先日、甚大な被害をもたらした台風19号が過ぎ去った翌日、自民党の二階幹事長が「まずまずの被害で収まった」などという発言をして批判を浴び、その後、謝罪に追い込まれるという事案がありました。


これに関して「二階氏は被災者の気持ちがわからない冷たい男なのだ」という可能性もまあ、あると思います。


しかし、今回取り上げたいのは、二階氏の「情報に対する向き合い方」が全然ダメだったのではないか、ということです。


災害の被害情報というのは、瞬時に伝わってくるものではありません。災害によって通常の情報網は寸断されるので、被害が大きければ大きいほど、情報が入ってくるのは遅れるのです。


そして、組織の指導者は、そうした情報という資源(リソース)の特性を正しく理解し、適切な向き合い方・考え方をしなければならないのです。


その点、災害発生から24時間も経っていなかった時点の情報を見て「ああ、これで被害情報は全部なのだな」などと思い込んでしまった二階氏の「情報に対する知見」は、落第レベルであったと言うほかないでしょう。


では、情報に対しては、どのように向き合うのが良いのでしょうか。


この記事では、そうした「情報に対する向き合い方」「情報に対する基本的な姿勢」について語りたいと思います。



1:いま持っている情報が全てだと思わないこと

冒頭で取り上げた二階氏の例がそのまま当てはまることですが、情報を扱う上で第一に念頭に置くべき事は「いま持っている情報が全てだとは思わないこと」です。


特に災害時などの非常時においては、情報の伝達が遅れている可能性を念頭に置き、慎重に行動すべきです。


また、ビジネスの現場においても、たとえば「昔から使い続けている報告書のフォーマット」「システムから出力させただけで、何の加工もしていないレポート」などといったものが、どこの職場にもあると思います。


もしかしたら、こうした報告書に項目を追加したり、数字を加工して付け加えたりすることで、新たに有益な情報が手に入る可能性だってあります。そう考えると、やはり「いま持っている情報が全てだと思わない」ことが大事だと言えるでしょう。


それを念頭に置いた上で、次の項目に進みます。


2:情報は積極的に集めにいくこと(待っていれば情報が入ってくるとは思わないこと)

いま持っている情報が全てではないかもしれない、と正しく認識したら、次にやるべきことは、情報を積極的に集めに行くことです。待っていても情報は入ってきません。行動あるのみです。


たとえば、軍隊の指揮官が、丘の向こう側(いまいる場所からは見えない)に敵がいるかもしれない、と思っているとします。


この時「敵がいるかもしれないから、ここで待機しよう」などと判断していては指揮官失格です。

正しくは「偵察兵を送って、丘の向こうを調べさせる」のです。


災害の時などもこれと全く同じで、通信が遮断されて情報が入ってこなくなったら、通信手段を持った人を現地に送るのが、最も望ましい判断となります(もちろん、その人の安全が確保される範囲で、ですが)。


ビジネスの現場でも同様で、情報は積極的に収集することを原則とした上で、自社の能力では限界があるなら、お金を出して専門の会社から買う、などといった施策が必要でしょう。


3:情報の真偽を疑う(全ての情報を鵜呑みにしない)

前述の二つは情報を扱う上での基礎と言える論点でしたが、これは少し応用的な論点になります。


テレビゲームなどとは違って、現実の世界では、もたらされる情報が全て正しいとは限りません。

現場担当者に悪意がなくても、勘違いや知識不足から、間違った情報を上に報告してしまうことがしばしば起こります。


そういう時、報告を受ける立場の上司はどうすればいいでしょうか。


理想的には、直感で「この情報はちょっとおかしい」と気づけるようになれればベストです。ただし、これにはその分野における高いレベルの知識と経験が必要になります(まあ、それを身に着けるのが上司の仕事なんですが)。


その上で、この情報はちょっとおかしいな、と気づけたら「本当に? もう一度よく確認してみて」などと部下に指示します。おかしいと思ったからと言って、間違っていると決めつけてはいけません(本当だったら大変だからです)。何らかの手段で再確認させます。


もう一度確認させる以外に、別の手段で裏付けを取るのもいいでしょう。たとえば、遠隔センサーが異常値を示している場合は、センサーの故障も考えられるので、現場に人を送って直接確認させる、などといった具合です。


また、そもそも部下が間違った報告を上げることのないように、日頃から教育・訓練をしっかりしておくことが大事です。


余談ですが……

これは旧日本海軍の話ですが、海軍では偵察機の乗員が「空母発見!」と報告してきたから攻撃してみたら実は空母ではなくてもっと価値の低い軍艦だったとか「空母撃沈!」と現場が報告してきたから大喜びしたけど実はやっぱり空母じゃなかったとか、そういう不祥事が相次ぎました。


最近では「海軍は嘘の大戦果を発表していたが、それが嘘であることを海軍も知らなかった」などと言われるようになりました。

日本人として、実に恥ずかしい限りです。


それはそうと、こうした事案に対して、保守的で日本軍の肩を持つことが多い友人は「戦場では情報が混乱するのはよくあることなんだから、海軍を責めるのはおかしいよ」などと言いましたが、これは全くの間違いです


軍隊では、情報の重要性は強調してもしきれません。


であれば、日頃から正確な報告ができるよう、部下を教育・訓練しておくのが上級軍人の仕事というもの。

「戦場では情報が混乱する」ことを前提として、部下を鍛え上げ、また、自らの判断力も磨いていかなければならないのです。


また、部下の報告が本当かどうかを疑い、裏付けを取ったりするのも大事です。


たとえば、偵察機の乗員に「どうして空母だと思ったのか?」と尋ね、「大きかったからです!」のように(距離次第でどうとでも見えるような)あいまいな答えが返ってきたら本当に空母なのか疑い、一方で「平らな飛行甲板が見えました!」のように説得力のある答えが返ってきたら信じる、などといったことです。


そして、そういった努力を怠った無能な軍人を「戦場では情報が混乱する」ことを理由に擁護することは、できない相談なのです。


おわりに

この記事で述べた情報に対する向き合い方は、全て基本的なものですが、この基本ができていない人が、世の中には多くいるのが実情です。


そして、こういった基本ができていないばっかりに、不用意な発言をしてしまうような人は、政治家になるべきではないと、私は思います。


 
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