iOSゲーム「Devil’s Attorney」。和訳すると「悪徳弁護士」でしょうか。結論から言うと、今回はとんだ掘り出し物を見つけました。
弁護士バトルという触れ込みから「逆転裁判のアメリカ版かな?」「英語に堪能じゃないと楽しめないのかな?」と思っていたのですが、実際には良い意味で予想を裏切る、ウィットとブラックユーモアに彩られた良質な「詰め将棋風のストラテジー」でした。
悪人にも弁護を受ける権利が……ってレベルじゃねーぞ、これは……
「Devil’s Attorney(以下DA)」のストーリーは、新米弁護士「Max McMann(マックス・マクマン。以下マックス)」が、刑事裁判の被告人たちを次々と無罪に導き、出世していくというもの……とだけ聞くと、ありふれた内容に思えますよね。ここまでは。
しかし、主人公が弁護を担当する被告人は「どう考えても有罪で間違いないだろうw」と思えるような悪人ばかりですw
ことに被告人たちの言い訳の酷さには呆れますw 国防総省にハッキングを仕掛けたハッカーが「世の中には秘密の情報などない」と主張したり、ゴムボートをスピードボートと偽って売った詐欺師が「うちのゴムボートは十分速いですよ」とか、不法入国の容疑者が「国境なんてある方がおかしいのよ」みたいなことを言ったりw
弁護士であるはずのマックスも大概で、全編フルボイスの毒舌全開で、同じく全編フルボイスの検事さんたちをおちょくりまくりますw
(画像は裁判そっちのけで美人検事を口説き始める主人公の図)
たとえば
検事「あなたの依頼人(被告)は、お見合いサイトを運営しておきながら、全ての女性のお見合い相手として自分自身を表示させていた。これは詐欺ね、マックス?」
マックス「いや、彼は全ての女性にとって完璧な男性が自分であると、心から信じていたんだよ」
なんて感じにw
挙げ句の果てに、映画のパロディまで出てくる始末です。「筋骨隆々として、サングラスの奥から人間とは思えない赤い光を発している、裸で路上を歩いていた罪で逮捕された大男」とかは超有名ネタですが「この少年は独裁者に捕らわれた父親を助けるために、軍の戦闘機を盗んで戦争を起こした」とか、分かる人にしか分からない微妙なネタが仕込まれていたりw
また、検事は全部で7人ほど登場するのですが、それぞれ性格が個性的で、キャラが立っています。中には、ステージを進めるにつれて親しくなったのか、裁判の話そっちのけで世間話を始めることもありますw
このように、法廷バトルの前に毎回挟まれる、主人公と検事のやりとりは、本作の大きな楽しみの一つです。ただ、英語の字幕が出るとはいえ、ある程度の英語力がないと理解できないのは要注意と言えます。
#こんな裁判はいやだ
さて、事件一覧から担当する事件を選択し、先述した検事とのコントを終えると、いよいよ法廷バトルが始まります。
バトルは基本的にターン制で進行します。バトルが始まると、画面右側には検事が持ち出してきた証人(Witness)と証拠品(Evidence)、そして検事自身が表示されます。
証人と証拠品、そして一部の検事は、こちらのターン終了時にダメージを与えてきます。一定量のダメージを受けると、被告人の有罪が確定してゲームオーバーです。
そうなる前に、こちらから攻撃を加えて、証人と証拠品の信用度(Credibility)をゼロ以下にし、裁判から脱落させましょう。
こちらにダメージを与えられるユニットを全て脱落させれば、見事無罪判決を得られます。
相手にダメージを与えるコマンドには擁護(Patronize)、尋問(Interrogate)、分析(Analysis)などがあります。このことからも分かるように、法廷で証人や証拠品に攻撃を加え、検察側が提示してきた証人や証拠品は全て信頼できないと裁判官に思い込ませれば、裁判に勝てるという具合です。
難易度Normalだと、ゲーム序盤は適当にやっているだけで勝ててしまうのですが、だんだんと難しくなってきます。
ゲームシステムの詳細としては、プレイヤーのターンでは、始めに一定数のAction points(AP)が与えられ、それを消費してコマンドを出していきます。APを使い切るとターン終了で、相手の攻撃が始まります。
強力なコマンドほど消費するAPが大きいので、使うコマンドやそれを使う順番を、慎重に選んで行く必要があります。
強力なユニットを撃ち漏らしたままAPを使い切ってしまうと、相手のターンになって強烈な一撃を食らいかねません。なので、基本的には、ダメージの大きい相手を優先的に攻撃していくことになります。しかし、なかなかそう単純にはいきません。
たとえば、中盤からは証拠品の攻撃力をアップさせる専門家(Expert)や証人の攻撃力をアップさせるコーチ(Coach)などが登場します。
が、この時、専門家を先に撃破して受けるダメージを減らした方がいい場合もあれば、証拠品の信用度(HP)が低い場合には、むしろ手っ取り早く証拠品本体を撃破してしまった方がいい場合もあり、どういう順番で攻撃していくか、ゲーム中は始終悩まされることになります。
ただし、このコマンドというのがしばしば当てにならず、たとえば攻撃コマンド「擁護(AP消費1)」のダメージは「0~1」、「尋問(AP消費3)」のダメージは「1~5」となっているので、期待したダメージ量が得られない場合もあります。
しかし「より勝てる可能性が高いのはどちらか?」「外した場合はどうするか?」まで先読みしてプレイしないと、後半は勝つのが難しくなってきます。
こうした不確実性を軽減するために、ダメージを増幅したり、最大ダメージで固定する補助コマンドがあるものの、使用回数に制限があります。
なので、たとえば後半は、冷静に考えると「この状況では強力だか確実性に欠けるコマンドを一か八かでだすよりも、非力だがAP消費の小さいコマンドを連発した方が、勝てる可能性が高いな」なんていう状況に直面したりしますが、そのことを見抜いて、上手く相手を撃破すると、気分は爽快です。
また、そのターン内では相手を撃破できない場合は、妨害系のコマンドを使ってダメージ量を減らしたり、回復コマンドで回復したりした方が良い場合もあります。
この他、主人公のライバルたちとなる検事は「ターンを重ねる毎にダメージアップ」「毎ターン証人の信用度を回復」など、一癖も二癖もある特殊能力を持っていて、プレイヤーを苦しめてきます。
つまり、法廷バトルでありながら、推理の要素は全く存在せず、単なる、しかし非常に面白い「詰め将棋」になっているのですね。
内容ですが、バランス調整が絶妙で、なかなか勝てそうにないステージでも、ほぼ必ず勝つ方法が用意されています。かといって、油断するとすぐに負けてしまう程度の手強さもあり、なかなか楽しませてくれます。
また、ターン制のストラテジーでありながら、ほとんどのステージでは長くても5ターンほどで決着が着くという、プレイ時間の短さも好感触です。
モバイルゲームはちょっとした空き時間に、という方も多いでしょうが、これなら電車を待っている間に1ステージクリアというのも無理がなさそうなぐらいでした。こういうお手軽さは「詰め将棋型」の良さを最大限に生かしていると言えるでしょうね。
また、がっつりゲーム派の方も、週末にたまたまやるゲームがなくなってしまったりした時に、一気にクリアするとかはどうでしょうか。価格の割りにはそれなりのボリュームがあるゲームでして、週末の息抜きにはちょうどいいと思われます。
なお、検事とのコントと違い、法廷バトルの方は、さほどの英語力は必要とされず、普段から英語のゲームをやっている人は大丈夫だろうという印象です。ゲーム内のチュートリアルも至って丁寧で、迷うようなことはないと思います。
健全な弁護は健全な生活に宿る。不健全な弁護も健全な生活に宿る
さて、そうして裁判に勝訴すると、決められた報酬を得ることができます。
家具を購入すると、Materialism(物質主義)、Decadance(退廃)、Vanity(虚栄心)の三つあるパラメータのうち一つが上昇し、一定の値に達すると、法廷バトルで使用できる新しいコマンドがアンロックされます。
三つのパラメータにはそれぞれ特徴があり、紫のアイコンで表される物質主義は主に攻撃コマンド、黄色のアイコンの退廃は妨害系、青いアイコンの虚栄心は回復や攻撃力アップなどの補助系コマンドにそれぞれ対応しています。
さらに、本作は大きく三部に分かれる構成なのですが、第二部以降では主人公は出世して大きな家に住むようになったりして、新たな家具や、家具意外にも購入可能なアイテムが登場し、それぞれ様々な特殊能力を持っています。
ただし、家具などのアイテムは一種類につき一つしか購入できません。つまり、ベッドを三種類の中から選ぶ時に、どれか一つを買ってしまうと、もう残りの二つは買えなくなってしまうのです。
このシステムがあるため、エンディングまでプレイしても、全てのコマンドをアンロックすることはできません。ゲーム後半に突入したら、どのパラメータを伸ばしていくのか、よく考える必要がありますね。
また、法廷バトルでは「Nラウンド以内に勝訴すると、ボーナスとして追加の報酬が手に入る」ことになっています。特に序盤は、このボーナス報酬をしっかり取っていかないとゲームが厳しくなっていくので、気を引き締めて短期決戦といきたいところです。
といっても、ボーナスの条件になっているターン数は易しくもなければ厳しくもないという程度なので、油断しなければほとんどのステージでボーナスを獲得できると思います。
異文化こみゅにけーしょん
パッケージを見てゲテモノかと思いきや、私にとってはどストライクだった本作ですが、やはり好き嫌いはあるかな、という気はします。
まずこのアートワーク。思いっきり洋物って感じですね。私なんかはもうだいぶ慣れてきたのですが、駄目な人には駄目かも知れません。
それから、先にも少し触れましたが、このゲームの面白さの半分は、主人公と検事のおもしろトークです。しかし、これはそれなりに英語力がないと理解できませんので、こちらもまた厳しい人には厳しい。
あと、難易度については、ちょっと考えれば多くの人が十分にクリアできるという具合に、良い感じにバランス調整がされてますけれども、ちょっと簡単すぎな気もしますね。特にハードモードはもっと難しい方が面白かったと思います。
まとめ:刺さったか刺さらなかったか。それが問題だ
というわけで、最後に挙げた欠点からしてかなり人を選ぶゲームだということになったわけですが、逆に言えば、刺さった人にとってはマストバイなゲームと言ってもいいでしょう。
通常価格は300円。先にも触れたように、ゲームそのものが面白いこと、そしてそれなりのボリュームがあることを考えると、これはなかなかお買い得だと思います。
おまけ:この人どの人
検事さんの中にはこんな人もいるのですが……弁護士出身のあの人に似過ぎじゃないかと思うのは、私だけ……?