putin_and_hitler今日は、おもむろにアドルフ・ヒトラーの蛮行について、いくつか振り返ってみたいと思います……ロシアのプーチン大統領は、全然関係ありません。

 

1:疲弊した祖国を経済的に復活させたように見せかける

戦間期のドイツ経済は、第一次世界大戦と世界恐慌のダブルパンチでどん底にまで陥っていました。

 

640px-Reichsautobahn_mit_Tankstelleこれに対しナチス政権は大規模な財政出動を行い、ドイツ経済を立て直した、などとされます(画像はその成果の一つ、有名なドイツの高速道路「アウトバーン」)。

 

が、この成功は、かなり割引いて考えなければなりません。財政出動のために、政府の借金が大きく膨らんでしまったからです。第二次世界大戦に伴う、より大規模な財政出動や、戦争目的の債務の正当化、さらには終戦後のゴタゴタがなければ、ドイツの財政は破綻する運命にあったと言ってもいいでしょう。

 

また、ナチスの攻撃的な対外姿勢は、輸入によって原材料の不足を補うことを難しくしました。普通だったら、そこは協調外交に切り替えて、貿易を促進するところだったでしょう。が、ナチスは逆に、侵略によって得た占領地から、原材料を収奪する道を選びました。

 

まとめると「戦争が必要な経済を作ってしまった」というのがナチスの経済政策の正体であり、そのような政策が賞賛に値するなどとは、控えめに言って考えにくいと言えるでしょう。

 

 

……ところで、ナチスとは全然関係ありませんが、ここでロシアのプーチン大統領の経済政策について見てみましょう。

 

プーチン大統領は、その強権的な政治姿勢にも関わらず、支持率は高率で推移しています。これは、その強権ぶりがロシアではかえって好かれるというだけでなく、プーチン政権下で経済が復活を遂げたのも大きいとされます。

 

プーチン政権以前は、ソ連崩壊に伴う経済の混乱が、ロシア金融危機により頂点にまで達した時期でした。

 

640px-Methanier_aspher_LNGRIVERSそんな経済が、プーチン大統領の下で復活を遂げた理由……それはまず第一に、原油価格の上昇、だと言われます……はい、つまり「プーチン大統領のおかげ」ではなく、もっと乱暴に言ってしまえばば、ロシア経済が回復したのは「たまたま運が良かった」から、らしいのです。

 

逆に言えば、資源輸出に頼りすぎな経済回復なので、世界経済がコケると真っ先にコケるのがロシア経済、というか。

 

……まあ、プーチン大統領が取った政策も、色々良いところはあるみたいなのですが。ただ、まだあまり日が経ってないので、評価を下すのは時期尚早というか。

 

強いてプーチン政権下の経済について文句を言うなら「資本家・労働者に権力を与えていない」ことが挙げられます。

 

普通、前資本主義社会が資本主義社会に移行する際には、資本主義社会の主役である「資本家」と、資本家の下で働いて価値を生み出す「労働者」への「権力の移行」があります。欧米社会が資本主義に移行するのと、普通選挙制の普及が時期を同じくしているのは、偶然ではありません。

 

しかし、プーチン大統領の下での資本主義(最近では「プーチニズム」などと揶揄されますが)では、権力は父権的で強力な指導者の下に集中し、資本家や労働者は指導者の指図の下で動く(逆に指導者が定めた範囲を逸脱すると「粛清」される)といった感じで、露骨に独裁チックです。

 

これでは資本家も労働者も萎縮してしまい、いずれは効率的な経済活動が営めなくなる……でなければ、不満を持った民衆による反乱を招く……ように見えるのですが。はてさて、どうなることやら。

 

 

2:オリンピックで国威発揚

Bundesarchiv_Bild_146-1976-033-17,_Berlin,_Olympische_Spieleヒトラーがベルリンオリンピックを、自らの権威を高めるプロパガンダの場として最大限活用したのは、あまりにもよく知られているので、今さら説明の必要はないかもしれませんね(画像はメインスタジアムに入場するヒトラー)。

Sochiolympicrings全然関係ないことですが、ロシアのプーチン大統領はソチオリンピックを、国を挙げての行事として盛大に執り行いました。まるで、国威発揚のためのプロパガンダみたいに。

 

ちなみに、後で詳述するように、ドイツはユダヤ人に対する差別政策を行いましたが、オリンピックの前後は、差別と受け取られかねない言動を控えていました。

 

全然関係ないことですが、ロシアでは現在、同性愛者に対する深刻な差別が行われているとして、欧米を中心に問題視されています。しかし、ソチオリンピック前後は、差別と受け取られかねない言動を控えていました。

 

 

3:併合

418px-Bundesarchiv_Bild_137-049278,_Anschluss_Österreich1938年。ドイツはオーストリアに軍隊を進駐させ、後に行った「国民投票」で圧倒的多数の賛成を得たとして、オーストリアを併合します。日本ではこの出来事は「アンシュルス(ドイツ語で「併合」の意味)」と呼ばれて知られています(画像はドイツ-オーストリア国境の検問所を大喜びで撤去する人たち)。

 

これは「誰がどう見ても明らかな侵略」……であるように、現代の日本人には思えますが、実はそう単純な話でもなかったり。

 

まず、オーストリアは中世~近世の時代こそドイツ系を中心とする多民族国家でしたが、この頃には既に多くの領土を失い、残っているのは国の中枢である、ドイツ民族が住む地域だけになっていました。

 

そう、つまりヒトラー率いるナチスドイツと、民族的にはほぼ同じ国であり、ドイツとオーストリアはお互いに「兄弟」のような国家だったのです。

 

実際「オーストリア国民の圧倒的多数が併合には賛成だった」というのも、あながち嘘ではないらしく、Wikipediaの該当記事(2014/04/23閲覧)にも色々な記述がありますが、まとめると「ナチスは嫌いだが、ドイツ民族の統一国家の建設(ドイツとの合併)はオーストリア国民の悲願」だ、というのが、当時、多くのオーストリア国民の認識だったようです。

 

……ただ、ナチスドイツが行った、その後のチェコ=スロヴァキアやポーランドへの侵攻はかなり悪質であり、また「アンシュルス」後の(元)オーストリア国民の扱いもあまり良くはなかったらしく、それを踏まえると、この「アンシュルス」は、その後を知る現代人としては軽々に扱ってはいけないのかな、と思います。

 

ただ、当時の背景を考えると、「アンシュルス」は、日本人が反射的に考えてしまうような「誰がどう見ても明らかな」侵略、とは言えないのかもな、とは思います。

 

 

Putin_with_Vladimir_Konstantinov,_Sergey_Aksyonov_and_Alexey_Chaly_4……さて、全然関係ないことですが、プーチン大統領は、ウクライナの領土の一部であったはずのクリミア半島を「住民投票で支持が得られた」ことを理由に、ロシアに併合した、と宣言しています(画像はクリミア編入の調印をしたとされる場面)。

 

これからどうなるのか、要注目ですね。

 

4:少数派に対する差別

Selection_Birkenau_rampナチスドイツによるユダヤ人の大量虐殺……いわゆる「ホロコースト」は、あまりにも有名ですね(画像は有名なアウシュビッツ強制収容所)。


 

ホロコーストは、戦前から続いていたナチスドイツのユダヤ人差別政策が、その苛烈さの点で頂点に達した結果、起こるべくして起こった出来事でした。一説には五百万人が死亡したとも言われています。

 

ただ、ホロコースト自体は多くの人が知っているものの、一つ、現代人が忘れがちな視点があります。それは「ユダヤ人差別は、ホロコーストが始まりだったわけではない」ということです。

 

そもそもユダヤ人は、イエス・キリストを迫害したとされること、キリスト教で禁じられた高利貸しで財を成した人物がしばしばいたことなどから、キリスト教社会では、元々ちょっと嫌われている感がありました。さらに、ナチスの思想は「ドイツ民族の優越性」を説くものだったので、国内の異民族は邪魔だったのです。そういった経緯から、ユダヤ人が標的となりました。

 

ドイツにおける戦前の反ユダヤ政策については、Wikipediaの「ホロコースト」の記事(2014/04/23閲覧)に詳しいですが、たとえばこの記事には「私服のナチ党員がユダヤ人商店の営業や宣伝を妨害し、店舗の破壊やユダヤ人経営者への暴行、殺害を行った。警察はあらかじめその場をパトロールしないように措置されていた」とあります。

その他にも、公職からの追放や経済活動に対する弾圧、強制収容所への隔離など、反ユダヤ政策は徐々に過激になっていきます。

 

そうなると次は当然「ユダヤ人を国外に追放しよう」という話になります。しかし、ちょうどその頃に始まってしまった第二次世界大戦のために、これは難しくなってしまいました……そしてなし崩し的に始まったのが「ホロコースト」だとされます。

 

戦前戦中、ドイツ国外でも「ドイツではユダヤ人が差別されている」ということは知られていましたが、まさか「数百万人単位の大虐殺が行われている」とまでは思っていなかったようです――断片的な情報は掴んでいて、宣伝もされたようですが、戦時中のことだったので、プロパガンダ(つまり、偽情報)と受け取られてしまったのだろう、と思われます。

 

こういった事から、現代に生きる私たちは「気がついた時には、もう遅いかもしれない」という教訓を、学び取る必要があるのではないでしょうか。

 

 

640px-Rainbow_flag_and_blue_skies……ところで、全然関係ないことですが、現在、プーチン政権下のロシアでは、同性愛者が差別的な扱いを受けているとして、欧米を中心に問題視されています(画像は性的少数派(=LGBT)の象徴とされる「レインボーフラッグ」)。

 

このことは、ロシアで「同性愛宣伝禁止法」なる法律が制定されたことで、広く知られるようになってきました。この法律は「非伝統的な性的関係を助長するような情報を宣伝することを禁止する」というものです。

 

一見しただけでは、その意味や深刻さが分からないかもしれません。実際にはこの法律は、同性愛者に対する差別的な取り扱いをやめるように呼びかけるジャーナリストすらも逮捕するなど、相当厳しい運用がなされているようです。これでは、同性愛者の権利はおろか、言論の自由さえも侵害しかねない、と言えるでしょう。

 

さらに、ロシア国内における同性愛者の扱いは、日に日に過酷さを増している模様です。同性愛者に対する暴力事件(いわゆる「ヘイトクライム」に含まれるような事件です)も多数発生し、腐敗ぶりが有名なロシアの警察も「同性愛者なら仕方ない」とまともに取り合わないようなケースもある、という情報もあります。

 

こういったロシア国内の同性愛者に対する厳しい扱いは、ロシア国民の民度がどうこうという話だけではなく、プーチン政権が煽っている面もある、と考えざるを得ないでしょう。その象徴が先ほどの「同性愛宣伝禁止法」です。こんな法律がまかり通るのであれば、国民の間で「同性愛者は差別されて当然の人間だ」という暴論がまかり通るのも、ある意味当然です。

 

そうしたロシアの現状を、この文章で初めて知ったという人も多いのではないでしょうか(私も最近知りました)。

 

「気がついたときには、もう遅いかもしれない」……この教訓を胸に刻みつつ、ロシア社会の行く末を見守っていきたいところです。

 

最後に。この文章はMy temple様の記事「ソチ五輪の何がヤバいか(前編)―ロシアと同性愛禁止法とナチスドイツ―」を参考に執筆しました。

リンク先には「ロシアの同性愛者に対する暴行事件の模様」とされる動画も貼り付けられています。文章の内容も、自信を持っておすすめできる記事ですので、時間がある時に是非ご一読を。

 

いやあ、プーチンヒトラーって悪いやつだなあ

というわけで、何の前触れもなくヒトラーの悪行について振り返る企画は終了です。いやあ、長くなってしまいましたね。

 

もちろん、ヒトラーの悪行はこれだけではありませんし、ここに挙げた項目の中でも、掘り下げればもっと色々な情報が出てくるでしょう。興味を持った方は、調べてみるのもいいかもしれません。

 

……え? ロシアのプーチン大統領? ここでの主要な議題ではないので、コメントは差し控えさせていただきます。

 

では。