やんごとなき事情により法人税法能力検定1級と消費税法能力検定1級を受験することになり、このたび合格しました。


で、せっかくならばということで、この記事では法人税法能力検定1級の概略と勉強法について語りたいと思います。



どんな試験なのか?

一言で言えば、法人税の基本が学べる試験です。


直近の傾向で言うと、主な出題事項は


・別表四の書き方

・交際費の損金不算入
・寄附金の損金不算入
・貸倒引当金繰入限度額
・固定資産の償却限度額
・圧縮記帳
・配当金等の益金不算入
・法人税額から控除される所得税額
・その他、会計上の収益費用と税務上の益金損金の違いの修正


などといったところで、基本的な論点を一通り抑えられるイメージです。


知名度が低いので就職・転職の役に立つかはわかりませんが、経理・税務関係の仕事に就いている知り合いによると「これを学んでいたおかげで、申告書を作る仕事を振られた時になんとか最後までできた」らしいです。その道の人には有用みたいですね。


2級以下は簡単すぎると思うので、いきなり1級を受けるのがおすすめです。


とはいえこの1級、「合格率70%ってことは楽勝だろう」とナメてかかったらエラい目に遭います。かつて、過去問を見た瞬間、目が点になった私のように……。


おそらく、マイナー資格だけにわざわざ受けにくる受験生はレベルが高いのでしょう。難易度的には簿記3級(最近の合格率は50%ほど)ぐらいのものを感じました。


一つ言っておくと、消費税法1級よりは法人税法1級の方が一、二段ほどレベルが高く、範囲が広くて難易度も高いと思います。


必要な勉強期間は2ヶ月でぎりぎり、3ヶ月で余裕といったところ。


試験時間は1時間30分です。


ちなみに(試験会場にもよるかもしれませんが)早い人は1時間ほどで退室していきますが、動揺しないようにしましょう。たぶん税理士を目指してる人たちですから、比べてはいけません(と、私は思うようにしました)。


教材としては、公式テキストと過去問があります。


過去問だけで十分合格できるという人をネットでもリアルでも見かけましたが、個人的には公式テキストには一度目を通しておくべきだと思います。


というのも、少額減価償却資産、特別償却、役員給与など、法人税法1級の試験に出題されないけれど、実務では重要と思われる論点がいろいろ書いてあるので、公式テキストには一読の価値があると思うのです。


なお、この試験ならではの特徴として、解答用紙に途中式の一部が書かれていることが挙げられます。


過去問を買って解答用紙を見てもらえばすぐにわかると思いますが、イメージとしては「÷」や「×」の間にたくさんの空欄(白い四角)が書いてあるという感じで、解答は空欄の中に数字を埋めていくという形式です。


つまり、式を一から書く必要はなく、基本さえわかっていれば、細かいところがうろ覚えでもそれなりに正解できるようになっています。


おすすめの勉強法

ここからは、出題傾向を踏まえて具体的な勉強法について語ります。


まずは出題傾向ですが、問題は大問が3つ。毎回以下のような構成です。


第一問 …… 空欄補充問題(20点)

第二問 …… 個別論点問題(20点)

第三問 …… 総合問題(60点)


このうち第一問の空欄補充問題は、法人税法の規定を答えさせるものです。具体的には、申告期限はいつまでかとか、用語についての知識などが問われます。


文章は過去に出題されたものがそのまま出題されることが多く、過去問で対策しておけば8割得点が狙えます。


ただし、文章はそのままでも空欄の場所が違うというパターンが多いので、全文を暗記するといいでしょう。


また、1級は選択式ではなく記述式なので、答えはしっかり暗記して、漢字も書けるようにしておく必要があります。


注意すべき点は特にないですが、強いて言えば、固定資産の種類を全て挙げる文章の中で、ランダムで一つが空欄になっている問題(つまり、全部覚えろということ)が出題されることがある、ってことでしょうか。いちいち全部覚えませんもんね普通は……


第二問は個別論点問題ですが、実は法人税法1級の第二問は、第三問(総合問題)の一部をそのまま切り取ったような問題が出題されます。


つまり、第二問と第三問は、内容としては同時に対策することが可能です。

具体的には、以下のような論点が出題される傾向にあります。


・交際費の損金不算入額の計算
・受取配当金等の益金不算入
・法人税額から控除される所得税額
・貸倒引当金繰入限度額の計算
・圧縮記帳
・固定資産の償却限度額の計算


一方、第二問と第三問が違う点としては、配点が挙げられます。


第三問は配点箇所30カ所で一カ所あたりの配点が2点ですが、第二問は一カ所あたり4~5点で、一カ所ならともかく二カ所落とすと非常に痛いので、注意して取りかかる必要があります。


第三問は総合問題で、多数の調整事項を参照して、別表四を完成させる問題です。


まず、この問題に臨む上で絶対に押さえておかないといけないのは、別表四の書き方です。

たとえば、


・「寄附金の損金不算入額」と「法人税額から控除される所得税額等」は「仮計」の後に記載する


といったことはもちろん、


・項目名(たとえば「損金経理をした納税充当金」など)もしっかりと覚えて間違わずに記述する


なんてことまで覚えなければなりません。

一度覚えてしまえばそれまでなんですが、そこに至るまでがけっこう大変です。

ただ、配点がかなり大きいので確実に覚えていきましょう。


あとは、個別論点を対策していくことになります。


先述のとおり、出題される個別論点は第二問とほぼ同様ですが、再掲します。


・交際費の損金不算入額の計算
・受取配当金等の益金不算入
・法人税額から控除される所得税額
・圧縮記帳
・貸倒引当金繰入限度額の計算
・固定資産の償却限度額の計算


この他に、


・損金経理された法人税等の処理
・寄附金の損金不算入額


が、第三問では出題されます。


勉強法としては、まずはテキストを一読する時に、上記の論点に差し掛かったら注意して読むこと。


その上で、過去問を繰り返し解いて出題形式に慣れておけば、合格点は十分に取れると思います。


注意点

法人税法1級を受ける上での注意点は、過去に未出題で、公式テキストにも載ってないような「こんなの解けないでしょ」という問題が一~二問出ることが多い、ということです。


この「難問」は主に固定資産の処理に関する問題で、特に圧縮記帳関連で多く出題される傾向があります。


ただし、このような難問は配点が低い傾向にありますので、これに正解できなくても合格は十分可能です。


たとえば、過去問を見たところ、ある回ではその難問が第二問の最初に出題されたのですが、実は配点は4点だけだった(残りの16点は全てその他の簡単な問題に配点されていた)ということがありました。


なので、難問にぶつかっても諦めずに、解ける問題を粛々と解くことが大切です。


ただし、固定資産や圧縮記帳が全くできなくていいというわけではありません。


まず、以下の2つの論点は簡単なので、確実にできるようになっておきましょう。


・償却限度額の計算(圧縮記帳なしの場合)
・保険差益による圧縮記帳


一方、難しい論点のうち、出題頻度が高いのは以下の3つです。


・交換による圧縮記帳
・収用による圧縮記帳
・買換による圧縮記帳


このほか、全く出題されたことのない問題が難問として出題されることもあります。


これらの難問ができなくても、他の論点を押さえれば十分に合格するとは思いますが、難問の中でも、たとえば差益割合の計算までならといった具合に、途中までなら十分に得点できるものもありますので、他の論点を押さえた上でなら、学習してみたほうが良いと思います。


また、当然のことながら、これらの難問を解かないと、最終的な法人税の税額を正解することはできません。


が、それはもうそういう試験なのだと割り切って、個別項目で得点をかき集めて合格を目指すのがいいでしょう。


まとめ

最後に、カバーすべき論点を重要度別にわけてまとめておきたいと思います。


★ほぼ毎回出題されるので絶対に押さえるべき論点
・別表四の書き方
・損金経理された法人税等の処理
・貸倒引当金繰入限度額の計算
・交際費の損金不算入額の計算
・法人税の税額計算(税額が当てられなくても税率など算式中の数値を書き込むだけで配点があります)


●毎回というほど多くはないが、合格のためには押さえるべき論点
・受取配当金等の益金不算入
・法人税額から控除される所得税額
・寄附金の損金不算入額の計算

・固定資産の償却限度額の計算
・保険差益による圧縮記帳


▲よく出題されるが、難しいので全部はできなくてもいい(と思う)論点

・交換による圧縮記帳
・収用による圧縮記帳
・買換による圧縮記帳


最後に

最後に一言言っておくと、法人税法1級は、合格率の割にはけっこう難しい試験だと思います。


難問がほぼ必ず出題され、実質的には満点が90~95点ぐらいなので、8割取らないと合格できるか微妙ということになります。


しかし、頻出論点を確実に押さえていけば十分に合格できると思いますので、これから受験する人には頑張って欲しいと思います。


ところで、法人税法1級の試験には出題されない一方、実務では重要じゃないかなあと私が思う論点がけっこうあります。


たとえば、


・収益的支出と資本的支出の区分
・少額減価償却資産
・特別償却
・役員給与(昔は頻出だったらしいですが、少なくとも過去4年は出題されていないようです)


などです。


ただ、法人税法1級の場合、ある日突然にこういった論点が出題されることは十分に考えられる、と個人的には思います。


繰り返しになりますが、実務ではこれらの論点はかなり大事じゃないかなあ、と思うので、余裕があれば学習してみてはいかがでしょうか。


※なおこの記事の内容は2019年時点でのものなので、今後、出題傾向が変わったりすることもあるかと思います。あしからずご了承ください。


おまけ

ここでは、よい子が使ってはいけない法人税法1級試験の裏技をご紹介します。


この試験、空欄に数字を埋めていくのが基本形式なのは先述のとおりです。


ところで、端数処理ってありますよね。


貸倒引当金繰入限度額の計算の時には必ず出てきて、受取配当金や所得税額の計算の時にもたまに出てくる、小数点以下○桁の端数処理。


これね、ど忘れしちゃう事って、あると思うんですよ。


「あれ……ここの小数点以下って、3桁だっけ、4桁だっけ……?」


ていう具合に。


……はい、勘の良い人はここでわかりましたでしょうか。


そう、この試験、なんと「解答欄の大きさで、小数点以下の桁数がわかる」んです。


……でも、本番ではこんな裏技に頼らずに済むよう、勉強して欲しいと思います。