今回は「戦間期(二)」を掲載しましたので、この部分で触れられた「戦間期の平和主義」について、また、作中の言語についても少しだけ触れておきたいと思います。

 

「戦間期」とは?

第一次世界大戦が終わってから、第二次世界大戦が始まるまでの期間を「戦間期」と呼びます。年号で言うと、1919年から1938年ぐらいまでです。

 

もっとも、1919年にはまだソ連で内戦やら介入戦争やらが続いていますし、1938年には戦争は避けられないという雰囲気がかなり高まっていたようなので、戦間期と言われてしっくり来るのは1920年代から1930年代の始めぐらいまででしょうか。ちょうど、本作の主人公「桐鞍真」が少年時代を過ごした時期です。

 

平和主義の盛り上がり

作中でも、第一次世界大戦の惨禍を受けて、このような悲劇を繰り返してはならないと決心した各国が国際連盟を作った、というような記述がありますが、史実でもほぼその通りです。

 

第一次世界大戦以前の世界(特に列強諸国)では、国際問題を暴力で解決することに対する抵抗感は、ほとんどなかったようです。疑問を感じる人が全くいなかったわけでありませんが、そういう良心的な人たちも、科学の進歩によって戦争がここまで血なまぐさいものになるとは、想像もしていませんでした。

 

原則として、戦争、特に先制攻撃は違法であるという感覚は、今でこそ空気のように当たり前になっていますが、実は「戦争が違法である」という感覚が当たり前になったのは、ここ百年ほどのことなのです。

 

WW1_TitlePicture_For_Wikipedia_Articleそのような劇的な変化を世界に生じさせたのが、第一次世界大戦でした。
戦間期には、国際協調、世界平和を、理想、それも、多大な努力を傾注してでも実現させなければならない、切迫感を持った理想と見る動きが強まりを見せます。

 


 

また、作中で幼年時代の桐鞍真は、訪れた英国で英国人から多大な親切を得ます。このシーンを書いてから、私も、英国人が日本人少年にこんな風に親切にすることは考えられるだろうか、とちょっと考えてみました。史実に置き換えると、このシーンは裕福そうな英国人少年に、当時の日本人が親切にする場面となりますが。


399px-Punch_Anglo-Japanese_Alliance色々考えた結果、まあ、あり得るんじゃないかと私は結論づけました。というのも、作中の年代は1928年。日英同盟はまだ失効したばかりで、大陸の覇権を巡った対立が深まる前です。こういうことも、まああり得るとしてもいいんではないかと考えました。



戦間期を語る上で、平和主義の盛り上がり以上に重視しなければならないのが、世界恐慌であり、その後、枢軸国が突き進んでいく領土拡張です。ですが、そのあたりに関する解説は、作中で世界恐慌が発生する次回に持ち越したいと思います。

 

作中の言語の扱いについて

さて、前回の解説で既に筆者も読者もイヤになるほど述べたように、作中世界ではアジアが近代的な列強諸国、欧州が前近代的な弱小国と設定されています。

 

書いていて困ったことの一つが、言葉です。史実では、列強の中でも特に英国とフランスが世界各地に植民地を築いたため、英語とフランス語が世界中に伝播しました。日本にも明治維新以降、たくさんの外来語が入ってきています。

 

しかし、それら外来語の全ては作中には存在しません。いえ、欧州諸国に存在はするかもしれませんが、弱小国の語彙が列強国に取り入れられることはまずないはずです。

史実でタラス河畔の戦いで製紙法が西伝したみたいな感じで、古代ローマやら(今作中の中世においては屈指の強国であったであろう)神聖ローマから伝わった……という裏設定を考えるのも一興でしたが、めんどくさいですし、何より作中にいちいちそんなことは書けません。書けないなら、登場人物が現実世界のように外来語をばんばん使うのは不自然です。

 

……何が言いたいかというと「タクシー」のことを「辻車」としたり「ホテル」を「飯店」としたのは、外来語が使えない中での苦肉の策だったんですね。

 

London_taxiとはいえ「辻車」は「辻馬車」ってのが実在したからまだいいにしても、「ホテル」を中国語の「飯店」というのは、自分でも書いててかなり苦しいなと……。

(画像は現在のロンドンのタクシー)

 

ただ、例外もあって、代表的なのは「アジア」という単語です。こればかりは言い換える単語が思いつきませんでしたし「亜細亜」と漢字で書いたところで同じです。また「アジア」は頻出する単語なので、分かりにくい造語にすると読者を置いてけぼりにしてしまう、と考えた結果、現実どおり「アジア」という言葉を使うことにしました。

 

ま、まあこれから先も、本作には不思議ワードがしばしば出てきますが、そこも含めてお楽しみいただければなあ……なんて。

 

では、今日はこのへんで。