desert今回は、2013年アルジェリアで起きた邦人人質事件を、主に2004年イラクで起きた邦人人質事件を参照しながら見ていきたいと思います。


 

 

2004年 イラクの場合

iraq2003年の「イラク戦争」の余波として、その後数年間、イラクは大混乱に陥りました。部族間抗争・宗派対立・宗教対立・占領軍への抵抗などが入り乱れてひっちゃかめっちゃかになって多くの血が流れました。


 

しかし2013年現在、やはりイラク国民も「平和が一番」というところで一応は納得したのか、一時期に比べると争乱はだいぶ収まっているようです。

 

しかし2004年のイラクは、外国人が次々誘拐されて、ある者は身代金を脅し取られ、ある者は殺され、と非常に危険な状態でした。日本人が人質になる事件も何度か起きました。

 

今回は主に、報道での扱いが大きかった「人道支援のためにイラクに入った三人組」と「観光旅行(?)で現地入りした単独の若者」がそれぞれ誘拐された二件を取り上げたいと思います。

 

2013年 アルジェリアの場合

algeria一方の2013年のアルジェリアはというと、天然ガスプラントが武装勢力に占拠され、働いていた現地人数百人と技術者を中心とする外国人数十人が人質となりました。


 

武装勢力は表向き、フランスがマリに軍事介入するのをやめるよう要求してはいましたが、このグループは政治的要求より金が目当てだったという情報が多いようです。

 

ともあれ、天然資源の輸出で生計を立てているアルジェリアにとって、現地の大型ガスプラントは国家の生命線であり、また生半可な対応を取れば模倣犯も出かねないことが理由となった模様で、アルジェリア軍は事件発生からほとんど時をおかずに強行突入を行いました。

 

報道によれば、犯人が人質を同乗させた車で移動中のところをヘリから攻撃したなど、人質の安全をほとんど顧みない作戦だったようです。

 

結果、日本人十人を始めとして多くの外国人人質が死亡するという大惨事となりました。

 

 

あまりにも目立った報道姿勢の違い

mediaなにぶん、2003年のイラクでの事件は十年も前のことなので、記憶が色あせている部分があるのですが、それでも、私は2013年のアルジェリア邦人人質事件の報道姿勢に、2003年イラクの事件と全く異なるものを感じました。


 

一言で言うと、アルジェリアでの事件は「被害者は世界の最前線で活躍する、日本が誇る企業戦士だった。このような優秀な日本人を失ったことは残念だ」というようなものです。特に、安倍首相がそのような発言を繰り返したことをメディアが取り上げ、イメージが固まりました。

 

 

これに対し、人道支援のためにイラクに入った三人組に対しては、一定の敬意を払うとか、占領軍ではないから殺さないで、と呼びかけることは行われたものの「日本が誇る企業戦士」とは控えめに言ってかなりの温度差を感じました。

この三人は交渉の末に救出されるのですが、特に保守的なメディアにおいては「渡航延期勧告が出ているにも関わらず現地入りして、困ったら助けてもらうとは調子のいいやつだ。この税金泥棒め」などといった批判が起きるという、近代的な国民国家として恥ずかしい無様な報道がなされました。

 

ましてや、観光気分で現地入りした若者が人質になった時の報道においては、テレビのキャスターが「この大馬鹿野郎」と言ってやりたいのをこらえつつも、遠回しな表現で怒りをあらわにするなどといった、人質になった男性に対する思いやりが欠片もないことがうかがわれました。この男性は結局処刑されるのですが、その後の報道は同胞の死を大して悼むこともなく、むしろほっと一安心したかのように事実を淡々と伝えるのみでした。

 

japanここで一言、私の意見を言っておきたいのですが、日本は国民国家、つまり法の下に平等な日本国民が主権を持つ国です。企業戦士も、人道活動家も、ニートも、みんな同じ国民という原理の元に成立しています。


 

もし仮にここで「企業戦士は活動家やニートより偉い」とか「ニートは働いてないんだから国から保護を得る資格がない」などと言うと、この原理は崩れてしまいます。

 

するとどういうことになるかというと(あくまでたとえばの話で、私の意見ではありませんが)「日本国民には労働の義務があるからニートは働け」と言った時、ニートが「日本国民には日本国政府から保護を受ける権利がある。しかし、今はその保護を受けていない。よって私は日本国民ではない。よって労働の義務もない」と言い返されてしまい、困ってしまいます。

 

ですから、よほどのことがない限り、国民である限りは政府の保護を受ける権利を有するのです。渡航延期勧告を無視しようが、明確な違法行為を働こうがこれは変わりません。

 

「渡航延期勧告を無視するやつは非国民だ」とか「ニートなんだから見殺しにしていい」などと言う人は、日本の国家を土台から揺るがしかねない、重大な反社会分子であると言えるでしょう(でも、ご安心ください。たとえあなたが反社会分子でも、政府の保護は受けられますから^^)。

 

どうする、ニッポン?

報道姿勢以外にも論点はあります。ここでは「日本政府の対応」について挙げてみましょう。

 

イラクの人質事件の時には、日本政府は水面下で交渉を行い、人質を解放させようと懸命になっていたようです。結果的に三人組の方は無事解放されていますので、ここはある程度評価していいでしょう。若者の方は、誘拐した武装勢力が割と凶悪な部類に属していたという報道もありましたので、ある程度は仕方のない面があったのかもしれません(それでも心の底では、日本政府が交渉で手抜きをしたんじゃないかと疑いたくなってしまうのは、人情というものです……)。

 

 

では、アルジェリアの一件はどうでしょう。

 

まだ事件から日が経っていないので定かではない部分もありますが、日本政府はアルジェリア政府を通じた間接的な働きかけに留まり、直接テロリストと交渉したりはしなかったようです。

 

deplomacyもっとも、占領統治下にあったイラクとは違い、アルジェリアはれっきとした中央政府が存在する主権国家だったので、これはある意味仕方のないことではあります。

 

日本で人質事件が起こって、外国人が人質になっても、外国政府が日本政府を通さずに犯人と直接交渉して「身代金払うから、うちの国民だけ解放してよ」とか言い出したら、日本人としては怒りますよね? そういうことです。


 

「それじゃあ、外国で事件に巻き込まれたら、日本政府は助けてくれないの?」とお思いになるかもしれません。

基本的には、いかに日本政府といえど、外国で日本人が犯罪被害に遭ったら、しかるべき対応をするでしょう。しかしそのしかるべき対応というのは、現地政府に「事件解決(真相究明)を要求する」程度のもので、事件に直接対応したりは、現地政府から要請があった場合を除けば、普通しません。

ただし、外国政府が不当に日本人の人権を侵害した場合は、日本政府から外国政府に抗議が行くでしょう。

 

逆に言えば、それ以上は望み薄ということです。元々、外国に行くというのはそういうことなので、皆さん、海外旅行で馬鹿な真似はしないようにしましょう。イスラム教国でいちゃついてたら逮捕されたカップルとかもいますから……。

 

それはやり過ぎじゃないか、ニッポン?

……と、いうのがこれまでの国際社会の常識だったのですが、なんだか日本国内ではおかしな動きが始まっているようです。

 

主に「こうした、外国で日本人が人質になった(犯罪被害に遭った)場合に、日本政府として対応できるようにしよう」という声ですが、中には「自衛隊を送れるようにしよう」という声まであるようです。

 

いや、あの、だから、日本で事件が起った時に、外国人が被害者に含まれていたぐらいで外国政府が介入してきますかね? ましてや軍隊を送るなど……明らかなダブルスタンダードでしょう。

 

あんまり「内政不干渉の原則」を持ち出すのは好きじゃないんですが、やっぱりこういうことがあった場合、外国が入っていけるのは当事国の要請があった場合だけというのが、現実的なルールなんじゃないでしょうか。

 

それをいきなり「自衛隊を送る」って……?

 

何を言っているのかよく分からないのですが。

 

japanese_armyもし、外国政府の要請(もしくは許可)なしで自衛隊がその国に入っていったら、れっきとした侵略です。

(画像はWikipediaより)

外国政府が自衛隊の派遣を要請した場合であっても、自衛隊の派遣を要請する時点でその国は相当やばいことになっていると予想されますから、果たしてそんな場所に自衛隊を送っていいものなのかどうか……。

 

いえね。外国で争乱事態が起きた場合に、現地政府の許可を得て、邦人保護のために自衛隊を送るとか、それぐらいはいいと思うんですけど……

 

ちょっと整理してみましょう。

 

・今回、アルジェリア政府から外国の軍隊の派遣要請はなかった

・なぜか日本では、同じような事件が起きた場合に自衛隊を送れるようにしようという相談が始まっている

 

いやいやいやいやいや。

 

今回の事件の教訓としては、「いまいち先進国の価値観を共有できていない第三世界の政府とどう協力していくか」もっと言えば「いかにスムーズに現地政府に外国の軍隊の派遣要請を出させるか」を考えなければならないということであって、自衛隊が出てくるのはその後だと思うのですが……

 

そんな外交で大丈夫か……?

 

まとめ

fool我々が住んでいる国のメディアや政府は、物事を深く考えていない馬鹿な連中なんですよ、ということが分かったところで、今日はこのへんにしておきます。

 

では、またお会いしましょう。