iOSデバイスをお持ちの方には、お手軽なカジュアルゲームを好む方が多いと思います。
しかし、中にはiOSのタッチ操作を生かした、硬派で手応えのある本格的なゲームを待っている方もいるのではないでしょうか。
今回紹介する「Battle Academy」は、そんな本格派のゲーマーも一定程度満足させてくれる、リアリティ、ゲーム性、お手軽さをバランス良く兼ね備えた、隠れた名作です。
戦車の向きと防御力の関係・臨機射撃・二段階の移動速度・細かい命中修正……これだよ、これ!
Battle Academy は、一見すると、巷に溢れている、第二次大戦を舞台にしたターン制ストラテジーです。しかし、細かいところで実装された、リアリティを向上させる諸々の要素は、多くのiOS向けストラテジーには実装されていなかったものであり、それがこのゲームを特別な位置に置いています。
この画像は、キャンペーン選択画面。一部が有料アドオンになっていますが、元が1700円のゲームなので、追加課金しなくても十分ボリュームがあります。チュートリアルも充実。
今回は、北アフリカ戦線でドイツ軍と戦うイギリス軍のミッションを題材に、それらの要素を解説して行きたいと思います。ミッションの目的は、一定ターン数、ドイツ軍の進撃を遅らせることです。遅滞行動というやつですね。この点だけでも、敵の全滅だけが目的のカジュアルゲームとは一味違う感じですね。
で、こちらの画像はステージ選択画面。このようなアメコミ調のイントロが全ステージに用意されていて、雰囲気を盛り上げてくれます。
さて、ゲーム序盤。大きさ的に少し分かりずらいですが、画面中央の岩場にイギリス軍の対戦車砲(ATG)が配置してあります。岩場のような遮蔽物は防御修正の他に、相手に発見されにくくなる効果もあります。相手に発見されていない状態で攻撃すれば、命中率にUmbush(待ち伏せ)ボーナスがつきます。
この時点では対戦車砲は、画面下から進攻してくるドイツ軍に発見されておらず、一方的にドイツ戦車を撃破している状態です。
対戦車砲を発見して撃破すべく、ドイツ軍の歩兵が前進してきたので、こちらも軽戦車を前進させて迎撃します。
画像に「Turn(旋回)」というコマンドが表示されているのがわかるでしょうか。これは戦車の向きを変えるコマンドです。戦車は正面の装甲が一番厚いのはご存知だと思いますが、それはこのゲームでも再現されています。そこで、相手に正面を向け続けるために、こうしたコマンドが用意されているのです。
この画像に表示されているのは、敵ユニットに照準を合わせた時に表示される、命中率や貫通率、有効性を表したものです。こうした情報が表示されないと、何によって命中率や貫通率が変化するのかが分かりづらく、マニュアルとにらめっこすることになってしまいがちですが、このゲームはその点では親切と言えますね。
また、射撃には二段階あり、通常射撃と、行動力を余分に消費して命中率を上げる精密射撃があるのが分かります。
この画像は味方の対戦車砲が敵戦車を撃破した時のものですが、よく見てください。画面下の国旗のマークがドイツ国旗になっています。これは、ドイツ軍のターンが進行中であることを示しています。
iOS向けのゲームとしては稀なことに、このゲームには臨機射撃が実装されています。臨機射撃とは、相手のターンが進行中であっても、味方ユニットは相手の動きに合わせて、前のターンで余った行動力を使って反撃できる、というものです。
相手が攻めてきているのに、自分のターンが来るまでぼけっとしてるのは不自然ですから、臨機射撃は理にかなったシステムと言えるでしょう。
このゲームでは、臨機射撃を行うタイミングをプレイヤーが指示することは基本的にできませんが、そこはプレイのしやすさ(手軽さ)を重視したシステムにしたということで、一定程度評価していいと思います。
この画像は、味方戦車が敵戦車を攻撃し、命中したものの、惜しくも装甲は貫けなかった場面です。
しかし、このゲームにはSUPPRESS(抑圧・制圧)も実装されています。これはつまり、被弾したユニットが、撃破こそされなかったものの、その激しい攻撃に恐れをなし、一時的に能力値が下がってしまうというものです。さらに攻撃が続くと、勝手に撤退(Retreat)してしまうこともあります。
ゲーマーの方の中には「ユニットは死ぬまで戦えばいい」と言い、このようなシステムを毛嫌いする方もおられるようですが、どちらかというと私はシミュレーションが好きなので、こういうシステムが実装されているのは好印象です。
次の画像は、ドイツ軍の見せ場なんですが(汗)、ドイツ軍歩兵がこちらの対戦車砲に「強襲(Assault)」をしかけ、撃破した場面です。
このゲームでの(というかたぶん現実でも)歩兵ユニットは非力なんですが「遮蔽物に身を隠せる」ことと、それを利用したこの「強襲」は侮れない能力です。
「強襲」とは、歩兵が同じマスか隣接したマスにいる敵に対して発動できる特殊な攻撃で、一定確率で相手に大ダメージを与えます。その威力は、戦車を一発で撃破してしまうこともあるほどです。実際の戦車対歩兵の戦闘でも、歩兵の肉薄攻撃は非常に怖いもので、それを再現したシステムと言えます。
この「強襲」と、先ほども触れた「遮蔽物に隠れる能力」があるため、遮蔽物が多い環境では、戦車はおいそれと前進できず、先に歩兵などに偵察させなければなりません。うーん。リアルでいいですよね。
細かいところですが、もちろん、車両への歩兵の搭載もあります。画像は、防衛線が突破されそうになったので、増援を新しい防衛線へ配置しているの図。
敵をぎりぎりまで引きつけて一気に撃破するため、射撃禁止命令を出すこともできます。
ちなみに、ミッションには主要目標の他に副次目標も設定されていて、達成するとスコアが加算されます。
画像はドイツ軍戦車を十両撃破せよ、を達成しましたの図。
この記事もそろそろ終わりですが、大事なことを言い忘れていました。
それは、このゲームの移動速度には二段階ある、ということです。
行動力を余分に消費して移動すると「Hunt」になります。翻訳すると隠密移動とかになるでしょうか。
この移動は、敵に見つかりにくかったりする他、通常の高速移動後の射撃の命中率には大きなマイナス修正がついてしまうところを、やや軽減する効果があります。
もっとも、これは諸刃の剣でして、高速移動しているユニットに射撃を命中させにくいのは相手も同じであり、ゆっくり移動しているユニットには相手も攻撃を当てやすいです。
と言ったところで、何やら指揮官らしき人物からメッセージが流れ……
どうやらいつの間にか定められたターン数を耐えきったらしく、ミッションクリアです。
結果画面。敵味方の損害やら、プレイヤーの評価やらが表示されます。
うーん。もともと不利なシチュエーションだったから、まあまあかな?
まとめ
以上、いろいろと良い点を上げてきましたが、まとめに入る前に、ちょっと悪い点も取り上げてみたいと思います。
まずは価格ですね。2013/06/27 現在、定価が1700円というのは、やっぱりiOS向けゲームとしてはためらう価格です。カジュアルなゲームを求めている方にはなおさらですね。たまにセールもやっていますが、稀です。
しかし、無料体験版も出ているので、そちらでプレイしていただければ、自分に合うかどうかはっきり分かるはずです。
もう一つ、出先で空いた時間を使ってお気軽にプレイする、というほど手軽なゲームではない、というのはあるかもしれません。確かに、リアリティとプレイのしやすさのバランスはとれていますが、それでもどちらかというと腰を落ち着けてプレイした方がいいゲームかな、という印象です。
ただ、何度も述べてきたように「iOSでもっと本格的なストラテジーを!」と思っていた方には、きっと福音になるゲームだと思います。まずは体験版から、試してみてはどうでしょうか。