a0002_0010415/22現在、日経平均株価は上昇を続け、一万五千円前後となっています。ついこの間まで一万円を切って低迷していたのが嘘のようです。



ちまたでは「アベノミクス」なる言葉が闊歩しています。安倍晋三首相が主導して展開した経済政策のことを指しているようです。


近頃の日本ではアベノミクスのおかげで景気が良くなりつつあるという認識が広まりつつあるようです。しかし、本当にそうなんでしょうか……? 経済は素人ですけど、自分なりに分析してみたいと思います。

アベノミクスの現状

アベノミクスなる言葉が具体的に指すのは「三本の矢」と総称される三つの経済政策だということです。

 

1:異次元の金融緩和
2:機動的な財政政策
3:成長戦略

 

金融緩和は日銀による通貨供給量の大幅な増大によって実現されました。財政政策というのも、大規模な公共事業が予算案でまとめられ、これから実行に移される見込みです。成長戦略は、具体的に何をするのかは決まっていないものの、女性の活用や成長分野への重点的な投資が言われています。

 

a0008_002306ただ、なんというか、いま世の中でアベノミクス賞賛の声が盛り上がってますけれど、実際に実行されたのは、既に述べたように金融緩和だけなんですよね。他はまだ計画の段階だったり、看板が一枚あるだけで中身は決まってすらいなかったりします。



期待先行のパラノイア

冷静に、日本がいま置かれている熱狂を分析してみましょう。株は上がっています。これは事実です。円安は進んでいる。これも事実です。


しかし、株高はおそらく円安のためです。円安になれば輸出関連株が(日本製品の評価が高まるわけではなく、ただの為替操作でひねり出した利益なのに)業績改善を期待して値上がりするだけでなく、外国人投資家から見れば日本株が割安に見えるので買いやすくなります。

 

a0002_006862ではその円安はなぜ起こったのか。もちろん、金融緩和のためです。通貨の流通量が増えれば、貨幣価値が下落するのは当たり前です。いわゆるインフレというやつですね。


 

ちなみに、いま日本経済に起こっているのは株高円安だけではありません。アベノミクスが始まる前は比較的高値で安定していた国債ですが、近頃は乱高下を挟みつつ、じわじわと値下がりしています。国債が下落しているのです。報道では「長期金利の上昇」と言い換えられることが多いのですが、長期金利の上昇とは国債価格の下落のことです。


識者の中では、株式市場が上昇局面だから、投資家が国債を売って資金を作って株に回している、と説明する向きがあるようですが… …思うに、話はもっと単純なのではないでしょうか。国債というのは、インフレに弱い金融商品です。インフレになれば貨幣価値は下落するので、十年後に受け取れるお金がいくらという形で決まっている、国債は弱いわけです。

 

これ、インフレだよね?

さっきから私はインフレインフレと連呼していますが、ずばりこれが私が考える日本経済の現状です。ただのインフレ、円という貨幣価値の下落です。

 

大事だ大事だと言われ続けてきた、デフレ脱却はおそらく成し遂げられつつあるのでしょう。しかし、今回政府がそのために講じた手段はかなり強引なものであるように私には思えます。とにかく無尽蔵にお金を刷ってきたのですから。

 

金融緩和により円の価値が下がり、株価は上がりました。しかしほどなくして消費者物価が上がるでしょうし、国債の価格も下がるかもしれません。

 

報道でも言われているとおり、物価が上がる以上、国民の所得もそれに合わせて増えなければ、国民の生活は苦しくなります。しかし、物価が上がったからと言って、そうそう上手く所得が増えるでしょうか。高度経済成長期、日本型経営が広く浸透していた頃の日本ならともかく、現代の日本は労働規制緩和により正社員と派遣社員の格差が大きくなってしまい、また産業の国外移転が進んで雇用の受け皿自体も縮小傾向にあり、労働市場は労働者に不利な状態にあります。物価が上がったからといってすんなり賃金も上がるとは、にわかには信じがたいです。

 

一部の企業が、政治家の呼びかけを受けて賃金の値上げに動いた、動いているとされていますが、ほとんどの場合、従業員の大半を占める非正規労働者の賃上げには否定的です。何というか、詐欺みたいな話ですね。

 

それから、インフレの悪影響はまだあります。インフレということになれば、皆さんが銀行に預けている預金の価値は目減りすることになります。預金の額は同じ百万円でも、一円の価値が百分の一に下落すれば、百万円の価値も百分の一になっちゃいますよね。喜んでばかりはいられないのです。

 

また、先ほどから何度か言及している国債の下落ですが、国債が暴落すれば政府は予算が組めなくなります。現在、政府予算の半分は国債を売ることによってまかなっていますので……いやー、悲惨ですね。

 

640px-2010-2011_Greek_protests_collage「財政再建のためだから仕方がない」とか政治家が言い出して、税金が倍になったりするんでしょうか。ちょっと前に、ヨーロッパでそんなことをやっていたような気もしますねえ、ああ嫌だ嫌だ。



ただ、インフレにもいいことはあります。それは、借金が目減りすることです。先ほどの預金の話と同じで、借金の額が百万円のままでも、一円の価値が百分の一になれば、借金返済は簡単になります。
国の借金でも同じです。現在、もういちいち数えるのもめんどくさくなってしまうほどに膨れ上がった日本の借金ですが、これはもちろん円建てですので、円の価値が下落すれば、借金を返すのは簡単になります。
さらにもう一つ、いいお知らせがあります。なんと、日本の国債を主に買っているのは、日本の銀行なのです! しかも、その原資は預金者の預金です! つまり、日本の借金が目減りすれば、我々国民の預金もしっかり目減りするということですね! ああ、なんて素晴らしいんだ!

 

一体、なんでこんなに盛り上がってるの?

要するに、貨幣価値の下落が株高を引き起こしている。それだけなんですけどね。なんでみんなこんなに喜んでいるんでしょうか。


日経平均株価は確かに上がってますけど……そんなの、オリコンのシングルCDランキングを見て「いま日本で一番人気があるのはAKBだ」なんて主張するようなもんですよね。

 

そりゃあ、私だってこれがきっかけで景気が良くなれば幸せなんですけど、とてもとてもそうは思えないですよね。

 

自分の財布の中のお金の価値が、日を追うごとに下がっている、しかも収入が増えるかどうかは分からない。なのに、なぜかみんな、将来への期待を高めてきている。

 

ほんと、人間というのは分からないものです。