isekainiikiru_title「剣と魔法のファンタジー」な世界で「生きる」ことをテーマにしたRPGは色々あります。

 

代表格としては、遊びきれないほど多くの要素を盛り込んで「異世界」という存在を緻密かつリアリスティックに表現した「The Elder Scrolls V:Skyrim(通称スカイリム)」があります。

 

ただ、スカイリムは、細部までこだわり抜いた素材を天高く積み上げることによって底知れぬ奥行きを持つ作品に仕上がっている一方、世知辛い話ですが、忙しい社会人にはちょっと遊びきれないような「重い」作品になってしまっているのも、また一面の事実です。

 

で、今回紹介する「異世界に生きる 死は絶対の掟」は、そんな忙しい人でも十分プレイできるという、スマホ向けゲームらしい「軽さ」を実現しつつ、文字通り「異世界に生きる」という感覚もしっかりと体験できるよう作られているという、小粒な秀作です。

 

(以下に掲載した内容は、2015年6月現在の「異世界に生きる」シリーズ第一弾「死は絶対の掟」のものです)

 

 

用意された様々な選択肢とトレードオフ

isekainiikiru_dungeons一般的なRPGと同じく、このゲームの基本的な目標は、いくつもあるダンジョンを難易度順に攻略して、ボスを討伐していくことです。

 

isekainiikiru_monsterダンジョンを探索していると、例によって例のごとくモンスターと遭遇することがあり、倒せば経験値が手に入ります。ただし、お金は手に入りません(「モンスターがお金を落とすなんてリアルではない」という理由からか、最近のRPGではしばしば見かけられる仕様ですね)。

 

稀に宝箱が落ちていることもありますが、このゲームでは、大した収入源にはなりません。

 

というわけで、このゲームでお金を稼ぐ方法は、街で「労働」に勤しむか「犯罪」に手を染めるかの二つがメインで、これに「ギャンブル」が加わる形になります。

 

「労働」にせよ「犯罪」にせよ、メリットとデメリットがあります(「ギャンブル」のメリットデメリットは言うまでもないですね)。

 

ここで大きく関わってくるのが、本作には「時間」の概念があることです。キャラクターは行動を起こすことにより歳を取り、50歳を越えると戦闘に関わるステータスが急速に衰え始めてしまいます。こうなると「引退」コマンドによって、次の世代(次のキャラクター)に物語を引き継がざるを得なくなるのです。

 

簡単に言うと「犯罪」は労働と比べて短期間で大金を稼げますが、逮捕されると投獄されてしまいます(当然、投獄によって歳を取ります)。それに対し「労働」は逮捕されるリスクこそありませんが、犯罪が成功した場合と比べれば、時間当たりの収入は微々たるものです。

 

つまり、労働でまとまったお金を稼ごうと思うと、あっという間に歳を取ってしまいます。それに対し、犯罪は逮捕さえされなければ、加齢することなくお金を稼げます。

 

また、ダンジョン探索によってレベル上げなどをしている間も、少しずつ歳を取ります。このため、お金を稼ぐのにもたもたしていては、ダンジョン攻略に取れる時間が少なくなってしまい、この点もまた、犯罪への誘惑を強めています。

 

と、このように本作では一般的なRPGと同様に、多くの選択肢が用意されつつ、それぞれにメリットデメリットがあり、プレイヤーはそれを踏まえて最適な選択肢を探していく(あるいは、全くの気分で選択し、その結果を見て楽しむ)という楽しみが用意されているわけで、RPGとしての基本をしっかり押さえていると言えます。

 

さらに、そういった奥行きを保ちつつ、行動は全てコマンド式でサクサク進んでいきます。このサクサク感は、スマホ向けゲームらしいお手軽さです。RPGとしての基本的な面白さを損ねず、それでいてスマホゲームとしてお手軽さを出しているところが、まずは好印象です。

 

isekainiikiru_equipmentただ、次節で説明する上位職業になると、ゲーム本編の攻略にはお金はあまり関係なくなってきます。というのも、上位職業が攻略対象とする上位のダンジョンでは、店で売られているものよりも強力な装備が宝箱から出るので、こちらを狙った方がいいです(また、上位職業は装備なしでも下位ダンジョンを攻略できます)。

 

HPを全回復する「エリクサー」も宝箱から出ますし、購入するにしても、宝箱から出た小銭をかき集めた方がいい気がします。

 

問題は、このゲームのお金の使い道が、装備とエリクサーの購入ぐらいしかない、ということです。このため、上位職業になると、街でお金を稼ぐことの重要性が下がり、せっかく用意されている「お金を稼ぐための選択肢」の存在感が、どんどん薄れていってしまいます(縛りプレイや脇道に逸れたプレイの場合は違うかもしれませんが、本編攻略という意味では、やはりお金の存在感はイマイチ薄いです)。

 

この点はちょっと残念な気がして、玉に瑕と言えるかもしれません。

 

転生により色々な人生を楽しめる面白さ

このゲームの特徴として「魂を消費することにより強力な職業を選べる」というシステムがあります。

 

isekainiikiru_tabibito先ほども触れた通り、50歳を越えて能力値が降下し始めたキャラクターは、引退に追い込まれます。そうすると新規キャラクターを作るわけですが、この際、最初は能力値の低い「旅人」しか選べません。

 

isekainiikiru_kenseiが、ゲーム内で「魂」を収集し、これを消費することによって、より能力値の高い「商人」や「戦士」としてゲームを始めることができます。(画像は上位職業「剣聖」。旅人との圧倒的な力の差がうかがえます……)

 

魂の入手方法は、ダンジョンの奥にいるボスを倒すか、レベル20以上のキャラクターを「引退」させるかの二つですが、基本的にはボス攻略を狙っていくことになります。

 

で、このゲームにおける、上位職業と下位職業の差は並々ならぬものがあります。下位職業で苦戦したダンジョンが、上位職業だと鼻歌交じりに簡単に攻略できてしまったりします。また、下位職業での上位ダンジョンクリアは不可能なバランスで、ゲーム本編の攻略には、上位職業の選択が不可欠になっています。

 

このため、ゲーム全体の流れとしては、

 

魂を消費してキャラ作成 → 下位職業で苦戦したダンジョンを「俺TUEEEEE!」状態で踏破(ここでものすごい快感) → さらに上のダンジョンに挑み、苦戦しつつもボスを倒して魂GET(次の世代で「俺TUEEEEE!」するための我慢の時間) → そのさらに上のダンジョンにも挑んでみるが、さすがに限界を感じて引退 → 以下ループ

 

という流れになります。

 

ただ、上位職業と言っても、ただ単に下位職業よりパラメータが高いというだけではありません。

 

たとえば「戦士」の次に使えるようになる「弓士」は、実は防御力では戦士に劣っています。しかし、モンスターに一方的に攻撃できる遠隔攻撃があるので、これを駆使して、より上の敵に挑んでいくわけです。

 

また「魔術師」が持つ魔法攻撃は、相手の防御力を無視してダメージを与えます。これに対し、より上位の職業「剣聖」はパラメータは圧倒的に高いものの、物理攻撃しか持たないため、物理防御が極端に高い敵に対しては「剣聖」より「魔術師」の方が強かったりします。

 

と、このように、より上位の職業に生まれ変わるたびに、基本的には強くなる一方、ただ強くなるだけではなく、その職業に適した戦い方を考え、組み立てていく楽しみもまた、新しく生まれてくるわけです。

 

私としては、こうしたシステムは大歓迎したいところです。と言いますのも(個人的な話になってしまいますが)、たとえばスカイリムのような大作RPGだと「剣士キャラでクリアした後に、魔法使いキャラでまた新しくゲームを始める」といった「周回プレイ」をする人が多くいるようですが、私のような軟弱者は「一回剣士キャラでクリアしたから、もういいかな……」などと気持ちが萎えてしまうのです。スカイリムが一回のプレイにものすごく時間がかかるゲームだというのも、この意味では難点です。

 

もちろん、私もスカイリムのようなゲームは「何度も周回プレイを繰り返して、色々なロールプレイを楽しむ」ことをしなければ遊び尽くしたとは言えない、というのは分かっています。

 

分かってはいるのですが、やっぱり気持ちは萎えてしまうわけで、そうなると「周回プレイ前提」だというのが分かっているだけに「俺はこのゲームを遊び尽くしていない」などと「損をした気分」になってしまうのですね。

 

で、これが「異世界に生きる 死は絶対の掟(以下「異世界に生きる)」だとどうか。

 

スカイリムのような大作RPGも、この「異世界に生きる」も、周回プレイ前提という点では同じです。同じですが、大作RPGにとっての周回プレイが「ゲームをより深く楽しむためのもの」であるのに対し、この「異世界に生きる」では、周回プレイそのものが「ゲーム本編の攻略」と一体化しているのが特徴です。「旅人」では序盤のダンジョンしかクリアできないのが当たり前なので、より上位の職業に生まれ変わって周回プレイするのもまた「当たり前」になっているわけです。

 

このおかげで、大作RPGの周回プレイを「面倒くさい」と投げてしまう私も「異世界に生きる」では当たり前のように自然と周回プレイをしています(このゲームでは、序盤は一回の人生が二十分前後と短いのも、プラスに働いています)。

 

そのおかげで、大作RPGでは味わう気にならなかった「色々な職業で違ったプレイを楽しむ面白さ」を、この「異世界に生きる」では存分に味わうことができました。「弓士」で「戦士」と同じ戦い方をしても勝てないので、弓士は弓士なりの戦い方を見つけていく。その思考過程が楽しい、ということの繰り返しです。

 

「RPGは周回プレイが楽しい」と巷で言われていた意味を、私はこのゲームで知ることができたような気がします。というわけで、この転生システムはすごく好感触です。

 

……強いて言えば、上位職業でプレイ中に「事故死」すると、やりたくもない下位職業で「魂集め」をしなければならないのが、ストレスかもしれません。新規キャラクターを作るたびに魂を消費するのではなく、魂を一度消費すればアンロックされて、以後は魂消費なしでキャラクター作成できる、とかにしてくれた方がストレスフリーだったかなとは思いますが……ただ、基本無料で、広告の消去と魂の販売が収益源というモデルなので、あまり無理は言えないかな、と。

 

まとめ:「RPGとしての基本」「スマホゲームとしてのお手軽さ」「特徴的な転生システム」の三拍子揃った小粒な秀作

というわけで、見出しの通り「異世界に生きる」は「RPGとしての基本」を押さえ、「スマホゲームとしてのお手軽さ」を保ち、「特徴的な転生システム」を導入した、小粒な秀作です。

 

向いていない人は、そうですね……私は好きですが、アートワークが素っ気ないのでもしかしたらそれを嫌忌する人がいるかな、というのと、あと、考えながらじゃないとクリアできない程度には難易度が高いので、易しいゲームを好む人には向いていないかもしれません。

 

ですが、それ以外は自信を持っておすすめできる内容です。

 

特に「最近忙しくて、RPGやってないなあ」という、私と似た方には、本作はRPGのおいしいところを残しつつ短くまとめたような内容なので、強くおすすめできます。