騒動を起こしたことが「事件」です。なのでこの一件も「事件」というよりは「騒動」と書くのが正しいと思います。

 

世の中は厳しいんですよ

既にちょっとこの分野に詳しい人があちこちに書いているように、中国の軍艦がFCRを照射したことは驚くべきことでも何でもありません。

 

一般に報じられたように、FCR照射が「目の前にいる人間に銃を向けるようなもの」というのは、その通りだと私は思います。

ですが、国境警備では「目の前にいる人間に銃を向けられる」ことはしょっちゅうです。「そんな馬鹿な」と思うかもしれませんが、それはあなたがこの特殊な業界のことを知らないからです。甘えた考えは捨てて、そういうものだと思ってください。

 

そんなことに、いちいち反応していたらきりがないというか、下手に反撃などすれば戦争になります。戦争をしたいならそれでもいいですがね。

 

「FCRを照射されたら反撃してもいいんだ」という主張は、ある意味間違いではないですが、ではこうお聞きしたい。「『攻撃してもOK』なら攻撃すべきなんですか?」と。

 

「攻撃してもOK」と「攻撃すべき」は全く違うことです。

 

以前、友人が運転する車に乗っていた時、明らかに一時停止を無視して交差点に突っ込んで来ようとしている車がいたのですが、友人はもう少しでそのまま直進してその一時停止無視の車と接触するところでした。

 

交通事故私が「もうちょっと気をつけろよ」と言うと、友人はこう言い返しました。「悪いのはあの車だ。一時停止を無視したんだから」……いや、あんた、墓場の下から告訴する気ですか、と。事故を起こして、怪我をしたり、死んでしまったりしたら、法的に正しいとか間違っているとか何にも意味がないですよね?


 

これと同じことで「攻撃してもOK」な状況でも「攻撃すべきでない」状況は、いくらでも考えられます。ましてや、日本は基本的に、国際問題は平和的に解決する方針を取っていますし、それは日本の国益でもあるのですから。

 

 

国境警備のお仕事

そもそも、戦後の日本は「戦争はしない。なぜなら平和こそが国益だから」というのを堅持してきましたし、少なくともこれまでは、この政策は正しいものだったと考えていいでしょう。

 

自衛官の手記や自衛隊を取材した記者の著書などによると、特に冷戦時代など、海上自衛隊の護衛艦がソ連軍の軍艦から大砲の砲身を向けられたり、領空周辺のソ連軍爆撃機を監視中の航空自衛隊の戦闘機が、機関砲の砲身を向けられるなどすることはそれほど珍しくもなかったようです。

 

F-2_russian_viewそんな時、自衛隊はどう対応したのかというと、護衛艦は平然とそのまま航行を続けましたし、戦闘機も何事もなかったかのようにそのまま監視を続けました。

(写真はロシア軍の偵察機から見た航空自衛隊F-2の様子。ロシア軍からカメラを向けられても平然と飛んでいるのが分かります)


 

もちろん、乗組員やパイロットは「この野郎」と悪態をついてはいたのですが、だからといって「法律を変えて反撃できるようにして欲しい」などと言う自衛官はほとんどいません(テレビを見ているととてもそうは思えないかもしれませんが、あれはテレビが視聴率を稼ぎたいためにわざわざ「異常な」元自衛官を探してきて喋らせているので、耳を傾けてはいけません)。

 

もちろん、日常的に武器を向けられる自衛官の立場は深く同情に値します。しかし、むしろ私は、武器を向けられても平静を保ち続けるという、自衛官の練度と規律の高さをこそ、日本の平和を支えてきたものとして賞賛し、敬意を払わねばならないと思います。

 

結論から言うと、自衛隊は今までどおりで良いのです。武器を向けられても平然としていればいい。実際に撃ってくることなどまずありません。あったとしても、自衛隊はその時が来たら猛烈な反撃を相手に加えるように訓練しています。それでいいではありませんか。何度も言うように、日本から戦争を始めることは、日本の国益には合致しないのですから。

 

 

まとめ……そして騒動はどこから来たのか

今回、あそこまで騒がなくて良かったということは、何となく分かってもらえたのではないかと思います。

 

じゃあ、なぜ防衛相は、大したことでもないのに、騒動を招くことがわかりきっている緊急会見などしたのでしょうか……?

 

疑問点は二つあります。

 

・何のために

・誰が

騒動を起こしたのか、です。

 

このうち「何のために」というのは

・政府が日本国内の右傾化を狙った

というのがもっともらしいですが、一方では、騒動が発生してから、尖閣周辺の中国船の動きがやや沈静化したという報道が一部でありますので

・強硬姿勢に出てくる中国に、日本が無防備でないことを示して牽制しようとした

という見方もできるかもしれません。

 

おそらく、安倍首相が防衛相に記者会見させた理由は、この二つのどちらかでしょう。

 

 

では「誰が」騒動を起こしたのでしょうか?

 

これについては、国粋主義の安倍首相率いる官邸周辺であろうというのが常識的な見方ではありますが……

 

詳しくは引用しませんが、朝日新聞の報道を見ると、防衛省が官邸を誘導する形で主導したのではないかという見方ができなくもありません。

 

近頃、防衛省の動きがどうも気がかりです。独立国の軍隊なのに、同盟国との連携の名の下に、米軍との一体化――まるで五十二番目の州兵のようです――を推進しています。事実上の海兵隊が発足するのも、そう遠い日のことではないでしょう。

 

Naval_Ensign_of_Japan.svgまた、防衛省・自衛隊は、自分たちが国民にどう思われているかを気にし始めているのも気になります。気にするのは別に結構なことなのですが、国民を上手く誘導して戦争に協力させようという意図が見え隠れするので、近代国家における国民と軍隊の関係を正しく理解しているのが心配なところです。

 

まあ、憶測は憶測のままにしておいて、その辺のことは機会があったら詳しく書きましょう。

 

今日のところは、このあたりで。