tochou2014年1月現在、日本は東京都知事選を目前に控え、ある命題が話し合われています。ずばり「脱原発を都知事選の争点にするのは間違っているのか否か」です。

 

私の立場としては明確に「脱原発」支持なのですが、それを踏まえた上で、以下では「脱原発を都知事選の争点にするのは間違っていない」という主張を、理由を示しつつ展開します。

 

 

 

理由1:「エネルギー政策に関して、東京都にできることは何もない」というのは言い過ぎ

確かに、東京都内に原子力発電所は一基もありません。将来もそうでしょう。しかし、だからといって「東京都にできることは何もない」というのはいくらなんでも言い過ぎです。

 

単純に考えれば、電力消費量を削減するような政策をとる、という形で、脱原発の動きを援護できるのではないでしょうか。電力の需要自体が少なくなれば、原発の必要性も薄れるのではないか、という理屈です。

 

東京都の人口は2013年時点で約1300万人。日本の人口の一割を占めます。さらに、平日昼間の人口は近隣からの通勤通学があるためもう少し多くなりますし、工場なども多くあります。

 

tokyo_night_viewこの結果、東京都の電力消費量が、日本全体の電力消費量に占める割合は、一割より少し多くなります。

 

確かに、東京都知事は直接原発をどうこうする立場にはないかもしれません。

しかし、日本の電力消費の一割を占める東京都が、その削減に成功すれば、原発の必要性は今よりも薄れるはずです。

 

ただ、単なる節電の呼びかけでは能がないので、もっと持続可能なアプローチが求められるでしょう。

 

たとえば、省電力製品の奨励などがすぐに思いつくところです。少し難易度は上がりそうですが、エネルギー効率を高める新技術への助成なども良いのではないでしょうか。

もっと推し進めて、東京都が持つ潤沢な財源を使って、再生可能エネルギーの技術開発を支援してもいいかもしれません。

 

以前「東京都が悪い条例を制定すると、それが全国に悪影響を及ぼす」などという話がありました。しかし、逆に考えれば「東京都が良い条例を制定すると、それが全国に良い影響を与える」とも言えるかもしれません。

 

東京都だけでは、もちろん脱原発の実現などできないでしょう。しかし、東京都が旗振り役になることが無意味だというのは、かなり言い過ぎな感があります。東京都・東京都民にも、できることがあるはずです。

 

 

理由2:ほかに意思表示する機会がない

ichimanensatu2mai500日本は自由な国ですので、買いたくないものを買う必要はありません。

 

にも関わらず、買い手が買いたくないものを、売り手が無理に買わせるようなことがあれば、それは悪徳商法として糾弾され、場合によっては犯罪として処罰されます。

 

しかし、日本の場合、電力はこの原則に当てはまりません。電力の自由化を進めようという動きはありますが、まだまだ定着するかどうか分からず、事実上、地域ごとに決められた会社から電力を買うしかない状況です。

 

普通の商品だったら「この車はかっこよくないから買いたくない。別なのにしよう」とか「この冷凍食品は食中毒事件を起こしたから買いたくない。別なのにしよう」などと選ぶことができますが、電力だけはそうはいきません。「原発から来ている電力は買いたくない」と思っても、買わざるを得ないのが実情です。たとえどれだけお金を持っていたとしても、です。

 

普通の商品は、売り上げという形で、消費者が何を欲しがっていて、何を欲しがっていないのか、供給者に伝えることができます。しかし、電力はそうではなく、消費者が「こんな電力が欲しい」と思ってもそれを電力会社に伝えることはできませんし、また仮に電力会社が「消費者はどんな電力を欲しがっているんだろう」と知りたがっても、簡単にはそれを知ることができない状態です。消費者だけでなく、電力会社にとっても、この現状は不幸だと思いますね。

 

そこで、消費者としては、どんな電力を欲しがっているかを伝えるのに、普通とは違う手段を使うしかありません……つまり、選挙です。

 

原発をなくしたら電気代が上がるというのは、たぶんその通りでしょう。しかし、全ての国民が「原発から来た安い電気」を望んでいるとは限りません。

 

wind_power_stationもしかしたら「電気代が上がってもいいから、原発から来た電気は買いたくない」という人だって、いるかもしれません。


 

今、そんな人が自分の願いを実現したいと思ったら、選挙に頼るしかない、と言っていいでしょう。

 

ましてや、次の国政選挙は2016年夏の参院選ではないかと言われています。東京都民は、この機会を逃したら、次にエネルギー政策について意思表示をする機会は2年半先になる、と考えていいのではないでしょうか。

 

 

……ただまあ、この立論には一つ致命的な欠点がありまして。それはずばり「原発推進をはっきりと掲げている立候補予定者が一人もいない」ということなんですが……こ、これもシュタインズ・ゲートの選択か!?

 

 

まとめ:絆はどこへ行った?

とまあ、もっともらしい理由を述べてきましたが、実は私が「脱原発の争点外し」に反発する最大の理由は別にありまして……

 

ずばり

 

「絆」はどこへ行った?

 

ということですね。

 

debris「東京都知事選に原発は関係ないだろ!」なんて聞いたら、いまも現に、放射能やその恐怖と戦っている人たちはどう思うか……。

 

確かに、私は「絆」という言葉が大流行した時、冷めた目でそれを見ていました。

 

しかし「同じ日本人だから」と言って、被災者たちにためらいもなく手を差し伸べる人たちのことを、ある面で深く尊敬していたのも事実なのです。

 

それからたった3年で「東京都知事選に原発は関係あるのか?」を真面目に議論しなければならない状況になるとは……なんというか、悲嘆に暮れるしかない、という感じですね。